令和2年2020 4月22日投稿7月14日更新
安心できるスーパーを選ぶ
もくじ
はじめに
新型コロナウイルス感染対策として、感染予防のため新しい生活様式が提唱されている。
非常事態宣言が発出され、国民の多くが外出を自粛し、一時的には収束に向かうかとも期待された新型コロナウイルス感染症は今、主要都市を中心に新規感染者数が増加している。
一方で、地方都市は新規発症者の人数は少なく、多くの自治体では感染者0人を更新している毎日である。
しかし、都道府県を超えた人々の往来が増える昨今、地方都市でも新規発症者が爆発的に増加する可能性が高まっていることも事実である。
ここ数ヶ月、多くの情報に触れ、自分なりに考え、この身を守るため様々な感染症対策を行う日々を過ごして来た。
現在、私は感染していない。
感染していないのは多分、身の周りにCOVID-19ウイルスが存在していないからだと思えてきた。もし、身近にSARS-CoV-2が存在しているなら、間違いなく感染してる可能性が高いと感じる。
なぜなら、私をはじめ多くの人々は、正しい感染症対策を知らないのではないだろうか。
最近は気の緩みなのか、買い物に行けばマスクをしていない客がいたり、レジで後ろの人が詰めてきても知らんぷりするレジスタッフ、手当たり次第に商品を持ち上げ品定めをする客、子供が大きな声を出しながら走り回る店、店頭の消毒剤が次亜塩素酸水を使用している店舗などなど、喉元過ぎれば熱さ忘れるなのか、だらしなくなっている気がする。
地方都市では緊急事態宣言解除が、あたかも感染拡大が収束したかのような雰囲気さえある。本来、緊急事態宣言期間中に新しい生活様式を、しっかりと身につける期間であったはずなのに、人々はなんとなく解放感を感じているようだ。
新型コロナウイルス感染症による、緊急事態宣言か解除され、やがて2ヶ月経つが、今こそ十分な安全対策を施したお店で、安心して買い物がしたいと願うのは、私だけではないだろう。
厚生労働省をはじめとして各関係省庁からは[新型コロナウイルスを想定した「新しい生活様式」の実践例]が公表され、業種ごとには、関係団体が感染拡大予防ガイドラインを別途に作成していることをご存知だろうか。
選び方の基本
日本では物事を曖昧にする傾向にある。
曖昧なことが「日本人の美徳」とも感じる場合もあるが、未知の感染症対策に曖昧なことは全く必要としない。
あまり堅苦しことを言うと、お客が来なくなるのではないかとか、店側からそこまでは言えないだろうなどと、考えることは間違い。
来店客と従業員の命を守るための感染対策を行うのであれば、店側は毅然とした態度で、ガイドラインに示された対策は必ず守り、来店客に感染対策を周知徹底することも必要だ。
関係省庁が作成した啓発用ポスター
厚生労働省
農林水産省:経済産業省:消費者庁
食料品についてのお願いpdf
農林水産省:経済産業省:消費者庁
買い物をする時のお願いpdf
農林水産省:経済産業省:消費者庁
小売業12団体
小売業の店舗における新型コロナウイルス感染症「感染拡大予防ガイドライン」
一般社団法人 全国スーパーマーケット協会
http://www.super.or.jp
このような非常事態の際には、官民が協力して対処しなければ、早期の収束は望めない。
国が啓発用ポスターを作成したなら、デザインが良いとか悪いとか言っている時では無い、この事態下では、同じポスターを各店舗が張り出すことで、相乗効果が生まれ国民の意識向上が狙える。
これらの啓発用ポスターを店頭に貼っている店舗は、感染対策を真剣に考えている危機管理意識の高い店舗と考えても良いだろう。
特に、日々の暮らしに欠かせない食料品や日用品の買い物で利用するスーパーマーケットなどの小売店では、店舗側の対策がとても気になる。
店舗の危機管理能力が問われているといえば、言い過ぎかもしれないが・・・。
店舗対策表示
1、店舗の換気能力
店舗により換気能力は異なるが、厚生労働省では機械喚起の場合、必要換気量(一人あたり毎時 30m3)が確保できていることを確認するよう求めている。各店舗でも、この換気量が確保できているか表示すべきである。また換気量が確保できない場合には、換気回数を毎時2回以上(30分に一回以上、数分間程度、窓を全開する。)とすることとしているが、これから夏季を迎えるにあたり、害虫や埃の侵入が予測されることから機械換気が望ましい。
2、適正な入店可能人数
入店可能人数の算出方法は下記の3種類、各店舗の特性や既存換気設備に合わせた入店可能人数を算出する必要がある。ただし人算出の根拠は来店客にわかりやすい場所に表示しなければならなおだろう。
a、売場面積より算出(計算方法)
b、レジ台数より算出(計算方法)
c、既存換気設備より算出(計算方法)
例:入店制限の案内
3、混雑時間の表示
入店可能人数の表示をするとともに、店内の混雑を避けるには時間ごとの来店者数を表示してあればわかりやすい。
例:混雑時間の案内表示
4、体温測定の実施案内
来店客一人一人の体温測定の可不可は、店舗業態により分かれるところではあるだろう。
来店者側の立場としては、体温計測を行い、感染の疑いがある高熱の方を店舗に入れないという選択肢を応援したい。ただし、食料品などの生活必需品を販売する小売店では、買い物ができなければ、暮らしに大きな影響を及ぼすため、高温の方が来店した場合にでも、買い物をどのようにサポートするか、事前に計画しておく必要がある。
5、レジカゴ等除菌方法
レジカゴやショッピングカートの消毒を、店舗側で実施しているのかいないのか、消毒をしているなら、その消毒方法や頻度などを店頭に表示する。表示してなければ、レジカゴやショッピングカートの消毒はしていない店舗であると判断する。
6、買物弱者への対応
妊婦や高齢者、身障者への対応としては、専用の時間帯を設けたり、ネットや電話、FAX注文とドライブスルーの組み合わせ、あるいは移動販売車、タクシーを利用した買い物代行「タク配」など全国的に様々な取り組みがなされている。しかし、これらもポスターやフライヤーなどで周知徹底しなければ自己満足で終わってしまう。
店頭表示方法
以上の情報を店頭でポスターなどで情報提供するには、文章で書いても誰も読まないので「ピクトブラム」にて表現することが望ましい。感染対策用の「ピクトグラム」は、現在のところ市町村の観光協会や旅館ホテル組合、民間デザイン会社等で作成されているようだが、基本的には各業界団体が全国統一のデザインを採用すべきである。
POP等 広告表示
1、分かりやすい売場品群プレートの設置
通路からでも商品が、どこにあるか分かりやすいプレートが設置してあるか?ユニバーサルデザインの観点からは、黒ベースに大きめの白抜き文字が見やすい。
2、商品が分かりやすく、まとめて陳列してある
同じ商品群を店舗の至るところに展示してあると、目的の商品を探すのに時間が掛かり、他人との接触回数も増え滞在時間も長くなる。目的の品を見つけやすくするため、商品群を一つのコーナーでまとめてる店舗が良心的といえる。
3、お買い得品は、密を避けるため分散してある
お買い得品コーナーとして、1箇所にまとめてあると、どうしてもそこだけが密になってしまう。お買い得品を分散して陳列しているお店が好ましい。
4、一眼で分かる消費期限、賞味期限の表示
食品表示法で義務付けられる消費期限や賞味期限は、商品により表示の場所や大きさが異なり、消費者としてはとても探しにくい。フードロスの観点からいえば、陳列棚の手前からといいたいが、消費者心理としては日付が気になる。店舗ごとにでも、もっと分かりやすい期日の表示は出来ないものだろうか。
5、ロングライフ商品の表示
感染症対策ばかりではなく、災害時のことを考えると、ロングライフ商品をある程度自宅に備蓄しておきたい。このような情報をわかりやすく陳列しておくことも、小売店側として配慮しているお店は良いお店だと思う。
6、1レーンおきのレジ稼働
一般的にスーパーのレジは、スタッフの後ろに背中合わせで客が並ぶスタイルが多いのだが、これが意外と近い。また、一時的とはいえ、買い物カゴの整理や他のスタッフが近寄り密になる。繁忙の時間帯であれば全レジを使用しなければならないかもしれないが、その他の時間は、1レーンおきに稼働させることが望ましい。ただ、全レーンを使用しなければならないほど客を入店させても安全が確保できるかは、店舗側の考え一つである。
ビジネスの世界では、バックヤードが乱れている会社は、決して良い評価を受けることがない。良い店舗を見分けるには、お店全体の雰囲気も大切な判断材料となる。
スーパーマーケットでは、店内の陳列品の並べ方や商品パネル、ポスターが傾いていたり、破れていてもそのままにしている店舗。あるいは、ペットボトルや食品トレイなどの資源回収を行っている場所で、回収品が溢れていたり、ゴミが散らかっているお店も考え直した方が無難である。
日常業務の基本さえできない店舗に、十分な感染症対策や危機管理能力があるとは思えない。
スーパーマーケットの新型コロナウイルス対策
同時来店可能人数の計算式
それぞれの算出方法詳細は、タイトルをクリックしてください。
売場面積から算出
売場面積(m2)x5(%)x60(m)/平均滞在時間(m)ー従業員数(人)
レジ台数から算出
レジ台数/2x50x60(m)/平均滞在時間(m)ー従業員数(人)
既存換気扇能力から計算
売場面積(m2)x5(%)x60(m)/平均滞在時間(m)ー従業員数(人)
スーパーマーケットの感染対策
もくじ
【入店可能人数の計算】
売場面積より人数検討
レジサービスより人数検討
換気回数より人数検討
【スーパーマーケット の感染対策】
入店可能人数の計算
入場制限人数と行列発生の有無・規模を算出する
勿論スーパーマーケットは、地域や立地条件、環境により店舗面積も構造も異なるため、海外で実施された一方通行や極端な入店制限を行うことで、店外に長い行列ができるようでは、本末転倒である。
また、都心のように若い年代が多く来店する店舗では、多少の行列ができたとしても待っていられるかもしれないが、地方のスーマーパーケットでは、高齢の方も多く、長時間行列に加わることは困難であると思われる。
新型コロナウイルス 対策として各店舗ごとの対応は様々であろう。最も安易な営業時間の短縮は、どうしてもその時間にしか買い物ができない職業、あるいは就労時間の制限がある方の買い物難民を生み出す可能性が高く「食のインフラ」「食のライフライン」を確保する社会への責任を放棄した行為に思える。
では、買い物難民を発生させず、社会への責任を果たすためにもスーパーマーケットが通常営業を継続可能とする、最善の新型コロナウイルス対策の一つとして入店制限および、行列の人数予測をすることで、来店客にも店舗スタッフも安心して買い物ができる方法を考えたい。
感染予防対策の一つとして「密」にならないことが重要であるといわれる。対策として入店人数の算出は必要不可欠となる。また、今回の試算方法は、どの店舗でも適切な収容人数および行列予測人数を簡単に算出できると思う。
売場面積より人数検討
消防法と感染症対策による人数計算
入店可能人数の結果
入店制限時1人の占有面積
売場面積より算出時の店内イメージ
行列発生時の人数予測
そもそも、全員が歩きながら買い物をする、道路の延長線上にあるような店舗に何人の人が入れるか、算出のはかなり困難と思われる。一人の占有面積を何m2が適切なのかと聞かれたら、1m2と言われればそうかもしれないし、いやいや2m2は必要だよと、言われれば確かにと頷きたくもなる。心理学でソーシャル・ディスタンシングと呼ばれる、社会的な人間間の距離を採用する手法も考えられる。
また、膨大なデータ複雑な計算式、あるいは入手困難な数字が求められrことは避けたい上に、緊急事態の今、誰でも簡単で瀬徳力のある計算式が求められるだろう。
ただし、申し訳ないが店内を見渡し、来店客の人数を把握できる小規模店舗には適応しないと思うので、あしからずご容赦願いたい。
明確な数字としては、消防法の規定で、店舗の収容人数の算出する場合に1人の占有面積を4m2としているので、今回はこの数字を採用する。
消防法と感染対策による入店可能人数
消防法「防火対象物の収容人数』
防火対象物区分4百貨店・マーケット
従業者の数+主として従業者以外の者の使用部分 ろ、その他の部分:床面積/4m2
収容人数=[売り場面積m2/4m2]
売り場面積はどこの店舗でも公表している数字なので、簡単に得られると思う。
ここでは、地方のあまり大きくない下記のスーパーマーケットを例に、計算方法をすすめる。
計算例
スーパーマーケット概要
売り場面積:1200m2
スタッフ人数:レジ・その他 10人
主要通路幅員:1.6m
その他の通路:1.2m
POSシステムレジ:5台
消防法による収容人数
収容人数:1200m2/4m2人=300人(スタッフ込み)
入店可能人数の結果
感染症対策8割削減により収容人数の2割とする
300人 x 20% = 60人(スタッフ込み)
入店可能来店客人数
60人ー10人(スタッフ人数)=50人
消防法および削減目標より算出した人数から、スタッフ人数10人を減じると、来店客50人が入店可能となる、勿論スタッフ人数を減らせば、入店可能な来客数を増やすことができる。
入店制限時1人の占有面積
1人当たりの対売場面積
売り場面積に対する1人の面積を計算すると
1200m2/60人=20m2/人
アメリカ「ウォルマート」では1,000平方フィートあたりお客を5人以下と、報告されているので、ウォルマートより安全側に働き良い数字だといえる。
ウォルマートの一人当たりの面積
1,000平方フィート=92.903平方メートル
92.903m2/5人=18.6m2/人
1人あたりの対通路等面積
では、この人数であれば通路等における一人の占有面積はどれ蔵になるか計算してみよう。
スーパーマーケットの通路等が占める面積はおおよそ60%〜65%であることから、例として取り上げた売り場面積1200m2の店舗であれば通路等の面積は、
1200m2x0.6=720m2となる。
入店可能人数を60人とすれば1人の占有面積は
720m2/60人=12㎡/人(約7.3畳/人)
1人当たり12m2、おおよそ7.3畳分の面積となり半径2mの空間が確保でき、ソーシャルディスタンス2mの2倍の距離となる。
ちなみに、売り場面積から入店人数を簡単に計算するには、60人/1200m2x100=5%となるので、各店舗で入店可能人数を算出する場合には、売り場面積に0.05を乗じ、入店可能人数を算出していただきたい。
1200m2 x 0.05人/m2 = 60人(スタッフ込み)
図1)入店人数60人の店内イメージ
図1)人数制限時のイメージ図
例えにあげた売場面積1200m2のスーパーマーケットに、54名の来店客と6名のスタッフを配置した。幅員1.6mの主要通路には5〜6m間隔で1人、1.2m幅のその他各通路に、それぞれ1人が歩くイメージとなる。作図して発見したのは、レジ周りの混雑で、通常の各レーンを連続して使用すると「密」になるため1レーンおきに使用することを検討願いたい。また、購入した商品を買い物袋へ詰め替えるサッカー台でも「密」が発生する可能性が高く、ソーシャルディスタンスを確保できない場合には、仕切り板などの設置も必要となる。
さらに、すれ違いざまに「密」になる危険性が高いようにも思われることから、実際に入店制限を検討する場合には、安全率として計算で得られた人数の8割ぐらいの方が妥当かもしれない。ただし、外部にあまり長い列ができるようでは、別の問題が発生する可能性もあるので、立地条件や地域性を加味していただきたい。
行列発生時の人数予測
行列人数の予測には、来店客の平均滞在時間が分かれば判断しやすい。
店舗によっては、POSあるいはセンサーで平均滞在時間を知ることができるのかもしれないが、今回は、どこの店舗でも簡単に確認できるGoogleマップで平均滞在時間を確かめる。
Googleマップ上で店舗の位置を示す(水滴を上下逆にしたよう)赤印をタップし、店名が表示されたら、下方向へスクロールすると「滞在時間の目安」に「この場所の平均滞在時間は〇〇分です」と表示される。
平均滞在時間の目安が15分とすると、1分あたりの滞在人数時間量は60人/15分=4人/分であるから、1時間だと4人/分x60分=240人となる。
簡単に計算するなら、時間あたりの入店人数滞在人数時間量は[60分/15分]であるから60人x4倍の人数240人となる。もし平均滞在時間が10分であれば6倍の360人、20分であれば3倍の180人となる。
しかし、実際にはスタッフは常時いるため、入店客の算出はスタッフ人数を減じなければならない。
同時に売り場で働くスタッフ人数をレジ係3名、商品出しや接客のスタッフ3名とすると、入店可能の来店客は、
60人(入店可能人数)ー 6人(スタッフ人数)=54人
が、入店可能な来客人数となる。
行列人数を予測する
先に示したように、この店舗の1時間あたりの来店客人数は、54人/分 x 4 = 216人/時が入店可能。
つまり、時間あたり216人を超えた来店客があると、行列が発生する可能性が生まれることになり、仮に時間あたり250人が来店予想される時間帯であれば、
1時間あたり250人/時 ー 216人/時 = 34人/時の延べ人数が行列に並ぶと予測される。
平均的滞在時間を15分とすれば、15分あたりでは8.5人、おおよそ8〜9人の行列となる可能性があるといえる。
各店舗で、おおよその行列発生予測が可能となれば、入店可能人数を設定したとしても、POSデータを確認することで、行列が発生する可能性がある曜日や時間、規模を予測し、スタッフの人数調整や、行列の発生予測を事前に来店客に通知するなど、対策を講じることが可能となるのではないだろうか。
レジサービス人数から試算
時間あたりのレジサービス人数
入店可能人数の結果
入店制限時1人の占有面積
レジサービスより算出時の店内イメージ
行列発生時の人数予測
時間あたりのレジサービス人数
図1)で判明したように、床面積から算出した入店可能人数では、レジ周りおよびサッカー台で「密」になる可能性が非常に高く、入店制限の意味がなくなることが考えられる。
レジ周り及びサッカー台での「密」を避けるには、レジサービス人数からの人数制限も検討しなければならない。
レジのサービス人数は、レジの種類やレジスタッフのスキルによっても異なるが、一般的には1.2〜1.3人/分といわれることから、来店客の人数は、時間あたり45〜50人とする。この場合、店内で働くスタッフ人数は入店可能人数から減じる必要はないであろう。
「密」を避けるため、5台あるレジの内、3台を稼働させるとすると、時間あたりの通過可能人数は135〜150人となり、この人数が、時間あたりの入店可能人数となる。
入店可能人数の結果
来店客の滞在時間平均が15分の店舗であれば、
150人/時 / 60分/15分 = 37人
入店可能人数は37人となる。
入店制限時1人の占有面積
店内の人数は、来店者数37人+スタッフ6人=43人
対通路等面積
1200m2x0.6/43人=16.7m2/人(約10畳/人)
対売場面積
1200m2/43人=27.9m2/人
図2)来店客37人とスタッフ6名の店内イメージ
来店客54人時に比べ、外周の主要通路はあまり変化はないと仮定しても、来店客の空間は大きく変わる。特に1.2m幅の通路では、2列に1人となり少し気をつければ、他人とすれ違うことなく買い物ができるようである。
行列発生時の人数予測
上記より、来店客の平均滞在時間が15分の店舗では、時間あたり150人以上が来店する時間帯には、入店待ちの行列が発生する可能性があると予測しなければならない。
行列人数の予測
レジ処理能力から、時間あたり150人を入店人数とした時場合、先の時間あたり250人が来店予想される時間帯では、
250人ー150人=100人
滞在時間15分とすれば、100/4=25人となり、おおよそ25名が入店待ちで行列に並ぶ可能性がある。
以上の計算は、各店舗で暗算でも計算できるように簡素化した試算で、あくまでも目安としてお考えください。また、実際に入店制限した場合、地域や店舗の特性により調整が必要になります。
換気回数から試算
換気扇能力の現状
ビル管理法による換気量の計算例
現状の平均在室密度を算出
既存店舗の換気能力
シックハウス対策の換気扇能力
入店可能人数の結果
換気扇能力の現状
売場面積が3,000m2以上あるいは、開放できる窓がない建物など、特殊な建築物を除いて、一般に街中に建つスーパーマーケットの建物に設置されている換気扇能力は、シックハウス法に基づく換気回数0.5回に対応する換気能力しか持ち合わせていないと、考えるべきである。
本来ならスイッチを付けてはいけないのだが、点検作業のためという暗黙の了解の上で付けられる「24時間換気」と、名称をつけたスイッチを見かけたことはないだろうか、それである。
厚生労働省は、密閉された空間の避けるため、商業空間における換気対策として、令和2年3月30日に商業施設における「寒気の悪い密閉空間」を改善するための喚起について」という参考資料を発表している。
参考資料では、ビル管理法に基づく指針値としているが、専門家以外の方が見ても、その内容を理解することは難しいのではないでしょうか。
また、換気設備がない店舗では、30分に1回窓を全開にするようにもと書かれているが、これからの時期、店内への虫や犬、猫の侵入も危惧され感染症と異なる被害が発生する可能性も否定できず現実的とはいえない。
ビル管理法による換気量計算例
ビル管理法では、居室の必要換気量参考値をして示しているが、この「平均在室密度」の数値が不明だと感じる方も多いでしょうし、店舗により採用する数値も大きく異なる。
ビル管理法の「標準在室密度参考値」と「毎時1人当たりの換気量」は下記の通り。
施設 | 標準在室密度(㎡/人) | 必要換気量(㎥/㎡•h) |
商店売場 | 3.3 | 9.1 |
百貨店(一般売場) | 1.5 | 20.0 |
百貨店(食品売場) | 1.0 | 30.0 |
百貨店(特売売場) | 0.5 | 60.0 |
しかし、一般の店舗にこの数字を当てはめることは、現実的ではないと思うことから、各店舗に合った現実的な数字を算出する方法を考えてみた。
現状の「平均在室密度」算出例
今回、感染症対策として現状に合わせ、簡単に計算するのであれば、最も混雑している時間の店内に同時入店している人数を数えるか、先に示した時間あたりの来店人数と、滞在時間の関係から「平均在室密度」試算することをお勧めする。
時間あたり来店人数:250人
平均滞在時間:15分
来客数:250人/60分/15分=62.5=63人
店内従業員数:7人
同時入店数:63人+7人=70人
現状の時間あたりの来店者人数と、店内従業員人数を加えた、同時入店人数70人をビル管理法における「平均在室人数」として同法の計算式に入れ試算する。
平均在室密度:1200(m2)/70(人)=17.1(m2/人)
必要換気量:30(m3/・人・h)/17.1(m2/人)=1.75(m3/m2・h)
必要換気扇能力:1.75(m3/m2・h)x1200(m2) =2100(m3・h)
特にビル管理法の基準を法的に求められていない既存店舗では、決して上記の参考値を満足させる換気設備が備わっていると思えない。
既存店舗の換気設備の能力
一般のスーパーマーケットに設置されている換気扇能力は、平成15年7月1日に施行された建築基準法によるシックハウス対策基準を満足させる能力しか設置されていないと考えた方が良い。その換気能力は、使用する建材により異なるが、一般的には換気回数0.5回であり、例に上げた店舗規模のの換気能力は下記の通り。
シックハウス対策の換気扇能力
店舗容積:1200(m2)x3(m)=3600(m3)
必要換気回数:0.5回
必要換気量:3600(m3)x0.5(回)=1800(m3)
ただし、改正建築基準法施行日(平成15年7月1日)前に新築、大規模な模様替え、増改築など基準法の申請を行なっていない店舗はこの限りではありませんので、個別に換気扇を調べる必要があります。
以上の結果から、時間あたり250人の来店客がある時間帯で、同時入店人数が70人の状態では、店内の換気量は300m3/hの換気不足となっている可能性が高い。
入店人数の計算結果
では、この店舗の場合、実際に設置されている24時間換気扇の能力で何人まで入店可能なのかを計算するため、先ほどの毎時必要換気量から逆算する。
必要換気量:1800(m3•h)/1200(m2)=1.5(m3/m2•h)
平均在室密度:30(m3/人•h)/1.5(m3/m2•h)=20(m2/人)
同時入店員数:1200(m2)/20(m2/人)=60(人)
簡単な計算法
シックハウス対策を施されている建築物であれば、下記計算法がもっと簡単である。
床面積(m2)x天井高さ(m)=売り場容積(m3)
売り場容積(m3)x0.5(回/h)=換気能力(m3/h)
換気能力(m3/h)/30(人/m3/h)=同時滞在可能人数(人)
計算例
1200(m2) x 3(m) = 3600(m3)
3600(m3) x 0.5(回/h) = 1800(m3/h)
1800(m3/h) / 30(人/m3/h) = 60(人)
従業員を含め、同時入店員数が60人以下であれば「密空間」を回避できる可能性が高いといえる。
この60人という人数は、先に消防法と感染対策より算出した人数と同じなので、1人当たりの占有面積等は下記を参考にしていただきたい。
入店制限時1人の占有面積
売場面積より算出時の店内イメージ
行列発生時の人数予測
また、既存換気設備のフィルターやダクト内メンテナンス状況により、換気能力が低下している可能性もありますので、設備の点検・確認は十分に行ってください。
もちろん厚生労働省が注意喚起しているように、この人数を満足し「密空間」でなくなったとしても、換気の悪い密閉空間」はリスク要因の一つに過ぎず、一人あたりの必要換気量を満たすだけであることを忘れてはいけない。
スーパーマーケット の感染対策
1)来店時間変更
2)滞在時間短縮
3)ご家族に対し1名の入店
4)高齢者。妊婦さんへの配慮
5)身体障害者への配慮
6)マスク等の着用義務
7)イートインコーナーの閉鎖
8)お手拭きの配布
9)バラ売の中止
10)特売品の分散化配置
11)ロングライフ商品の表示
12)商品の場所を判りやすく
13)賞味期限・消費期限の表示
14)惣菜コーナーの値引き方と時間
1)来店時間変更のお願い
各店舗の混雑する時間を表示し、来店時間の検討を促す。
2)滞在時間短縮のお願い
先に例とした1200m2の店舗で、来店客の滞在時間が15分の場合と滞在時間が10分の場合を比較すると
15分の場合 54人/15分=3.6人/分
時間あたり 3.6人/分 x 60分 = 216人/時
10分の場合 54人/10分=5.4人/分
時間あたり 5.4人/分 x 60分 = 324人/時
となるため時間あたり324人の来店客があったとしても行列は発生しないと予測される。
3)ご家族に対し1名での入店依頼
ご家族で入店されたい方は、混雑時を避けた時間帯に来店いただけるよう周知する。また、ご家族で入店しても店内での会話はなるべくしないよう表示する。
4)高齢者・妊婦さんへの配慮
長期化することが予想される今回のコロナウイルス対策として、高齢者や妊婦さんへは、店頭に来なくとも電話注文やFAXで受け付け宅配をする。
あるいは、購入希望商品のリストや、チラシのお買い得商品の片隅に個数を記入する欄、裏側には買い物リストを記入できる欄を作り、そのリストやチラシを店頭に持参すれば、スタッフが商品を選び出すようにすれば、少しでも滞在時間の短縮や店内の「密」を避けることにもつながる。
5)身体障害者への配慮
スーパーマーケットの来店客には、車椅子を使う方や耳が不自由な方もいる。車椅子の方には、スタッフが買い物に同行し、滞在時間を短くするお手伝いをする。
また耳の不自由な方の中には、スタッフがマスクをしているため、読唇術が出来ず、コミュニケーションが取りにくいと聞く。
全日本ろうあ連盟では、ホームページで自由に使用できる「手話・筆談マーク」を提供しているので、レジやサービスカウンターに「手話・筆談マーク」を貼り付け、少しでも耳の不自由な方への配慮もしなくてはならない。
同じく耳の不自由な方に向けて、全日本難聴者・中途失聴者団体連合会が定める「耳マーク」もあるが、使用には申請が必要なので、注意が必要。
6)マスク等の着用義務
マスクをしていない来店客を見ると、その他マスク着用の客は不安に思うであろうから、マスクを持参していない方には、毅然と入店をご遠慮願う。ただし非常事態であったとしても、スーパーマーケットはサービス業であるからペーパータオルなどを使用した簡易的なマスクの用意をしておくなどの気遣いは必要。
7)イートインコーナーの閉鎖
消費税率変更時に話題となった「イートインコーナー」だが、未だに開設しているスーパーがあれば、余程危機管理がずれた店舗であると言っても良いかもしれない。マスクを外し食事をする場所は、来店客の滞在時間が長くなるり、感染拡大の危険性も高まるため即刻閉鎖すべし。
8)お手拭きの配布
国民全員の命を守り、店舗から1人の感染者も発生させないという高い意識を持つなら、念のため買物の品を自宅で消毒していただくため、コンビニやお弁当に付いているお手拭きを来店客全員に配っても良いだろう。
9)バラ売りの中止
そのまま洗って食べるトマトやキュウリ、ネギなどは全て袋詰めにし、商品そのものを触れないようにしておく。どうしてもバラ売りにすると、来店客はあれこれ商品を素手で触るため、万が一にも食材表面にウイルスが付着していたとしたら、感染すす恐れがある。袋に入れておけば、帰宅時に袋そのものを除菌シードで拭き、中身だけを取り出して冷蔵庫に収納すればより安全である。
10)特売商品の分散化
チラシや特売品を廃止する方法もあるが、来店客の満足度を維持するなら、一部のスーパーマーケットで行なっている、お買い得商品を発見する満足感や意外性など、来店客の購買意欲を掻き立てるため、導線を長くし滞在時間を延ばす商品陳列から、感染症対策として、特売品は主要通路上に分散させ、人が集中する場所を作らない商品配置の工夫が必要だ。
11)ロングライフ商品の表示
ロングライフ商品であれば、その旨を表示することで滞在時間の短縮を図り、来店客の利便性向上員もつながる。新鮮野菜なども茹でた上で、真空パックにした商品も発売されている。
12)商品の場所を判りやすく
素早く目的の品を入手できるように、店内案内図などを配布する、あるいは、来店客が店内の商品位置を簡単に認識できるようにするためPOPの大きさや、内容、配置の再検討も必要だ。
13)賞味期限・消費期限の表示
買い物回数を減らすとなれば、食材の賞味期限・消費期限が気になることは、消費者心理としては当然のことである。商品の賞味期限・消費期間を来店客に判り易く表示する必要がある。また賞味期限・消費期限が近い定番商品は、できれば閉店中に値引シールを貼っておく。
14)惣菜コーナーの値引き方法と時間
夕方の時間位なると、惣菜コーナーの品を値引きしているスーパーマーケットも多い。惣菜などは値引時に混雑する惣菜コーナーの「密」を避けるため、混雑する時間帯前に貼るか、値引き金額は3割までとし、惣菜点数を調整する必要があるのかもしれない。