浸水被災住宅の点検

2019/10/14 更新2020/3/15

災害と住宅

風害被災住宅の点検と対策はこちら

早期再建を心より願い

令和元年10月、大型の台風19号により尊い命を落とされた方々のご冥福とご家族へのお悔やみ申し上げるとともに、被害に遭われた皆様に心よりお見舞いを申し上げます。甚大な被害の大きさと、日常の暮らしに戻ることへの未通しも立たない方も多くいらっしゃる様子に心を痛めております。

もくじ

図解 被災住宅の点検箇所

点検作業をする前の注意事項

1 断熱材の種類を確認する
2 耐力壁の工法を確認する
3 外壁通気工法住宅の場合
4 基礎パッキン工法住宅の場合
5 床仕上げ材に下張りがある場合
6 床下浸水の住宅
7 外部コンセント
8 給湯機など
9 灯油タンク
10 排水設備(排水升・排水管・浄化槽など)
11 アスベスト使用建築物への気掛かり
12 見知らぬ建築業者にご注意

13 浸水後に浴室の臭いや排水時間が気になる

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濁流に大切な住まいをのみ込まれてしまった方々、さらに住宅が浸水してしまった皆様には、少々酷な話になるかもしれませんが、浸水してしまった住宅に1日でも早く安全に安心して暮らすため、また浸水後、将来に向けた再建のためにも早期の住宅点検を欠かさず行って下さい。

浸水後の住宅点検箇所は、浸水の深さや工法、地域によっても異なるが少なくとも10箇所はあるので忘れずご確認ください。住み始めてから不具合を発見すると二度手間、三度手間になり、工事期間も長くなり、その分費用も嵩む場合も多くなると心得ていただければ幸いです。

点検作業をする前の注意事項

点検は水が引いた後、お住まいを掃除をする前が良いかと思います。
報道でも伝えられているが、まずは身の安全を確保して下さい。洪水時の濁流は、地表や地中に潜む細菌類あるいはカビを多く含んでいます。また街中では、下水道の生活排水も混入している可能性も高く、下水道の生活排水と同じだと意識した方がいいでしょう。室内であっても目に見えない箇所を触る必要もあるので、マスクやゴーグル、厚めのゴム手袋に長袖、長ズボンを着用し底の厚い靴を履いてください。

保険

もし、水害の保険に入っているようであれば、現状を正しく把握し、後々問題が発生しないよう保険代理店に報告しておくことが、生活再建の1番の近道であることに間違いはありません。あいにく保険に入っていなくても、現在の住宅を建て替えすることなく修復を考えている方は、後々大きな後悔をしないためにも、酷ではありますが念には念を入れた点検をしてください。

図解【浸水した住宅の点検箇所】

図解 浸水した住宅の点検箇所

1)断熱材:最初に断熱材の確認をしてください。

一般的に最も多くの住宅に使用されているグラスウールやロックウール断熱材は、一度水分を含むと決して乾くことが無いため、全て交換しなければなりません。住宅を再建する場合には、水に浸かり汚れた床や壁を綺麗に掃除をしただけでは済まないのが現実である、床、壁に使用されている断熱材が汚水を溜め込んでいる可能性が極めて高い。壁の断熱材種類を確認するには、念のためブレーカーを落とした上で外壁面に取付けられたコンセントや照明スイッチを取り外し、中を覗いて確認します。仕上げ材が張られていない、天井裏や床下でも確認が可能です。床の断熱材は、床下点検口もしくは床下収納を取り外し、確認してください。基礎断熱工法であっても、基礎断熱材には浸水に強い素材を使用している可能性が高いのですが、外壁の暖熱材は基礎と異なる素材を使用しているかもしれませんので断熱材種類だけは、確認が必要です。

もし、グラスウールやロックウールなどの段熱材が使用されているようでしたら、断熱材全ての交換が必要になります。もし、綺麗に掃除をして以前の住宅と同じように一時的に暮らせたとしても、その家は断熱性能がなく洪水時の泥水を溜め込んでおり早くて数週間遅くとも数ヶ月後には、内壁に打ち付けてある石膏ボードが朽ち果て、穴が空いたりカビが大量発生する可能性が非常に高く、健康にも悪影響を及ぼし、やがて構造材の腐敗が始まると耐震性能がなくなるばかりか、建物自体の寿命も短くなる。現場のまま壁や床の撤去をして、壁材や床材、断熱材も全て撤去し、災害ゴミとして搬出し、壁や床の消毒を行ってしまう方が得策です。

2)耐力壁

もし、耐力壁に筋違い以外の耐震ボードが使用されているようでしたら、建築された住宅会社に耐水性の確認をしてください。一部製品には耐水性能が脆弱であり、一度濡れてしまうと、地震時にその性能を発揮できず、建物が倒壊する可能性が生じます。耐力壁の確認は、建築した住宅会社へ問い合わせるか、少々難しいかもしれませんが、天井裏や床下点検口、床下収納などから確認できる場合も多く、もし外壁面近くにこれらの点検口があれば、そこから外壁の断熱材を少しずらして目視で確かめます。概ね薄茶色の製品が多いようですが、中にはセメント系の灰色をした製品もあります。

NHK朝の情報番組「あさイチ」にて、浸水してしまった住宅の断熱材は必ず点検しなければならないと紹介されており、住宅関係者としてとても嬉しく感じているが、最近の住宅に使用される耐力面材(耐震ボード)の中には、断熱材と同様に水分を含んでしまうと、乾燥しにくく建物に悪影響を及ぼす製品や、浸水により耐震性能が低下する商品もあるので、繰り返しになりますが、使用している耐力面材(耐震ボード)の点検も欠かせない。

201年12月18日追加更新

3)外壁通気工法の通気口

近年、壁体内結露を防止するため、外壁に通気工法を採用している住宅が多く、外壁と水切りの間に2センチほどの空間を設けています。ご自宅が通気工法であれば、外壁の下端部に防虫ネットが取り付けてあると思います。その防虫ネットに泥などが付着し、通気の妨げになっていないか確認してください。もし通気が妨げられると後々、外壁壁体内結露が発生する可能性が高く、建物に悪影響を及ぼします。

4)基礎パッキンの防虫ネット

基礎に風窓が無い住宅の多くは、基礎パッキン工法を採用している場合が多く、基礎と土台の間に防虫ネットを張ってある場合が多く、この防虫ネットにゴミや泥にて目詰まりしている可能性がある。基礎パッキン部分の通気が妨げられると、床下を綺麗に掃除をしたとしても、基礎内の通気ができなくなり、やがて土台やタルキ柱の腐敗が進行し、建物の耐久性能を著しく低下させます。基礎と土台の間隔はおよそ25mmと、とても細かなところですが、住宅にとっては非常に大切な部分であるため、風窓が無い住宅であれば、必ず確認していただきたい。

5)床仕上の下張り

床鳴りや不陸調整、床剛性の向上あるいは床施工の簡略化のため、床仕上げ材の下にもう一枚合板を張ってある住宅があります。汚れた床を相異したとしても、床仕上げ材と床下張りの隙間に泥水が入り込んでいる可能性が非常に高く、床掃除をして乾かしたとしても、この隙間に泥水があると、床の乾きが悪く最悪、床の腐敗や健康障害を発症する可能性が高くなります。

床下張り材の確認は、床下点検口から覗き、目視にて床の仕上げ材と異なる素材を使用しているか否か確認する方法と、床下点検口の枠を取り外せるようでしたら、取り外した後、床材の小口で判断する。あるいは小口の厚みを測り、おおよそ20mm以上であれば下張りをしてある可能性が高い。

6)床下浸水

床上浸水してしまった住宅はもちろん、たとえ床下浸水で済んだとしても、住宅が浸水してしまった住宅の床下には泥水が流れ込んでいます、近年多くの住宅に採用されているベタ基礎であれば、床下の泥水はいつまでも溜まったままです。床下浸水で済んだと軽く考えないで、床下の点検と念のため、床断熱材が泥水を含んでいないか確認し、消毒をしてください。もし断熱材が濡れていた時には、断熱材の種類にもよりますが、基本的には取り換えが必要。

浸水した外部コンセントに泥などが付着したままにしておくと、湿気などで漏電を起こす可能性難くなります。本来であれば専門業者に点検の依頼をしなければなりません。決してお勧めいたしませんが、もしご自身で点検されるようでしたら、念のためブレーカーを落とした上で、外部コンセントの上下にあるビスを取り外し、泥などが付着していないか確認します。泥が付着しているようであれば、綺麗な水で流し落とし、コンセントを外したままにして十分に乾燥したら、外壁に取り付けます。

住宅設備等

8)給湯器等

給湯や暖房用のボイラーなどが浸水してしまった場合、マイクロコンピューターなどの精密機器類や、保温材には乾燥しないグラスウールやロックウールなどの断熱材が使用されている製品も多く、残念ながら再使用は難しいと判断ください。ただし、コンセントが差し込んである場合は、直ちに抜き漏電やそれによる火災が発生しないようご注意ください。

9)灯油タンク

灯油タンクが設置してあれば、灯油タンク内に泥水が流れ込んでいないか確認してください。蓋を開け内部を目視するか、タンク下部に水抜き用のバルブが付いている製品が多いので、バケツなどを線の下に置き栓を緩めてください。バルブ方式の水抜きであれば、さほど問題はありませんが、中にはネジ込み式の水抜きもあり、ネジ式の栓を完全に外してしまうと、素人では、完全に内部の液体が抜けきらないと栓を元に戻すことがとても難しく、内容物の確認を行う場合には、ある程度栓を緩めれば内容物が漏れ始めますから、必ず、内部の液体が漏れ出す程度に栓を緩めるに留め、完全に取り外してはいけません。

10)排水設備

屋外の排水管には何箇所か升が設置されています。排水管が土砂で詰まっていないか、升の蓋を開けて確認してください。下水道が整備されている地域では、敷地内の道路に一番近い升は公共升と言って、その升から下水道本管に接続されています、本管から土砂などが吹き上がっていないか確かめます。また、升の中にはトラップ升という下水道本管からの臭気などを止める升もあり、この升は、土砂を溜め込んでいる可能性が非常に高く、詰まっている場合には排水できません。必ず全ての升を確認してください。排水管や升が詰まっていた場合には、早期であれば水道水で流し掃除をしてください。もし泥が固まっていると排水管専用の掃除道具が必要になる場合もあります。また甚大な災害を受けた地域では、下水道への排水制限が設けられている場合もありますので、役所等行政機関へお問い合わせください。

排水管と共に、浄化槽を設置されている場合には、浄化雄内部の確認が必要です。泥水が侵入していれば、使用を控えるか、毎年の点検を依頼している業者さんへ現状を伝え、指示に従ってください。点検することなく浄化槽を使用すると、目詰まりなどで浄化槽から排水が噴き上がってしまう場合もあります。必ず内部点検した後に使用してください。

浸水被害とユニットバス

浸水被害とユニットバス

浸水の被害を受けた後、お風呂場に嫌な臭いや、浴槽の排水が悪くなったと感じることはありませんか?

そのように感じる方のご家庭は、もしかするとユニットバス内に汚泥が溜まっている可能性があります。

浴室の排水方法

浴室の排水方法は、基本的に3種類あります。
1)浴槽の排水口と床の排水口をパイプで繋ぎ、1本の排水パイプで流す方法。
2)浴室床上に浴槽を置くタイプで、浴槽の排水を床上に流し、床排水口で受け止める方法。
3)浴槽の排水と床の排水をそれぞれ分け、別々に排水する方法。

ユニットバスに使用される排水方法は、1もしくは2で、1は排水パイプで繋がれているので、浸水を受けたとしても汚れた部分を綺麗に掃除し、消毒すれば問題はありません。

しかし、2の方式が非常に問題で、要室や浴槽を綺麗に掃除して一見綺麗になったと思っても、浴槽下の部分に汚れが溜まっている危険性があります。

浸水後、浴室の臭いや排水に時間が掛かるように感じる方は、改めて浴槽下の点検をおこなってください。このタイプの戸建用ユニットバスの多くは、浴槽下の点検補修を行うため、エプロンといって、床と浴槽天端の間の立ち上がり部分が取り外せるようになっています。このエプロンを取り外し浴槽下の点検を行なって下さい。

ユニットバスを選ぶとき

たとえ浸水危険地域でなくとも、2の排水方法は、浴槽下には垢や石鹸カスなどが大量に蓄積し、カビや雑菌の温床になります。ユニットバスを選ぶ際には、床排水方法にも十分配慮し、決して2の排水方法を選んではいけません。


最後に気掛かりなこと

今回の災害では、住宅ばかりでなく工場や倉庫、駐車場なども罹災した建物が多いように見受けられます。このような鉄筋や鉄骨の建築物の所有者の方で、万が一にもアスベストの除去をしていない建築物が罹災しているようでしたら、掃除などせず、専門業者に相談してください。掃除によりアスベストが飛散すれば二次災害が発生し、一建築物の問題ではなく、環境問題あるいは住民の健康障害につながります。

再度言います。
もし、アスベストを使用したままの建築物を所有しているなら、決して掃除せず専門業にご相談ください。
心よりのお願いです。

見知らぬ建設業者

過去の災害時にも人の弱みにつけ込み、心ない営業をされる業者さんがいないとも限りません。お知り合いの建設業者さんに補修工事を依頼できればよろしいのですが、もし見知らぬ建設業者の営業マンが訪ねてきたら、必ず「建設業の許可番号」を聞き出して下さい。建設業は、どのような職種でも許可制になっており、都道府県知事もしくは大臣許可がなければ営むことができません。
また、建設業者の許可番号は国土交通省の「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」で検索することができます。ただし、許可番号の確認だけで見知らぬ会社を信じることは難しいですが、何かの手助けになると思います。

「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」https://etsuran.mlit.go.jp/TAKKEN/
画面上部「建設業者」をクリックし検索画面へすすみます。


ソフト ボランティア

実際に被災地に赴き、災害復興の支援や現状確認のお手伝いをさせていただければよろしいのですが、現在、現地へ赴くことが難しく、当地にて被災された住宅の点検方法や修復方法のご相談、困りごとがあれば、お気軽に下記フォームよりご連絡下さい。電話にてのご相談をご希望の方は連絡先をご記入いただければ、後ほど当方からご連絡をさせていただきます。

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