投稿日:令和2年2月9日
更新日:令和2年3月5日
建築から考える家庭内事故対策
家庭内事故の現実
平成30年、36,643名(交通事故を除く)(※1)もの尊い命が不慮の事故(交通事故を除く)で失われていると厚生労働省の統計から明らかになっている。さらに家庭内事故で死亡した方は、おおよそ15,500名(※2)と推測される。ちなみに同年交通事故死者数は4,595名でありおよそ3.4倍にもなる。
(※1)厚生労働省平成30(2018)年 人口動態統計(確定数)の概況 第7表「死因簡易分類別にみた性別死亡数・死亡率(人口10万対)」
(※2)厚生労働省 不慮の事故死亡統計 平成21年度「不慮の事故死亡統計」の概況 第5表・第6表 「発生場所別交通事故以外の不慮の事故死亡数の年次推移-平成7~20年-」を参考に比率算出
家庭内事故は、暮らし方や生活様式などに起因する場合も多いが、住宅そのものが原因となりうる場合も少ない。住宅を新築する場合には、いつまでも健康であるとともに、悲惨な家庭内事故を少しでも未然に防ぐ新築計画をしなければならない。
□ 家庭内事故とは □
家庭内事故とは、政府の人口統計では「家庭内における不慮の事故死」とされ、家庭(住居、庭)を構成する住宅および自宅内で使用・利用される商品による事故とする。
もくじ
■ 住宅が起因と考える三大家庭内事故
転倒・転落
溺死・溺水
煙・火災および火災への暴露
■ 部屋別:家庭内事故対策
階段
寝室・子供部屋の窓
居室
浴室・水まわり
台所
■ 煙・火災および火炎への暴露対策
■ 編集後記
□ column1「階段」
□ column2「塩のLD50」
住宅が起因と考える三大家庭内事故
■ 転倒・転落
■ 溺死・溺水
■ 煙・火災および火炎への暴露
転倒・転落
平成30年家庭内で転倒転落にて命を落とした方は、推定で約2900名。(※2)
家庭内で発生する転倒事故は、住宅のいたる所で発生する可能性がある。階段を踏み外して転落したり床の段差、敷物やコード類に足を取られて転倒する、浴室などで滑って転倒することも多い。
家庭内で思わぬ事故にあうのは、住み慣れた住宅内で日常的に習慣付けられた行動の中、いつしか家の中は安全という思いこみが、安全に対する配慮をおろそかにしているとも考えられる。逆に言えば、注意力が散漫になりやすい空間であるからこそ、住宅を計画する場合には、住宅内で発生しうる危険を想定し、心から安心できる自宅を計画しなければならない。
溺水・溺死
平成30年自宅内で溺水による死者数は、おおよそ4300名と転倒転落死者数の約1.5倍。近年、乳幼児の浴槽での事故は減少している傾向にあるが、5〜44歳の事故は横ばい、45歳以上特に高齢者(65歳以上)の事故は急増しているとの報告もある(※3)。溺水・溺死の建築的原因として、乳幼児は浴槽への転落対策が不十分であったこと。高齢者の事故では、大きな室温差によるヒートショックが大きな原因であると認識されている。
(※3)国大法人長岡技術科学大学大学院教授 斎藤秀俊
煙・火災および火炎への暴露
平成18年(2006)年火6月1日から全ての住宅に火災警報機の設置が義務付けられた。翌年の平成17年から住宅火災件数は減少し、平成30年と平成17年を比較すると、発生件数は約62%、火災死者数は73%にまで減少している(※1)しかし、平成30年の総務省消防庁の報道発表(※2)によれば、平成30年の住宅火災発生件数11,019件、火災死者数889人それぞれの1日平均は、住宅火災発生件数30件、火災死者数2.4人と少なくはない。
(※1)参考:総務省消防庁予防課予防係報告書
(※2)総務省消防庁:令和元年9月6日報道発表
部屋別:家庭内事故対策
階 段
転落事故が多発する階段の対策
転落で重篤化しやすい階段は、階段そのものの安全性のほか、平面計画(間取り)をはじめ階高や天井高さ、外観のプロポーションに加え、建築基準法の斜線制限、最高の高さなど設計上で大きな影響を及ぼすため、一番最初に決める必要がある重要なポイントの一つ。
階段の安全性は、「け上げ」「踏み面」「段数」と「階段の形状」で決まる。
階段の名称
階段の「け上げ」と「踏み面」
建築基準法でも階段寸法は決められているが、住宅の場合、建築基準法の寸法は、け上げ23cm以下、踏面15cm以上と、まるで梯子のような階段で、通常の住宅では設定しない寸法であっても適合するため、階段寸法に関しては、ご自身で危険を感じることなく、上り下りできる寸法を十分に把握しておく必要がある。
【建築基準法の階段寸法(抜粋)および推薦寸法】
A]□ 小学校児童用
け上げ:16cm以下|踏面:26cm以上|幅:140cm以上|角度:31.6度以下
B]□ 中学校、高等学校、中等教育学校の生徒用
□ 劇場、映画館、公会堂、集会場等の客用
□ 物販店舗(物品加工修理業を含む)床面積の合計が1,500㎡を超える客用
け上げ:18cm以下|踏面:26cm以上|幅:140cm以上|角度:31.6度以下
C]□ 直上階の居室の床面積の合計が200㎡を超える地上階用のもの
□ 居室の床面積の合計が100㎡を超える地階、地下工作物内のもの
け上げ:20cm以下|踏面:24cm以上|幅:120cm以上|角度:39.8度以下
D]□ 住宅(共同住宅の共用階段を除く)
け上げ:23cm以下|踏面:15cm以上|幅:75cm以上|角度:56.9度以下
E]□ 推奨階段寸法
け上げ:20cm|踏面:25cm以上|幅:75cm以上|角度:38.7度
安全性・面積・コストを配慮した階段寸法
階段の適切なけ上げ・踏み面寸法の算出法は、何種類かあるものの住宅に限れば、角度40度以下、け上げが20cm以下であり、け上げ寸法と踏み面寸法を足して45cmになるように計画したい。角度が緩くなればなるほど安全性は向上するが、その分平面状の面積が必要となり、コストもかかるため安全性を確保しつつ、面積やコストへ配慮した寸法として、け上げ20cm、踏み面25cmを推奨する。
階段で外観も変わる
階段と階高
床面から直上階床面の垂直距離を「階高」というが、階高は、少なければ少ないほど安全であり、高齢になっても上りやすい。かといって計画性のない住宅を設計すると、天井の高さを十分に確保できない住宅になる危険性もある。階高は、階段の段数や面積にも大きな関係性があるため、安全で上り下りしやすい階段を設置するには、間取りの段階で階段の「け上げ」「踏み面」の各寸法と「段数」に加え、階高および各室のゾーニングも十分に検討しなければならない。
例えば、推奨するけ上げ200mm踏み面250mmと設定すれば、12段で階高2400mm、階段長さは直階段で2,750mmとなるが、段数15段で階高3,000mmと設定すると、階段長さは3,500mm必要となり、階段部分の面積が750mm余計に必要となる。間取りを計画している時、この差を埋めようとすれば、どうしてもけ上げ・踏み面の寸法を調整しなければならなくなるため、階段勾配が急になり、危険な階段となってしまう。正直言って間取りの段階で、階段の角度まで気にされる方は少ない。
階高と天井の高さ
住宅は低くする計画するほうが、より美しく安全性も構造的や経済的にも有利に働く。階段のけ上げと踏面の寸法を決定したら何段で上がるかを決定し階高を決める。一般的に住宅の高さは、階高3,000mm、天井高さ2,400mmとしているだろう、この寸法は非常に無難な寸法で、間取りが施主の希望に叶えば、ある程度どのような間取りであっても設計に工夫を凝らす必要がなく、現代では、間取りをパソコンに取り込めば、自動的に工業製品的で無味乾燥な冷たい住宅の設計図書一式が仕上げられる。しかし、本当に施主の目線で住まい手の暮らしを考え、少しでも安全で、より豊かな空間、上質な暮らしを住まい手に届けるには、階高を含め細部にわたる寸法の検討が不可欠である。
一般的な階高寸法3,000mmに天井高さ2,400mmを設定すると、1階天井裏には600mmの無駄な空間が出来上がる。この空間に天井照明用の電線や、換気扇など空調用のダクトを通すために必要だという意見もあるが、それは単に無計画な設計であることを認めているようなもの。階高2,600mmでも梁高360mmの梁を化粧にすれば十分に天井高2,400mmを確保できる。ましてや水回りや四畳半ほどの部屋に天井高さ2,400mmは必要ないだろう。例えば、トイレや洗面・脱衣室は2,200mmほどでも良いと思う。もっと言えば2階部分の階下に、水回りや納戸、四畳半の和室を計画し、2階の床を踏み天井とする階高2,400mmの住宅を計画することも可能であり、安全で豊かな空間を生み出す住宅の設計にもつながる。極端にいえば、2階に4.5畳の子供部屋2部屋程であれば、階高2,200mm程の住宅も設計できるであろう。
階高と新築費用
戸建て新築工事の国内平均的延床面積に近い128.06㎡の住宅を想定し、外壁をリシン掻き落とし仕上げとした場合、階高3000mmと2400mmと設定した外壁のコストを試算してみると、およそ36万円の違いが発生する。
「階 段」
世界的に有名な階段といえば、バチカン市国のスカラレジアやパリ・オペラ座(ガルニエ宮)の美しい階段に加え、バルセロナ・サグラダファミリアの尖塔内の狭い螺旋階段も忘れがたい。国内では、箱階段や隠し階段、吊り上げ階段と地方や用途に応じて、先人達はいく種類もの階段を生み出してきた。そうそう「階段」と言えば映画「蒲田行進曲」の階段落ちを思い浮かべる方もいるかも。しかし住宅に限れば、やはり安全第一、階段から落ちることは避けたい。住宅の階段を計画するには、やはり安全性を最優先に考えた上で、美しさや機能性を加えたい。ただ見た目が美しい階段や、機能性重視の階段では住宅にふさわしとは言えない。
階段の種類・形と安全性
住宅で主に使われる階段の種類は、180°反転する「折り返し階段」90°回る「折れ階段」一直線に上る直階段と回りながら上る螺旋階段がある。螺旋階段以外であれば、階段途中に踊り場を設けることにより安全性は向上するが、段が連続するといずれの階段であっても転落すると危険性が増す。
今回、安全性の高い寒暖から順にA・B・Cのランク付けを行なっているので、住宅計画時の参考にしていただきたい。
Aランク
やはり最も安全性が高いA+の階段は、折り返し部分に平面の踊り場を設けた「折り返し階段」となる。この踊り場に一段付けると上階から転落しても中間で身体が停止するであろうが、踊場に段があることで、つまづく可能性が高くなるためAとし、折れ階段であっても中間に踊り場を設ければA-としても良いだろう。
Bランク
折り返し階段であっても、踊り場部分に段を設けると危険度は増す。止むを得ず踊り場部分に三角の段を設けるなら、上階の方に踊り場を設けた方が安全性が高いであろうからB+とし、下階に踊り場を設けた階段はBとしている。住宅ではあまり考えられないのだが、直通階段であっても、中間域に踊り場を設けるならBと評価してもおかしくはなく、スキップフロアの住宅を計画するなら直階段でも安全な階段を計画できる。折れ階段の踊り場部分に段を設けてしまえば、上階から転落した場合階下まで身体をひねりながら転落する可能性もあるので、できればこのような階段は避けたい。
Cランク
空間に変化を与え、階段面積も最小限で計画できる螺旋階段だが、安全性の観点からはやはりC-の判断。同じく直通階段も危険性から考えれば螺旋階段と同等ではあるが、もしもの落下時には直線的に落下する方が、身体への負担が少ないかとCにした。折れ階段や折り返し階段であっても、本来踊り場として平面であるべき場所に段を設ければ、危険な階段となりうる。
正しいずれの階段であっても、勾配が緩ければこの限りではないのだが、一般的な住宅面積ではスペースの確保は難しいだろう。
段板の滑り止め
滑り止めの基本は、段鼻に凹凸をつけか段の仕上げ材に滑りにくい素材もしくは、加工を行うことである。だが、履き物を着用する場合には、凸のノンスリップが最も効果的であることに間違いはない。住宅の場合、スリッパやルームシューズなど履物を着用する暮らしであれば凸の滑り止めが有効。ただし、凸のノンスリップは、素材や形状により足に痛みを感じる場合もあるので、靴下や素足の生活であれば凹みをつけた滑り止めの方が良い。また、階段用のカーペットも販売されているが、掃除を丁寧にしなければ、カビやダニの温床になる可能性が高く要注意である。
無垢板あるいは、集成材(接着剤を使用しているので、あまりお勧めはしたくはないが)の段板に滑り止め加工をするには、段板の段鼻に溝を彫り凹みを作る方法と、麺を削り凸を浮き出す方法がある。いづれも、掃除がしやすいよう、両端から少なくても30mmほどは凹凸をつけず平面にしておく。凹面はルーターやトリマーなどの木加工機を使用すると簡単に仕上げられる。一枚板に凸面加工するには、凸以外の部分を毛面なけらばならないので、作業には時間がかかるが、段鼻を分かりやすくすつため、槐(エンジュ)や楢(ナラ)、梻(タモ)、栗(クリ)(上図の濃い色部分)など色の異なる木を用いる方法もある。
さらに無垢の一枚板であれば、杢目を浮き立たせた浮造り(うづくり)仕上げや、鍬(くわ)に近い形の斧で仕上げる、釿・錛・手斧(ちょうな/ちょんな)仕上げを施せば、足触りが良く、滑りにくい段板が仕上がる。もちろん、段鼻に滑り止め加工をする方が、安全性は高くなる。
浮造り仕上げは、屋根材にも使用される茅(チガヤ、スゲ、ススキなどの多年草)の根を束ねた浮造(うづくり)と呼ばれる道具を用い、材の表面を擦って仕上げるため、少々練習すれば誰にでも出来るので、自宅の工事をするときには、ご自身で浮造仕上げに挑戦してみてはいかがだろうか。伝統を重んじるなら、数千円で購入できる浮造を選び、新築した住宅に道具を飾っておくのも、後々良い思い出になるのでは?しかし、時間に制限があるなら、電動工具にナイロンブラシやワイヤーブラシを取り付け道具を使うと、より簡単に仕上げることができる。
電動工具をご使用の場合は、取扱説明書を熟読のうえ利用下さい。
手斧仕上げは、斧を使い危険なので、あまりお勧めはしないがもし経験したいなら、熟練の大工さんから十分に手ほどきを受けていただきたい。くれぐれも自己流で作業をしないようご注意ください。
「春日権現験記」一部抜粋
(かすがごんげんげんき)
画像中央二列に描かれた手斧で木材加工をする人々。
写真提供:国立国会図書館 デジタルコレクション
階段手摺り
滑り止めと同様に、安全に階段を上り下りするには手摺りの設置が有効。特に幼児期の子供や高齢者には必要である。手摺りの取り付け高さは、基本的に段鼻より高さ750mmの位置。断面形状は好みで選ぶと良いが、しっかり握れて力が入るもの、断面が円形であれば36mm前後で、素材は冬季でも冷たく感じない製品を選ぶ。木の場合は、楢(ナラ)や梻(タモ)、栗(クリ)などの紅葉樹がお薦め。取り付けブラケットは、連続して握れるように手摺り下部に取り付けるL型が基本。
意外と見落としなのが、手摺りの端部であり手摺り棒が飛び出していると、袖口が引っ掛かり転倒する恐れがあるので、下部へ300mm以上伸ばしておくか、1/4円状の壁付ブラケットを選ぶこと。
安全な階段を設計するには
間取りの段階で、階段の種類を決めておかなければならない。それにはまず、2階(上層階)から間取りを考えることである、1階から適当に間取りを考え、余った場所に階段をもってくるなどという設計では、安全な階段を実現することは難しい。また、木構造の観点からも、2階を先に計画した上で、1階の計画をすると通し柱や上下階の壁位置も揃えやすく、構造的に安定hした住宅を計画しやすくなる。
寝室・子供部屋
窓
毎年、窓やベランダからの転落死を告げるニュースを目にする。消費者庁や各自治体でも定期的に注意喚起を促してはいるが、毎年数十名の尊い命が失われている。
たとえ、たった一度の事故であったとしても、決して取り返しがつかなく、深い後悔を背負い生涯を生きなければならない。特に2階に寝室や子供室を設ける場合、窓とベッドや家具の配置には、計画時から安全対策を行う必要がある。
窓の腰高は一般的に900mm前後であり、窓横にベッドを配置すると、窓下部とベッド上面の高さはよ、およそ500mmしかなくなる。子供がベッド上で遊んでおり、窓が開けられていたなら転落する可能性は大きい。いくら子供に注意するよう呼びかけていても、事故は何かの拍子に発生する。
自宅の新築計画をするときには、このような悲惨な事故が決して発生しないよう、十分な計画を行いたい。計画時に考えなければならないのは、ベッドや家具、子供部屋であれば机も含めた窓の関係であり、この配置計画は、コンセントの位置にも関係するので、重要である。
安全を考えた窓の対策
1、ベッド位置の変更
窓位置は、外観との関連があるため、ラフプランの段階でベッドや必要な家具の配置も考えておかなければならない。窓とベッドの位置が重なり、転落の危険性が高い場合、ベッド等の位置を変更することで解決するなら問題はない。
2、窓高さの変更
ベッドや机の位置を変更できない場合、住宅密集地で隣家の窓位置と重なる立地条件であれば、窓高を変更する方法も窓からの転落防止と、視線を遮ることができるため、一石二鳥の対策法の一つである。
3、窓種類の変更
眺望の良い敷地であったり、外部デザインの関係、あるいは家具類の位置を変更できない場合には、窓の種類を検討するのも解決法の一つである。図ではFIXと安全性の高い横すべり出しの段窓、縦すべり出しの連窓を書いてあるが、もちろん安全性が高い他の窓を組み合わせることも可能。
4、窓位置と種類、サイズの検討
窓の位置は壁面の中央でなくても良いのだが、壁面中央に窓を設けている住宅が多い。窓や出入り口、収納の扉など壁開口部が多ければ多いほど、家具の配置が難しく、危険だとは分かっているが、ベッドを窓際に置かざるを得なくなる。しかし、壁開口を一方向に集めることにより、部屋の使い勝手が良く、安全性も向上させることができる。住宅の安全性向上を考えるためにも、窓は中央に設置するのが当たり前などと、馬鹿げた固定観念は捨てた方が良い。
5、窓格子・手摺りの取り付け
窓の種類、位置など変更できないのであれば、安全対策として手摺りの設置を考える。ただし、内部手摺りは、窓台との間をすり抜け転落する可能性もあるため、取り付けたからといって安全性が向上するとは言いかねる。安全性を確保するなら、外部に90mm以下の間隔で固定された縦の窓格子もしくは、縦格子状の手摺りを取り付ける。ただし花台と呼ばれる手摺は、子供が台の上に座ることが出来、危険性が増すので避けた方が良い。これらの手摺等は、出来上がった既存住宅への後付けも可能。
居 室
乳幼児期の誤飲や窒息、熱い飲み物や電気ケトルを置いたテーブルクロスを引っ張り、熱湯を浴びて火傷する事故。あるいは、年齢を問わず、敷物や電気コードに足を引っ掛け、転倒するなどの事故が発生する。特に高齢者の転倒は、大腿骨を骨折することが多く、ベッドから離れなくなる可能性も高くなるため、住宅の安全性が求められる。
誤飲・窒息・転倒
乳幼児期の子どもは、掴んだものを口に入れます。薬やタバコ、ボタン電池、洗剤あるいは大量の食塩などの誤飲。ミニトマトやスーパーボウル、鍵、ペットボトルの蓋などで窒息するかもしれません。彼らの予防には、とにかく子どもの手の届くところに細かなものを置かないことだ。
半数致死量:LD50(Lethal Dose 50)
物質の急性毒性の指標。設定条件下で実験動物集団に試験物質を投与した場合に、統計学的に動物の半数を死亡させる量。一般的には、1500mg/kg-体重以上で安全とみなされ、値が小さいほど致死毒性が強いことを示す。
ちなみに塩化ナトリウム(食塩)LD50は3000〜3500mg/kg。生後6ヶ月前後の平均体重を約8kgと食塩24g、大さじ2杯にも満たない量を一度に飲むと50%の確率で死亡する可能性がある。また、ホウ酸のLD50は、2000〜4000mg/Kgで、生後6ヶ月の子どもであれば16g〜32gとなる。
身体に必要な物質であっても、少量なら薬であることに間違いはないが、大量に摂取すると毒になることだけは忘れないよう。
誤飲・窒息・転倒と収納
また、収納不足にになると、床の上にも何でも置いてしまい、躓きや踏み間違えによる転倒の発生が高くなるうえ、掃除に時間を要するため掃除の頻度が低下したり、十分な掃除ができなく、ハウスダストをはじめとするダニやカビの温床ともなりやすくなる。
安全で安心できる居間を計画するには、テーブルや床上に物や敷物、電気コードなどを置かない生活習慣に加えて、十分な収納計画を行い、決して子供の手が届く範囲に物を置かない住宅を考えておくことです。収納量の目安をつけるには、収納物一つ一つを考えるのではなく、現在の収納量を把握した上で将来の必要量を想定して計画すれば、収納に苦労することはない。
居間に必要な収納量を計画するには、例えば薬や衛生用品ならこのサイズの引き出し何個分とか、書類や新聞などであれば、このサイズの収納ボックスが何個必要なのか、将来収納物が増えるのか減るのかを考えて必要な収納量を割り出す。
子供の誤飲を防ぎ、地震時にでも転倒せず収納物も飛び出さずさらに、ハウスダスト対策で掃除がしやすい収納は、造り付けの造作家具が最適であるが、一般的に造り付けの家具は、高額になるため造作家具はあきらめ、やむなく市販品のラックやシェリフなどを購入し置いている方も多い。
しかし、市販品の置き家具は、転倒の可能性も高く施錠も難しいため、地震時に転倒したり、子供が誤って中のもの取り出し飲み込む危険性が高い。
壁の凹+引き戸=優れた収納
居間の収納は、何もコストの掛かる造作家具を作ったり、ハウスダストやカビの発生を心配しなければならない既製品の家具を置かなくとも、壁の一部を凹まし引戸を取り付ければ、戸締りが簡単で、安心、安全さらに生活雑貨をしまいやすく家族の命を守る収納ができあがる。さらに現在使っている収納家具を収めることも可能。高いところの収納物を取るために安全性の高い脚立や、掃除機などの収納も考えられる。ハンディータイプの掃除機を使用するなら、充電のためのコンセントの設置を忘れずに。
建具の種類
押し入れ収納の建具は、基本的に引き戸にする。開戸(ドア)は場所を取る上、子供が手を挟む危険もあるため避けた方が良い。引き戸の種類は、引き違いと片引き戸、引き分け戸の3種類。いずれも施錠は、子供の手が届かない位置に込栓を取り付けることで簡単に開けられなくなる。
「ドアの危険性」消費者庁より
毎年のように消費者庁が、子供たちのドアの指挟み事故に注意喚起している。
子ども安全メール from 消費者庁」2020年3月5日
Vol.492 ドアの開閉時に指が挟まれる事故に注意しましょう!
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/child/project_001/mail/20200305/
引き違い
最も多く使われる引違い戸ではあるが、収納の建具として考えると、建具を開いて中のものを取り出そうとすると、間口のいずれかに建具があるため、中央付近の物が取り出しにくく、案外と使い勝手が悪いので、収納物のレイアウトには要注意。
子供が開けられないようにするには、建具が重なる部分に穴を開け、込栓をすれば良い。
片引戸
間口を1間(1820mm)以上の収納を設けた場合、壁面の大きさや収納を設置する場所にもよるが、建具サイズは少々悩みどころである。機能的には、左右どちらかでも開閉でき、全開にもできる2枚建てが優れる。しかし、デザイン的には1枚にする方が、すっきりと仕上がるうえ、引き戸に開口部以外の壁面と同じ素材を使えば壁が動くようで楽しみもある。ただし、左右どちらにも建具の引込みがある場合には、是非とも1枚建てを検討したい。
引分け戸
収納の両側に建具を引き込み可能な空間、たとえ窓であっても大丈夫、があるなら、引分け戸も検討したい。左右どちらの建具も動かせ、全開も可能で、中のものを取り出しやすい収納となる。建具のデザインに多少の工夫は必要だが、壁面と一体化したようなシンプルで素敵な収納と仕上げることもできる。
転 倒
乳幼児や高齢者ばかりではなく、居間に敷いてあるカーペットや家電製品の電気コードは、躓(つまず)き転倒する危険性を高くする。特に高齢者の転倒は臀部骨折・頭部外傷にいたり入院が必要となり回復しない方も多く、転倒の予防、軽減を図るための対策を十分に考えておかなければならない。
床の仕上げ材
居間の床仕上げ材といえば、フローリングやクションフロアを選ぶ方が多いだろう。しかし、安全面から考えると日本の伝統素材である畳が最も優れた床仕上げ材である。畳は、滑りにくく保温性もあり、万が一に転倒してもクッション性もあり身体を保護してくれる。このように優れた性能を持つ素材は他にない。
「畳」は優れた床材である
古くは畳は、家財道具の一つで引っ越しする場合には、自宅の畳を持っていったとも言われる畳は、裏面にカビが生えやすいともいわれる。これは、床板(畳の下地板)に合板を使用した場合が多く、無垢板を使い新聞紙や専用のシートなどを敷くことで軽減される。さらに畳の畳床には、クッション性が心地よく透湿性能に優れる藁だけを使った本床を選びたい。
確かに畳は、和のイメージが強い上ソファーや椅子の生活に合わない、などと考える方も多いかもしれないが、縁無しの畳であれば違和感なく使用できるであろう。
床に畳を勧めるには、優れた性能に加え、施工の観点から畳仕上げの床組みをしておけば、子供が乳幼児期には畳仕上げにしておき、成長すればフローリングに改装する。逆に当初フローリングで仕上げ、高齢になれば畳仕上げへ変更するなど、暮らしに合わせて床仕上げ材の変更が簡単にできる。
長い年月を過ごす住宅であればこそ、家族の年齢や体力が変化しても、たやすく改装できる仕掛けを考えておくことも、大切な住宅の安全対策である。
床仕上げの改装手順
今回は、畳仕上げからフローリングへの改装手順を説明しますが、新築時はフローリング、将来は畳を希望される場合は、新築時に畳仕上げの床組みをした上で、フローリングの下地を組み、記載とは逆の手順で畳仕上げとする。
1、畳をあげる
2、床板をはがす。床板はそのままに、新たな床垂木を打ち付けても良いですが、床板の反りや隙間があると、不陸調整が難しい場合もあります。また作業するときには、断熱材部分に体重をかけると抜けてしまうので、床垂木に足をのせて行うこと。
3、既存の床垂木と直行し、新たに床垂木を打ちつける。既存の床板をそのままにする場合には、床板と並行に垂木を敷設し、既存の垂木に打ちつける。垂木の高さは、選ぶフローリングや施工方法により調整が必要。
4、新しい垂木の愛でに断熱材を敷き込み、フローリングを張る。
注意:畳敷きの床にする場合、壁と床の間には「畳寄せ」と呼ぶ造作材を畳表面と同じ高さに取り付けますが、この場合は、床材の変更をした場合、不必要な工事を避けるため、先に幅木となるように造作材を入れておく。元来、和室に巾木を入れることはしないのだが、和室の掃除も掃除機を使うことが一般的な現代では、壁に掃除機ヘッドが当たり傷つくことから保護するためにも、巾木があってもおかしくはないだろう。
畳寄せ・幅木の詳細
敷居の詳細
コンセント位置
家族揃って焼肉パーティーに使うホットプレートや卓上グリル、あるいは冬場のコタツ用のコンセントは、部屋の中央付近に設置し、電気コードが部屋を横切らないようにする。
床用コンセントの種類と安全性
市販される床用コンセントは、大きく分けてコンセントが飛び出す「アップコン」とプラグを収納する「フロアコン」がある。アップコンはプラグの抜き差しが容易ではあるが、飛び出たコンセントに躓いたり、思いっきり小指をぶつけた時の痛みを味わいたくないなら、プラグを収納できるタイプがより安全。スライド式はコンパクトではあるが、使用時に電気コードのプラグだけが飛び出すため、安全性に疑問が残る。
床に凹凸がなく見た目にも良いのは、造作で床に箱を埋め込みコンセントを設置する方法である。ただし埋め込んだ箱の底にコンセントを設置すると、使わない間に埃が溜まり、湿気によるショートで発火する恐れもあるので、コンセントは箱の側面に付け、さらにコンセントキャップをしておけば安心。
浴室・脱衣室
溺死・溺水
主に浴室で発生する溺死と溺水。
浴室の危険性は、主に乳幼児の浴槽への転落による溺水と、高齢者のヒートショック。
乳幼児がいる家庭では、浴槽に残り湯をしないようにといわれます。しかし、家族の帰宅時間が違えば、やはり残し湯を沸かして使いたい方も多いのではないでしょうか。残し湯をするにも、ほんの数時間のことでしょうが、事故が発生する瞬間は、ほんの一瞬です。家事が多い夕方の時間、ちょっと子供から目を話した瞬間にその危険性が潜んでいます。目を離した瞬間でも、決して子供が1人でお風呂場に入れないように、子供が開けにくいドアを選んでおくことが必要。
適切な建具を選ぶことができない場合には、そのプランニングを考え直す必要もある。建具の種類だけでプランニングそのものを再検討する必要があるのか?と考える方もいるかもしれないが、住宅の安全性を追求するには、危険な因子を一つでも取り除く計画をすることは、至極当然のことである。住宅の設計に妥協は許されない。
浴室戸の安全性
アルミ・樹脂製の浴室戸は大きく分けて片引戸と開戸、折れ戸の3タイプある。どの世代に対してでも安全性に優れているのはのは、片引戸と言っても良い。
折れ戸は、中心部分を高さに関係なく押すだけで開くことができ、乳幼児であっても簡単に室内に入ることができるうえ、浴室内で倒れ建具にもたれ掛かると、開くことが難しくなる。片開き戸には、ドアノブがあり建具をしっかりと閉めておけば、乳幼児の手が届きにくく、開けることができないとしても、折れ戸と同様に浴室内で意識を失った場合、速やかに助け出すことは難しい。
間取りの段階で、浴室の建具は片引き戸が入るプランニングをしなければならないが、片引き戸は、横にスライドさせる構造であるため、もし浴室内で倒れていたとしても問題なく開けることができる。さらに、浴室外側に建具を設置すれば、最悪の場合、建具を上に持ち上げれば、簡単に建具を外すことも可能であり、乳幼児期の子供が、浴室に入れないようにするストッパーの取り付けも簡単である。
ヒートショック
推計で年間14,000名(2006年)もの方が亡くなっているヒートショックは、ご本人の体調にもあるが、主には室温の急激な変化による血圧の変動が、心臓に負担をかけ心筋梗塞や脳卒中を発生させる室内環境の問題である。基本的な対策は、室温差を発生させない住宅を計画することにある。
住宅のヒートショック対策には、冷えすぎる脱衣室や浴室、トイレに暖房器具の設置や、入浴時にシャワーやお湯はりによって浴室全体を温めるなどの方法が提案されている。しかし、設備機器に頼る生活では、入れ忘れや切り忘れなどの心配も生じるため、住宅を新築する場合には、当初から室温差ができないプランニングを考えておかねばならない。
それには、住宅本体の断熱性能を高め、さらに浴室や脱衣室、トイレと居室の間に廊下を設けると、どうしても室温差が生じやすくなるため、居室と水回りが一つの空間になるようなプランニングすることにある。
プランニング案変更例
[PLAN A]は、居室から廊下を通り、脱衣室やトイレへ行く間取りは、冬場は居室の暖気が届きにくく、夏場は居間の風通しが悪いうえ、ヒートショックを起こしやすい好ましくない間取りの一つといえる。この間取りの廊下を含めた面積は3坪(9.94㎡)しかし同じ床面積であっても[PLAN B]や[PLAN C]のように、居室と同じ空間の一部に洗面所を設け、左右に脱衣とトイレをレイアウトすれば、室温さを無くすることが可能。さらに引き戸にしておけば、インフルエンザの季節でも、ドアノブを触ることなく手洗いができ衛生的でもあるし、夏場の風通しも良くなる。
また[PLAN B]や[PLAN C]のように、水回りの建具を引き戸にすることで、万が一にも車椅子が必要になったとしても、引き戸を開けると広い空間が確保できる。さらに水回りを広く使用したいなら、引き違いもしくは、片引き戸+FIXの建具を入れておき、必要になった場合は、取り外して使用すると、住宅を改造することなく暮らすことが可能。
高齢でも安心!ヒートショック対策の間取り案
特にこれから「終の住まい」を計画する方や、高齢になった場合の暮らしも考えた住宅を計画するなら、基本的にワンルームのような住宅が、室温差が生じず動きやすく掃除も楽になるうえ、車椅子にも対応しやすい住宅となる。
この住宅は、平屋建て床面積99.79㎡(30.125坪)であり、家全体をワンルームとして考える「終の住まい」の一例を具体化した。孤立化しがちな水回りを寝室と居間の間にレイアウトすることで、室温差が生じにくく、広々と暮らすことができる住宅の一例。もちろんこの間取りでも良いが、これを基本として自由なアレンジを計画していただきたい。
台 所
台所は年齢を問わず転落・転倒や火傷、裂傷などの危険がいっぱい、加えて幼児期には洗剤や調味料、ゴミの誤飲も心配の一つ。
転落・転倒
右方向が安全性の高い収納
転落の原因は、高いところにあるものを取るときや、高いところを掃除しようと、踏み台や椅子の上などに立ち誤って転落する場合が多い。転落の事故を防ぐには空間がもったいないからと、天袋などの設置はもってのほか。収納は、踏み台などに乗らず収納の奥まで手が届くように、棚板の高さが1800mmから2000mm以下にすることである。さらに安全性を高めるなら、収納物を確認できるよう、目線より低い位置に棚板を設けること。また、収納上部と天井の間に空間があると、油まみれになった埃が溜まり不潔になるので要注意、天井との間に微妙な空間が空いているなら、下がり壁を付ける。
転倒は、キッチンマットや、床上に置いてあるものにつまずき転倒する場合などが多いので、敷物を使わなくても良い素材としては、無垢フローリングだが冬季では、冷たく感じる方も多いと思うため、断熱性能を十分に確保するか、床暖房なども検討したい。もし、床暖房にするならタイルなどの素材も選択肢の一つである。
火傷(やけど)
キッチンの種類と安全性
キッチンのレイアウトは、シンク前に立った時に居室側を向く対面キッチンと、壁(主に外壁側)に向かう壁付キッチンがある。壁付けキッチンは、シンク前に立つと居室側に背を向けることになるので、家族の様子を見ることが出来ないうえ、背後に子供がいても気付きにくく安全性には問題が多いため、ここでは対面キッチンに絞り検討した。
右側の方が安全性が高い
セパレート型:キッチンへの出入りが2方向から可能であるうえ、コンロ部分が背面になるためキッチンのレイアウトとしたら最も危険性が高くなる。
アイランドキッチン:家事同線としては使いやすいアイランドキッチンも、子供が幼児期であれば、キッチン内に入りやすく危険性は大きいといえる。
L型キッチン:出入りは1箇所になるので、アイランド型より安全性は向上するが、シンク前に立つとコンロ部分が視界から外れるため注意が必要となる。
ペニンシュラキッチン:ベビーガードも付けやすく安全性は向上するが、オープンなコンロでは、子供がつい手を伸ばし火傷を負う可能性も考えられる。
I型キッチン:最も安全性が高いと考えられるI型キッチン。シンク前には立ち上がりを付け、コンロ奥は壁で仕切っておけばコンロ部分もガードできる。
造付けベビーゲート
子育て世代の住宅であれば、新築当初よりキッチンや階段には当初よりベビーゲートを取り付けておきたい。融通の効かない大手ハウスメーカーには無理な注文かもしれないが、地元の工務店やハウスメーカーであれば、そんなに難しい造作ではないはず。
取り付けは、引出し用の家具金物「スライドレール」長さ750mm以上と引き戸用下部ガイド、マグネットキャッチを使い、キッチン袖壁に引き込み戸を取り付ける。予算は、住宅会社によっても異なるが、ゲートだけであれば3万円前後であろう。
「アイランドキッチン」をあきらめない
家族と一緒にお料理するご家庭、あるいはホームパーティを開き、友人と一緒に料理を楽しむご家族には、アイランドキッチンが重宝する一方で、乳幼児に対し。その安全性に少しでも高めておきたいとご希望の方には、幼児期はキッチンと壁面の間を仕切っておき、将来は壁面側に移動できる家具を考えてはいかがだろうか。
煙・火災および火炎への暴露
子供の頃「たとえ泥棒が入っても全てのものを持ってはいかない、しかし火事は、家全てに加え時には命までもを失う」と。言われて育った。
火災時に怖いのは、合成樹脂が延焼することであると、言っても過言ではない。火災で命を落とすのは合成樹脂から発散する有毒ガスを吸い込み、意識を失い、炎に巻き込まれることである。現在の住宅には、塩ビクロスやクッションフロア、カーテン、家具、断熱材など多くの合成樹脂が使われる。
これらの合成樹脂を使用せず、自然素材を使用すれば、たとえ火災にあったとしても十分に住宅から逃げ出せる時間があることに間違いはない。昨今シックハウス症候群の問題が発生し数十年経過した結果として、合成樹脂を使用した建材からは、揮発性有機化合物の発散が抑えられている。しかし、万が一の火災まで考えると、住宅に豪菜樹脂を使用することは自殺行為と言っても言い過ぎではない。
住宅には、火災時にでも燃えない仕上げ材と有害ガスを発生しない素材を選ぶことである。
編集後記
家庭内事故から家族を守る
平成30年、36,643名(交通事故を除く)(※1)もの尊い命が不慮の事故(交通事故を除く)で失われていると厚生労働省の統計から明らかになっている。さらには家庭内事故で死亡した方は、おおよそ15,500名(※2)にものぼると推測される。ちなみに同年交通事故死者数は、4,595名でありおよそ3.4倍にもなる。
(※1)厚生労働省平成30年(2018)人口動態統計(確定数)の概況 第7表「死因簡易分類別にみた性別死亡数・死亡率(人口10万対)」
(※2)厚生労働省 不慮の事故死亡統計 平成21年度「不慮の事故死亡統計」の概況 第5表「発生場所別交通事故以外の不慮の事故死亡数の年次推移-平成7~20年-」を参考に比率算出
建築だけで全ての家庭内事故をなくすることはできません。しかし、多くの家庭内事故は、建築の立場から防ぐ、あるいは回避、軽減できると信じています。
自宅内で家族の命を失った家族の心痛は、いかなるものか推し量ることはできない。だが、もし自分自身の家族が家庭内事故に遭ったなら、悔やんでも悔やみきれない思いは想像にたやすい。家庭内事故の多くは、事前の対策にて防ぐことが可能と言っても良い。少しの気遣いと注意を疎かにしたばかりに、家族の尊い命を奪ったのだとしたら、人生これ以上の後悔があるだろうか。
ご自宅を新築、増改築される場合には「必ず家族の命を守る」という情熱をもって住宅計画をしていただきたい。
大切なお知らせ
私たちは、家庭内事故対策の「家庭内事故・設計図確認」を行なっております。有料にはなりますが、設計の段階で図面確認をご希望される方は、お気軽にご相談ください。