花粉症対策の家づくり

花粉症対策の家づくり

花粉症対応住宅を考える

もくじ

増加する花粉症
花粉対策の基本
花粉を持ち込まない
花粉を侵入させない
花粉を素早く取り除く

増加する花粉症

1964年ごろ花粉症が確認され、スギ花粉によるものとの説が有力となって以来、平成28年に実施された東京都の調査では48.8%に達し、まさに「日本の国民病」と呼ばれます。花粉症は、突然に発症するアレルギー疾患で、昨日まで無縁であった人が、突然に明日、発症する可能性もあり、一度発症すると自然治癒することは難しい疾患です。

花粉の破裂

花粉粒炸裂!! 花粉の直径は1μm

スギ花粉粒の直径は、飛散開始直後や乾燥状態では約30~40μm(3/100~4/100mm)で、強固な構造の細胞壁に囲まれています。しかし、大気汚染物質などの付着により細胞壁に亀裂が生じると、そこから水分を吸収して、内部が膨張することにより破裂し、破裂したスギ花粉粒は、昨今の社会問題とされるPM2.5より小さな1μm前後の小粒子物質が放出され、花粉症の原因物質として考えられています。このでんぷん質の小粒物質は、濃度上昇に従いぜんそく・気管支炎・肺や心臓疾患の発症リスクをさらに高め、現在は花粉喘息の発症を懸念する報告もあります。花粉粒が破裂して放出された小粒物質は、山間部より都市部の方が多く、この現象は埼玉大学・工学部・環境共生学科王青躍教授は「降水後の晴れ日に微小粒子となったアレルゲン粒子の存在割合が高くなることから、降雨がスギ花粉アレルゲン含有微小粒子の発生に影響していると考えています。」と報告している。 花粉粒から放出された花粉小粒物質は、直径約1μmで直径約30μmのスギ花粉粒より飛散しやすく、長期間大気中を浮遊し、室内に入り込みやすいと、考えられます。

花粉症対策の基本

花粉症は、空気中を漂う花粉が、目や鼻、のどなどの粘膜に付着してアレルギー症状を起こすことです。ですから花粉症対策 は、とにかく花粉に接しないこと、吸い込まないことです。住宅内では、家の中に花粉を「持ち込まない」「入れない」「素早く取り除く」この3つが重要な対策です。

花粉を持ち込まない

エアーシャワーの設置
ブロアーを利用する
前室・外部収納の設置
帰宅動線を考える
物干しの方法を決めておく

花粉を自宅に持ち込まない重要なポイントは、なるべく花粉を室内に持ち込まないことです。花粉を家に持ち込むと危惧される時は、家族の帰宅時と洗濯物を取り入れる時でしょうか。外出時には、花粉が付着しにくい服装やマスク、メガネ、帽子を着用し、帰宅時には花粉を屋外で十分に払い落とし、花粉症患者以外の家族も同じように協力が必要になります。洗濯物は、花粉の季節には屋外の物干しをなるべく避け、室内で干すか乾燥機を使用することです。

花粉症対策:エアーシャワーん設置

エアーシャワーの設置

帰宅時に身体についた花粉を手で払い落とすのも良いのですが、もっと丁寧に花粉を落とすのであれば、エアーシャワーの設置を検討しても良いかもしれません。エアーシャワーといえば、少々大袈裟だと思われますかもしれません。しかし、最近は住宅にも設置可能なエアシャワーが販売されており、マンションでは既に設置されているところもあるので、ご存知の方もいらっしゃると思います。コンパクトな設計になっている上に、コストも製品本体の小売り希望価格で60万円ほどで、花粉飛散時期の苦しみを考えると、充分検討する値があるのではないでしょうか。

参考:「ホームエアシャワー」製造メーカー

▪ 株式会社ニットー冷熱製作所 http://www.nitto-reinetsu.com/product/air
▪ 日本エアーテック株式会社 http://www.airtech.co.jp/products/
▪ コトヒラ工業株式会社 http://www.kotohira.biz/lineup/airshower_portable.html

ブロアーを利用する

エアーシャワーまで必要ないけれど、少しでも持ちこく花粉を少なくしたい方は、粉塵や埃を吹き飛ばすハンドタイプの「ブロアー」や「エアーダスター」などを利用してみてはいかがでしょうか。ハンドタイプのものは数千円から2万円ほどで手に入るようです。もしハンドタイプで使用が扱い難い場合には、吹き出し口にホースを取り付けても使えますが、本体を固定して使用するには工夫が必要。またペット用として市販されているペットドライヤーも利用できそうで、本体を床に置きホースを用いて使用するタイプなので、使いやすいでしょうが、金額は3万円ほどからになります。

前室・外部収納の設置

外出着や帽子などを掛けておくため、換気扇や空気清浄機を設置する前室もしくは、玄関クローゼットあるいは、少々広めのポーチに収納を設け、外出時に使用する衣服等を居室や屋内に持ち込まなくても良い部屋や、外部収納の設置を検討する必要もあるでしょう。

帰宅動線を考える

花粉症対策の家:帰宅動線

花粉症を患っている方の中には、帰宅時すぐにシャワーを浴びたいと望む方も多いでしょう。そのような方の間取りは、玄関から他の部屋を通ることなく洗面所へ行く動線があると安心です。シャワーまで望まなくても手洗いや、うがいだけでもしたいとお望みでしたら、玄関に洗面器を設置すると、インフルエンザの季節には帰宅時にすぐ手洗いもでき、感染の予防にも役立てられます。

物干しの方法を決めておく

花粉が飛散する季節には、寝具や洗濯物を外に干すことを避けたいものです。屋内で洗濯物を乾かすには、部屋干しができるスペースや浴 室乾燥機、乾燥機付き洗濯機が必要になります。居間などでの部屋干 しは室内の湿度が上昇し、カビの大量発生や細菌の繁殖により洗濯物 が臭くなることもあります。これを避けるには、室内干し専用の乾燥 室や物干し場の設置が理想です。洗面所や洗濯室、パントリー、バステラスなど間取り段階で多目的に使えるスペースを工夫することです。


花粉を侵入させない

花粉が室内に侵入する場所は、出入り口と窓、換気口の3箇所。それぞれの花粉対策を行ってください。

玄関戸と窓
網戸
換気口

花粉症対策の家:侵入経路

玄関戸と窓

お天気の良い日や、部屋の掃除をする時には、窓を思いっきり開けて、家中の空気を入れ替えたいものです。風通しの良い住まいは、カビやダニの発生を抑え室内に漂うハウスダストを追い出し室内の清潔な環境を保ちます。しかし、残念なことに、花粉が飛び散る季節には、窓を開けることができません。この季節に室内の空気を入れ替えるならば、花粉の飛散量が少ない雨天時を選ぶことになってしまいます。雨天時に窓を開けるには、雨の吹き込みを防ぐために、深めの軒や庇の設置、また横すべり出し窓やオーニング窓など雨天時でも、雨が入らず窓換気できる窓を検討しましょう。

網戸

花粉が水分などで破裂する前の大きさは、約30〜40μmです。花粉対策の網を選ぶのであれば、網目はこの大きさ以下でなければなりません。網戸は主に防虫目的で取り付けますが、花粉対策に有効とされるフィルター網戸もあります。市販されている網の中にはステンレス製で網間20μmの製品があり、破裂する前の花粉であれば、この網でも構いません。しかし、花粉の殻が破裂し飛び出す内部のデンプン粒は1μmで、このステンレス網では通り抜けてしまいます。花粉は雨天の翌日には、花粉の殻が破裂しデンプン粒が、空気中に大量飛散します。このデンプン粒が室内に侵入することを防ぐには、少なくとも網目1.0μm未満の網が必要になります。 ただし、網目が細かくなると風の抜け(通気度)や景色の見通しが悪くなることと、目詰まりしやすくなるため、掃除にも注意が必要ですので、事前にサンプルを取り寄せて十分な検討もお忘れなく。

換気口

24時間換気を義務付けられる最近の住宅は、換気方法にもよりますが、吸気口から常に外気を室内に取り込んでおり、花粉も一緒に侵入してくる恐れがあるため、吸気側には、取り付け可能なフィルター性能を確かめ換気口を選びましょう。近年は、花粉対策用換気口が市販されており、花粉対策用フィルターに加えて、大気汚染物質の流入を軽減する活性炭フィルターを備えた換気口も流通していますが、花粉が破裂し放出するアレルゲンとなるデンプン粒は、PM2.5より微小粒子の1μmですから、フィルターには1μmの粒子を捕集する性能が必要になり、この性能を有するフィルターであればPM2.5や黄砂なども取り除き、ぜんそく対策にも有効と考えられます。ただし、ディーゼル排気粒子(DEP)は0.5μmですから、ディーゼル排気粒子が気になる地域では、これらも補修できる性能が必要です。


花粉を素早く取り除く

花粉の取り除き方
フィルターで選ぶ
掃除力は収納力
内装の細部仕上げ方
仕上げ素材を選ぶ

花粉対策の家:花粉を素早く取り除く

侵入してしまった花粉は、取り除きたいものです。簡単に素早く取り除くには、掃除道具を選ぶことも大切ですが家づくりから考えておくことも大切です。

花粉の取り除き方

室内に侵入し空中を飛散している花粉を素早く取り除くには、空気清浄機に頼らざるを得ません。また日中、室内の空気中に浮遊していた花粉は、夜間に落下し床上に溜まります。床上に溜まった花粉は、起床後すぐ濡れたフロアーワイパーや雑巾で静かに拭き取ることが、最も効果的に花粉を取り除くことができるようです。もちろん、掃除機も必要かもしれませんが、機種によっては、床に積もった花粉を排気で舞い上がらせてしまうこともあります。床の仕上げ素材は、クローリングなどの掃除がしやすい住宅でなければなりません。侵入した花粉を素早く排除しなければ、症状の悪化や花粉症による不眠症や苛立ちなど不快な季節を過ごすことになります。掃除をしやすい住宅は、花粉ばかりではなくハウスダストやカビ、ダニの除去しやすい住宅ですので、家事の時間短縮にも有効な住宅になります。

フィルターで選ぶ

花粉の除去を目的に、空気清浄機や掃除機など花粉対策の家電製品を選ぶときには、フィルターと風量の性能に注目してください。また、エアコンや扇風機にも空気清浄機能が付いている製品も多いようですが、イオン式などの機能は花粉を始めとする浮遊物質除去には直接関係が少ないようですので、選ぶ場合には十分に性能をご検討ください。 空気清浄機能が付いた家電製品を選ぶときは、室内の空気を十分に循環させるだけの風量があり、ULPA・HEPEといった高性能のフィルターを使用している機器を選びましょう。

フィルター性能

ULPA(Ultra Low Penetration Air Filter)フィルター
粒径が0.15 μmの粒子に対し99.9995%以上の粒子捕集率性能
HEPA(High Efficiency Particulate Air Filter)フィルター
粒径が0.3 μmの粒子に対し99.97%以上の粒子捕集率性能

掃除力は収納力

床掃除を気軽にしようとすれば、ストレスを感じず取り出せる掃除用具の収納場所が必要です。また、床上だけでなく、棚上や家具上などのどこにでも、物が散らばっていれば掃除し難く、ついつい掃除したくなくなるのは人の常というものです。収納には扉を付け、棚板の上に花粉が溜まらないように計画したい。暮らしに必要な収納量を決め、適切な収納力を確保することは、掃除をしやすくします。

内装の細部仕上げ方

内装仕上げは、とにかく掃除がしやすく、ホコリ溜まりとなる箇所を一つでも減らす設計を心がけることに尽きます。例えば巾木の上面、窓枠、ドア枠、鴨居の上面やカーテンレールの上部、格子戸や障子の建具デザイン、吊り戸棚や置き家具の天板、裏面、底部分、ペンダント型やブラケット型の照明器具も含めて、ホコリが溜まりやすい場所を徹底的になくすることです。巾木は入り巾木、枠関係は壁面と同面にするか、少し引っ込める。格子は縦格子を基本にデザインする。置き家具は減らし、造り付け家具や吊り棚は天井までの高さとする。照明器具は天井直付けを基本にするなどの対策が必要です。

花粉対策の家:内装仕上げ

仕上げ素材を選ぶ

床掃除がしやすい素材としては、やはり無垢フローリングを第一候補として考えるべきでしょう。フローリングでも、目地が浅く十分に乾燥処理がしてあり、目地の隙間が大きくならない製品をお選びください。掃除だけを考えれば、他にも候補の中に入れても良い製品もありますが、触感が冷たい素材は、床にカーペットなどの敷物を敷いてしまうと、掃除がしにくい上に、ホコリやダニ、カビなど他の室内アレルゲンが繁殖しかねません。壁、天井の仕上げ素材では、表面が平滑で花粉などの粒子状物質が溜まりにくい自然素材をお選びください。塩化ビニル系のクロスは、静電気が発生しやすく花粉が付着するため、使わない方が良いでしょう。ご自宅の壁が塩ビクロスであれば、花粉の季節には、ウェットタイプのフロアワイパーで、静かに壁に付着した花粉を取り除いてください。


健康と住宅環境

住宅内で不快で様々な花粉の症状が現れ、くつろぐこともぐっすり眠ることもできず、不眠症やストレスを抱え込み体調不良がさらに重篤化する可能性も高くなります。さらに、花粉症患者は口腔アレルギーを始め、他のアレルギー疾患を併発しやすくなります。症状の悪化と併発を防ぐためにも、花粉症の方は、花粉に接触する量を減らすためにも、室内の環境は、花粉を始め様々な住宅アレルゲンを減らし、良好な環境を維持費しなければなりません。


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増加する花粉症
花粉対策の基本
花粉を持ち込まない
花粉を侵入させない
花粉を素早く取り除く

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