健康住宅の耐震性向上

健康住宅の耐震性能向上を考える

建築基準法には現れない耐震性能[熊本地震の調査レポートを参考に]

もくじ

熊本地震の衝撃
木構造の種類と集積材
建築基準法と震災
耐震等級と耐えられる震度
木造住宅の耐震計画
筋違い(すじかい)
暮らしの耐震性能
編集後記

熊本地震の衝撃

2016年4月に発生した熊本地震により犠牲になられた方々の、ご冥福をお祈り申し上げるとともに、被災された方々に心よりのお見舞いを申し上げます。

2016年4月に発生した熊本地震は、気象庁震度階級で最も大きい震度7を観測する地震が2回連続で発生し、気象庁の観測史上初の地震であったとともに、2000年耐震基準で建築された住宅にも大きな被害が発生し、住宅に携わる者に大きな衝撃をもたらせた。

被害にあった住宅の調査報告を参考に、建築基準法には定められず、曖昧となっている箇所を明確にすることで、熊本地震でも耐えられる耐震性能を考えてみよう。

木構造の種類

在来軸組工法 |無垢材・集成材
伝統工法   |無垢材・集成材
枠組壁工法(2×4)|無垢材・集成材・合板
丸太組工法  |無垢材
ラーメン工法 |集成材・LVL・CRT

健康住宅を考える場合は、やはり国産無垢材を使用する在来軸組工法もしくは、伝統工法に加えて、現代で言うところの柱間に板を落とし込む板倉工法である。

その他2X4工法は合板等を使用しなければならず、ラーメン工法は基本的に集成材・LVL・CRT等、合成樹脂を使用した積層材を使用しなければならない。

また、ログハウス(丸太組工法)は大自然の中に建っていると、さまになるが住宅地には相応しくないと感じる。

ただし、国内では古来から井籠倉と呼ばれる木を積み重ねる技術もあり、古代では丸木倉、甲倉(校倉)、板倉が存在していた。国内の井籠倉は部材断面から丸、三角、四角、板の4種類に別れる。

現代の板倉工法と呼ばれる工法は、古代の井籠組と異なり柱間に板材を落とし込む工法として知られている。

接着構造材の種類
集成材(Laminated Wood)

ひき板・小角材をその繊維方向をほぼ平行に、厚さ及び幅、長さの方向に合成樹脂系の接着剤で集成接着した材料。

単板積層材:LVL(Laminated Veneer Lumber)

単板(突板)を機械乾燥させ、繊維方向を同じに揃え、合成樹脂系接着剤で積層接着した角材を主流とする材料。

直交集成板:CRT(Cross Laminated Timber)

ひき板・小角材の繊維方向をほぼ平行に、長さ及び幅方向に接合接着した板を主として、繊維方向を直交させ合成樹脂系接着剤で3層以上積層接着した材料。

建築基準法と震災

建築基準法の耐震性能は、基本的に大震災が発生するたびに強化されてきたことだけを見れば、基準法の耐震性能は、対処法とも言える。

自宅の耐震性能は、ハザードマップや予測震度図などを参考に、設計士とよく話し合った上で、敷地に適した自宅の耐震性能を決定すると良い。

建築基準法が改正された近年の震災は下記の通り

1950(昭和25)年 建築基準法施行(旧耐震)
床面積に応じて必要な筋違いなどを入れる「壁量規定」定められ、床面積あたりの必要壁長さや、軸組の種類・倍率が定義される。
1959(昭和34)年 建築基準法改正
          ※1)壁量規定の強化
1968(昭和46)年[1968年十勝沖地震発生]
1971(昭和46)年 建築基準法改正 
          ※2)布基礎化の規定
1978(昭和53)年[宮城県沖地震発生]
1981(昭和56)年 建築基準法施行令改正(新耐震) 
          ※3)壁量規定の再強化。
1995(平成07)年[兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)発生]
2000(平成12)年 建築基準法及び同施行令改正(2000年基準)
          ※4)壁量規定の再強化。

※1)床面積あたりの必要壁長さ・軸組の仕様改定
※2)基礎はコンクリート造または鉄筋コンクリート造の布基礎とすること。風圧力に対し外壁見附面積に応じた必要壁量の規定が設けられる。
※3)新耐震設計基準誕生・壁量規定強化・体力面材の仕様を追加。
※4)地盤調査の義務化・金物仕様の強化・耐力壁配置のバランス計算が必要となる。

建築基準法は、国民の命と財産を守る法律であることに間違いはないが、見方を変えると建築士を守る法律でもある。建築士は、自身の設計した建築物が建築基準法に違反していなければ最悪、震災で家屋が倒壊・崩壊し人命が失われたとしても、その責務を負うことを免れる。

基本的に建築基準法は、建物に求められる最低限必要な性能を法令化したものであり、健康住宅を求めるのであれば、建設地で発生するであろう様々な災害の情報を基にして、建築基準法を上回る性能を有する住宅を計画しなければならない。

耐震等級と耐えられる震度

もくじ
予測震度と液状化を確認
予測震度の確認方法
液状化の予測
応急危険度判定
2000年基準で新築した熊本地震の被害

現行基準の壁量1と壁量を1.25倍とする耐震等級2、1.5倍とする耐震等級3の違いは、地震発生時の震度でどれだけ変わるのか、ご存知の方はいらっしゃるだろうか?

耐震等級3は耐震等級1より耐震性に優れていることは、なんとなく理解できる。しかし実際にその違いを明確に説明できる方は少ないのではないだろうか。正直に言えば私もピンとこなかった。

東京建設業協会の資料「耐震基準と耐えられる地震の大きさ」によれば、あくまでも目安としてだが、耐震等級1であれば5弱まで、耐震等級2は5強まで、耐震等級3は6弱まで無償だと報告している。

建物の耐震性能と震度

この資料で注目したいのは、建物が無償である震度だ。

マグニチュード7クラスの地震が発生した場合であっても、建設予定地の予測震度が最大震度「震度6弱」の地域であれば「耐震等級3」で計画しておけば、無償となる可能性が高くなるということである。

自宅の耐震性能はこの数値と、公表されている想定震度に耐えられるかを検討し、耐震性能を求めたい。

予測震度と液状化を確認

住宅に直接影響を与える地震の大きさ「震度」は、地盤の影響を大きく受けるため、敷地ごとに震度は異なると考えた方が良い、極端な言い方をすれば、自宅と隣家の震度は違うかもしれないのだ。

大震災発生時の土地の予測震度は、WEBで簡単に見ることができる。新築計画を行うときには、必ず建設予定地の予測震度を確認したい。

国および地方自治体では活断層を基にした、大地震が発生した場合の予測震度図および液状化予測図を確認することができる。自宅の新築計画を行う場合には、敷地の震度や液状化発生の有無を知っておかなければならない。

予測震度の確認方法

予測震度は、防災科研(国立研究開発法人防災科学技術研究所)もしくは、各地方自治体のサイトで確認することができる。

J-SHIS:防災科研(国立研究開発法人防災科学技術研究所)

http://www.j-shis.bosai.go.jp/map/

防災科研「地震ハザードステーション」予測震度の確認

このサイトでの予測震度は、確率で表現されているので、少々分かりにくいかもしれない。サイトを開き、画面左上にあるロゴ下の空欄に住所を入力し[場所を検索]をクリックすると、その場所が地図上に青丸で表示される。

当初は「30年 震度6弱以上の揺れに見舞われる確率の分布図」となっているので、画面の地図上部にある「▼」をクリックし「震度6強以上揺れに見舞われる確率の分布図」を選び、表示された地図と比較することで、おおよその最大震度を知ることが出来るだろう。

地方自治体

地方自治体「予測震度図」

地方自治体によっては、震度予測地図を公開しているところもある。インターネット検索サイトにて「地震動予測地図」に「市区町村名」を加え検索する。
例[東京都世田谷区 震度予測地図]

地方自治体の震度予測は、震源を仮定しマグニチュード7クラスの地震が発生した場合を想定し、各地の震度を地図上に記載しているものが多く、分かりやすいのが特徴。

液状化の予測

液状化予測図は、インターネット検索サイトにて「液状化予測図」に「都道府県名」を加え検索。
例【東京都 液状化予測図】

住宅の敷地は、宅地造成され街並みがどれだけ美しくても、液状化する土地には本来、住宅を建設してはいけないことを忘れないでいただきたい。

土地の価値

液状化の危険性がある土地には、液状化対策工事を施さなければならない。土地が割安で購入できたとしても、液状化対策の工事は高額になることが多く、最終的には良好な地盤の敷地と変わらないことになる。また一度液状化が発生した土地は、ライフラインの大きな被害も想定されるため、住宅地としての価値がなくなると考えておかなければならない。

応急危険度判定

震災後の住宅は応急危険度判断され、住宅が再使用可能か不可能か下記の通り、応急的に建物使用の可否が判定され、判定結果の記すシールが建物に貼られる。

震災後、無傷あるいは被災程度が小さければ、建物の使用は可能となり、ライフラインの状況にもよるが避難生活もごく短期間で済む。住宅の耐震等級は、被災後の修繕期間や金銭的な負担と共に、避難生活の期間にも大きな影響を及ぼすので、震度予測と耐震等級の関係は、十分に検討しなければならない。

応急危険度判定結果通知シール種別とその内容

応急危険度判定結果通知シール種別

赤色「危険」:[崩壊・倒壊・大破]

◆この建物に立ち入ることは危険
◆立ち入る場合は専門家に相談し、応急措置を行った後にしてください

黄色「要注意」:[中破・小破]

◆この建物に立ち入る場合は十分注意してください
◆応急的に補強する場合には専門家にご相談下さい

緑色「調査済み」[軽微・無傷]

◆この建物の被災程度は小さいと考えられます
◆建物は使用可能です

2000年基準で新築した熊本地震の被害

現在の基準法は大地震でも倒壊・崩壊しないことを目標としている。
熊本地震での住宅被害は合計で16万棟を超え、その内、熊本県益城町安永・宮園・木山・辻の城地内に建つ、2000年基準で新築した住宅242棟の被災結果は下記の通り。

 倒壊・崩壊 7棟(7.0%)
 大破 10棟(4.1%)
 軽微・小破・中破 91棟(37.6%)
 無被害134棟(55.4%)

一方で、壁量を2000年基準の2倍にした住宅は、クロスのひび割れ程度で済んだと報告している。

品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)には、耐震等級として耐震等級1・2・3の3段階に分けているが、この基準に従う必要は全くなく、ご自身の判断で壁量を2倍にしても全く問題はない。

国内では何度も震災を経験し、その度に建築基準法が改正され、耐震性能が強化してきた。しかし、熊本地震のように、連続して震度7の地震が発生するなど、これまで公には想定しなかったが、建築業会の一部には、耐力面材は2度揺れに耐えられないのではないだろうかと心配する声も多かった。

住宅の設計には、基準法だけを守っていれば良いとして設計する設計士もいれば、他の家が全て損傷しても自分の設計した家だけは、絶対に被害を発生させたくはないと考える設計士もいる。

木造住宅の耐震計画

もくじ
数字に現れない耐震性
耐震等級+αの耐震性能
堅い構造と柔らかい構造
柱勝ち 梁がち
管柱の寸法
通し柱の寸法
通し柱の断面欠損
横臥材の材成(厚さ)
建物の高さ

数字に現れない耐震性

住宅の耐震性は、建築基準法に従い構造計算にて、その安全性を確認してきた。しかし、熊本地震では構造計算には現れない部分で、住宅の耐震性を左右したと考えられる要因が報告されている。

「耐震等級+α」の耐震性能

木造住宅の耐震性能は、構造計算の数字を満足させるだけではなく、自宅の耐震性を向上させるために、構造計算では現れない重要なポイントを取り上げるので是非とも参考にしていただきたい。

堅い構造と柔らかい構造

堅い構造・柔らかい構造

「木造住宅だから、あまり堅い構造にしなくても良いのでは?」と、よく聞く話だ。
基本的には在来軸組工法を選び、筋違いや耐力面材を使い耐震性能を得ること自体が、建物を堅くすることで耐震性能を向上させる工法であり、柔らかい構造にするには、伝統工法を選ばなければならない。

近年開発が進んでいる制振装置は、製品によって構造計算に算入できない商品もあるので、十分な検討が必要である。将来は分からないが、現時点で制振装置を採用する場合は、筋違いや耐力面材にて耐震性能を確保した上で、制振装置を設置しなければならず、いわば保険や安心材料の一つとして設置することになる。

柱勝ち 梁勝ち

木造住宅の軸組には「柱勝ち」と「梁勝ち」がある

「柱勝ち」と「梁勝ち」

「柱勝ち」

柱の間に「梁」「胴差し」などの横臥材を組み入れる工法。間取りで上下階の主要な柱・壁の位置が同じであれば、優れた耐震計画が可能な「柱勝ち」の構造計画が考えられる。ただし各柱には横臥材を取り付けるため、断面欠損が大きくなるので、柱の太さは十分に検討しなければならない。

「柱勝ち」の住宅を設計するには、熟練の設計士でなければ難しいかもしれない。

「梁勝ち」

一般に在来軸組工法では「梁勝ち」が主流で、上下階の横臥材の間に柱を立て、建物の出隅箇所を基本に通し柱を配置する。「梁勝ち」の建物は経済的にも優位に働き、間取りの自由度が高いため、柱や壁の直下率を検討しながら進めなければ、耐震性能が期待できない住宅になる可能性がある。

どんな間取りの住宅でも、それなりに設計や施工ができるため、住宅の多くは「梁勝ち」の軸組で計画される。

管柱の寸法

現在、国内で流通している柱材は、基本として105mm角と120mm角の2種類。
もちろん、耐震性の向上には120mm角を使いたい、木造住宅の柱寸法は、柱だけにとどまらず「桁」や「梁」などの横臥材寸法にも影響を及ぼし120角の柱寸法であれば、横臥材も120mm幅の材を使用することになる。

通し柱の寸法

通し柱には横臥材を差し込む「仕口」と呼ばれる穴を彫るため断面欠損が生じる。
管柱と同寸の120mm角の通し柱では、断面欠損が大きすぎ、通し柱の耐力が極端に低下してしまうため、通し柱は少なくとも150mm以上を使いたい。

通し柱の断面欠損

注意:通し柱の断面欠損

120×120ミリの通し柱に、梁幅120ミリの胴差しや桁など横臥材の仕口を彫り込むと、2方差しの場合は約20%、3方差しの場合は約30%の断面欠損が生じる。管柱と同寸の通し柱であれば、断面欠損が大きく、管柱より弱くなり地震時に折れてしまう心配が残る。

120ミリ角の柱の断面積と同等以上の面積を保持するには、少なくとも150ミリ角以上の通し柱を選びたい。

横臥材の材成(厚さ)

梁成を揃えた軸組とする

在来軸組工法の桁や胴差しなどの材成は、柱間に合わせた必要最小限の材成を継いでいる現場をよく見かける。地震時に筋違いは横臥材を突き上げる力が働き、横臥材が破損する可能性もある。筋違いを設置する場所の材成は最低でも210mm以上とし、可能であれば最も材成が高い材に全ての横臥材に合わせ、長い構造材を用いた軸組にしたい。

建物の高さ

建物の高さと耐震性

建物は、少しでも高さが低く、建物が軽いほど地震の影響は少なくなる。理想的には平家建が最も被災の可能性が低いといえる。しかし、敷地やコストの面から平家の選択は限られることが多い。

2階建あるいは3階建と複層階の住宅を計画する場合には、ある程度、設計者の経験と工夫、知識が必要ではあるが、できうる限り建物の高さが低くなるように住宅を計画すると、耐震性は有利に働く。

筋違い(すじかい)

もくじ
筋違い寸法
使用材の品質
木目
樹種
筋違いはダブルが基本
木裏を合わせる
耐力壁の柱間
反りを抑える

在来軸組工法で、地震や風などによる変形を防ぐ基本は筋違いであり、筋違いは重要な構造材であることを忘れてはいけない。

熊本地震の調査レポートより筋違いに関しては、建築基準法で決められた品質や本数、施工方法以外にも、留意しなければならない注意点が見えてきた。

筋違い寸法

耐震に効果がある筋違い寸法

建築基準法での筋違い断面寸法による壁倍率は下記の通り。
木材:15×90以上 1.0倍
木材:30×90以上 1.5倍
木材:45×90以上 2.0倍
木材:90×90以上 3.0倍

何故この寸法が決められたか不明であり、再検討をした方が良いのではないかと考えている。

熊本地震の調査では90×45の筋違いに大きな損傷が見られたが、105×45の筋違いは無償であったとの報告もあり、耐震性向上を目指すなら筋違いの断面寸法は105×45以上、できれば120×60を基本に考えたい。

使用材の品質

節あり材は使用しない

筋違は、重要な構造材です。地震が発生した場合、柱以上の荷重が掛かる可能性もあります。使用する筋違い材は、強度や耐久性、防蟻性に優れた赤身部分で、節が少なく化粧材でいえば「小節」といわれる材料を選びたい。

木目

筋違いには柾目材を使う

筋違いは他の構造材と異なり、引張りの力にも耐えなければならないため、変形が大きく引っ張り強度が低いといわれる芯に近い部分、あるいは年輪が斜めに入っている製材品の使用は避け、必ず大径木から製材し、年輪が材辺に対して平行な木材を使用したい。

樹種

構造材として主に流通しているスギとヒノキの強度を比較すると、一般的に圧縮、引張り、曲げおよび、せん断いずれの強度もヒノキの方が強く、他の構造材にスギ材を使用したとしても、できれば筋違い材だけは、ヒノキを選びたい。

筋違はダブルが基本

バランス良く耐力壁を配置しても、耐力壁自体の強度に差があると、地震時の揺れに差が生じる可能性があるため、耐力壁は全て同じ強度にしておくことを勧める。特に出隅柱部分の耐力壁は柱を押し出そうとする力が加わるので、必ずダブルで筋違いを入れたい。

木裏を合わせる

筋違い材は木面同士を合わせる

筋違いに圧縮力が加わると膨らみが生じることは、実験よりわかっている。ただし、圧縮力による膨らみは、木裏・木表方向に膨らむかは、木材それぞれの性質により変わるため、圧縮力による膨らみ方向を特定することが難しい。しかし、木材は乾燥が進むと木裏側に膨らむ性質があり、筋違い材が反る力を相殺できるように木裏同士を合わせ、壁の膨らみを防ぐことができる。

耐力壁の柱間

耐力壁の柱間は910ミリとする

耐力壁の柱間を1360mmあるいは1820mmとすると、柱間910mmの耐力壁強度は7割も減じるといわれている。柱間1820mmに1本の筋違いを入れるのと、柱間910mmに2本の筋違いを入れても、構造計算上は同じ値になるが現実の強度には、かなりの差が生じる可能性が高い。

反りを抑える

筋違いの反りを抑える工夫

物差しを長手方向に押すと反るように、筋違い材も圧縮力が加わると反り、建物の耐力の低下につながる。この反りを抑えるため筋違いの表面へ、木摺りや貫などの反り止めを打ち付けておく。残念なことに、木材が圧縮力を受けた場合、いずれの方向に反るか、材により様々であるため、反り止めは両面に取り付けることをお勧めする。

暮らしの耐震性能

筋違いを入れる、あるいは耐力面材を使用して、耐震性能を向上させることは建物を堅くすることになる。

堅い建物は、地震波を強く受け、建物が強く揺れることになる。建物が強く揺れると家具や冷蔵庫、テレビなど住宅内に置いてあるだけの家電や家財道具類が移動したり、倒れたりする可能性が高くなる。

建物が無傷であっても、家電や家財道具などで怪我や命を落とすことがあってはならない。

忘れてならないことは、建物の耐震性能の向上とともに、暮らしの耐震性能も向上させなければならない。

編集後記

建物の耐震性能は、建築基準法や構造計算にて数字として基準を満足しなければならない。しかし、基本的な軸組の構造計画や材料の選び方、施工方法など建築基準法では曖昧にされていること、あるいは構造計算では表す必要がない詳細部分などにも、耐震性能に大きく関わる現実があることを、改めて熊本地震が教えてくれたのではないだろうか。

そして、住宅産業に携わる方々の意識が、単に建築基準法のみを遵守することなく、住まい手の安全な暮らしを守り抜くため、より安全で安心できる暮らしを、住宅から支えられる家づくりを行っていただきたいと願うばかりである。

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