住宅のメンテナンスコスト【外壁編】

住宅のメンテナンス費用

天地ほどの差が生じる改修費

2019(令和元)年 6月12日更新

もくじ

住宅には点検と維持管理費用が必要です
素材により異なるメンテナンスの期間と費用
新築後100年間 素材の違いで大きな差額
各素材の設定メンテナンス期間
試算設定住宅
外壁メンテナンスの事実を知る
現在の住宅は戦後の復興仮説住宅が原点
お知らせ


住宅には点検と維持管理費用が必要です。

住宅の外壁に使用する素材により、数十年後には驚くほどメンテナンス費用が異なることを知っておいてください。
人により
「えっ!住宅のメンテナンスなんて考えたこともなかった」
あるいは
「将来のことだから想像できない」
「住宅会社の方から言われなかった」
「新築計画で頭がいっぱい、将来のことなんて考えられない」
など、新築時にメンテナンスのことを見ないようにしていませんか?
住宅には必ず日頃の点検とこまめな補修、修理が必要になります。
しかし、それは選ぶ素材により何倍もの差額が発生しますし、新築計画時にある程度の想定、予測することができます。目先の新築費用ばかりに囚われていると、将来とんでもない後悔が襲ってくるかもしれません。末長く愛着をもって暮らす家づくりをご希望されるなら、必ず将来のメンテナンス費用も考えた新築住宅の計画が必要です。
10年後あるいは15年後に後悔しても遅いのです。間違えた計画によりメンテナンス費用は、ずっしりと重石のように家計簿の負担となるかもしれない。

外壁メンテナンスコスト

素材により異なるメンテナンスの期間と費用

住宅業界では、台風や地震時後の点検以外にも毎年の定期点検することが推奨されています。また外壁材の中でも特に窯業系サイディングのシーリング(コーキング)は、10年に一度は打ち返しなければならないといわれます。本当は、外壁のメンテナンスをしなければならないのに諸事情(特に金銭)で、なかなか工事が出来ないでいる、というのが現状ではないでしょうか。
皆さんのご近所に戦前から建っている神社やお寺、あるいは歴史的建築物などがありませんか、その建物は、十数年に一度でも外壁のメンテナンスを行っていますか?
何十年も外壁の改修工事をせず、端正な佇まいを維持している建物がある一方、自宅は十年ほどでメンテナンスが必要となるなんて不合理であり不平等だと思いませんか?でもそれは、使っている外壁材の種類が違うからです。

歴史的建築物やご近所の神社仏閣(例外もあります)の外壁には、主に自然素材の木や漆喰などで造られた建築物が多く、現在多くの住宅に採用されるサイディングなどは使っていません。

金澤城址公園「三十間長屋」
金沢市:金沢城址公園内「三十間長屋」の漆喰壁は、昭和42年の大改修後50年経つが、この期間、大きな改修工事は行われていない。

新築後100年間 素材の違いで大きな差額

外壁のメンテナンスには、使用する建材や素材と軒の出などの構造により大きな差が生じるが今回は、同一建物で外壁材の種類別により、新築時に必要な金額と築後100年間のメンテナンスコストを試算してみた。

外壁材種類新築時金額改修工事費合計総合計(円)
窯業系サイディング1,871,3299,122,07410,993,403
ガルバリウム鋼板1,670,7238,915,22810,585,951
焼杉(節あり炭付き)1,508,9372,057,1333,566,070
杉(赤身・無節)3,943,8114,4920078,435,818
杉(赤身・上小節)3,185,9143,734,1106,920,024
レッドシダー(T&G)3,657,4564,205,6527,863,108
漆喰1,858,7352,833,8924,692,627
リシン掻き落とし1,932,4672,517,7094,450,176

金額参照:積算資料「住宅建築編2017年度版」

詳細に関してはこちらをご覧ください。(申し訳ありませんが現在執筆中です、少々お待ちください)

各素材の設定メンテナンス期間

窯業系サイディング:10年毎に塗り替え・30年毎に張り替え
ガルバリウム鋼板:10年毎に塗り替え・30年毎に張り替え
焼杉(節あり炭付):新築50年後に張り替え
杉(赤身・無節):新築70年後に張り替え
杉(赤身・上小節):新築60年後に張り替え
レッドシダー(T&G):新築50年後に張替え
漆喰:新築60年後に塗り替え
リシン掻き落とし:新築60年後に塗り替え

住宅のメンテナンスコスト「杉無垢板張り編」

外壁材のメンテナンス期間
外壁材のメンテナンス期間

「メンテナンスフリー素材」

いかがですか?メンテナンスコストからも住宅を考えると、新築住宅の計画も少し考え方が変わりませんか?自然素材に関心を持たれた方は、こちらの素材集を参考になさってください。

■ 外壁無垢木材
■ 左官塗壁材

試算設定住宅

メンテナンスコスト算出のため、住宅規模は木造総2階建てとし床面積は、国土交通省から公表された「平成27年度新築一戸建て持ち家」の全国平均延べ床面積規模の住宅を想定し、メンテナンス費用の産出を行なった。

木造総2階建
述べ床面積:128.06m2(38.66坪)
外壁面積:171.47m2

設定住宅平面図
設定住宅立面図

外壁メンテナンスの事実を知る

住宅業界の者が、多額のメンテナンス費用が十数年後に発生することを知っているにも関わらず、知らないふりをする、あるいは十分に想定できる事実を隠し製品や資材を選び施主に勧めることは、詐欺や虚偽とまでは言いませんが、決して見逃すわけにはいかないでしょう。

建築業界では、建築基準法違反で世間を騒がす不祥事が何度も発生している。最近ではレオパレスや大和ハウスの防火性能の不正、過去には「耐震強度構造研鑽書偽装事件」や「免震装置データ捏造問題」など耐震性能の不正な行為は、建築基準法第一条(目的)「この法律は、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もつて公共の福祉の増進に資することを目的とする。」と、最低限の基準までも満たしていないことを理解しつつ計画、施工したこれらの作為的に仕組まれた事件は、決して許されることではなく、その罪は重い。

さらに住まい手の生命、健康及び財産の保護を図る建築物を責任を持って建築する専門家であれば、建築基準法だけを守るのではなく、建築計画時には出来うる限り、あらゆる想定をしなければなりません。

想定外の事態

現実に東日本大震災にて尊い命を市民のために捧げ、尊い命を失った南三陸町「防災対策庁舎」はALCパネル(軽量発泡コンクリート)を取り付けた鉄骨造であった。ALCパネルは一見すると丈夫な外壁に見えるかもしれないが、その施工は、発泡性コンクリートパネルを躯体の鉄骨に4箇所だけ点溶接して取り付けているだけであり、津波の水圧に耐えられるだけの強度がないことは、建築の専門家であれば誰でも認識している。そんな津波に耐えられないことが明白な建築物に「防災センター」などと、どのような災害にも耐えうると錯覚するような名称を付けることも不思議で、そもそも防災センターを計画するのであれば、当初より鉄筋コンクリート造にすべきであっただろう。

また、福島原子力発電所を始め、多くの病院や庁舎では、自家発電装置設が地下に設置されていたため、津波の浸水により発電装置が機能せず、多大な二次災害が発生してしまった。発電装置は、建物の最上階が第一候補であることは、学生時代に建築設備の講義で習っているはずである。福島原子力発電所の自家発電装置が、なぜ浸水の可能性がある地下室に設置したのかとして、言い訳の一つが、アメリカでは巨大ハリケーン対策として発電装置は地下に設置すると記していた。しかし国内では、いつ発生するか分からない超巨大なハリケーン対策より、確実に発生するといわれていた津波対策が優先されるべきであっただろう。ましてや、信じるか信じないかは別にして、地球温暖化による海面上昇で、国内の原子力発電所の全てが浸水する可能性があると、何十年も前から騒がれていた。

全ての建築物は、建築基準法第一条による「国民の生命、健康及び財産の保護」を図らなければならない。これは勿論、個人の大切な財産であり何十年も暮らす住宅も例外ではなく、あらゆる事象を想定すべきである。住まい手の健康、生命及び財産を脅かす災害、地震や水害、土砂崩れなどの災害だけでなく、出来うる限り財産としての価値を維持できる住宅を考えなければならない。

現在の住宅は戦後の復興仮設住宅が原点

基本的に住宅は、その地域で産出される材料を使い、先人たちが嘆い年月を掛け地域ごとの環境に合わた工法や意匠を生み出し、改良、改善を重ね長い年月暮らすことができるように工夫されてきた。
強風が吹く地域では強風対策が、豪雪地帯には豪雪対策が、湿潤な地方では湿気対策、水害が多い地域では水害対策。活断層近くに建つ三十三間堂の地盤には、粘土質と砂質の土を利用した免震構造であることが発見され話題になったこともある。

全国で住宅の販売をしている大手ハウスメーカーは、戦後に設立され戦後の住宅復興にとても大きく貢献したことは評価されるでしょう、しかし施工してきた住宅は、戦後の復興仮説住宅が基本であるように思えてなりません。とにかく安く早く多くの住宅を建設することが任務であり、将来的な住宅の質や価値、メンテナンスなどは考えていなかった。高度成長期の家づくりでは
「どうせ仮設住宅だから、20年から30年後には建て替えるだろう」
「なんせ今の世は、早く、安く、大量生産生産、大量消費が良いことだ」
「住まい手のことより我が社の発展を優先させろ、とにかく売上と利益が優先だ」
などと、こんな裏話も多かったに違いなく実際に住宅を施工する職人さんたちの間では
「この家は20年か30年経てば建て替えだな」
「25年の住宅ローン終了と同時にこの家も終わりかな」などと囁かれていた。

平成27年の国土交通省統計によると、新設持ち家住宅の着工数は年間284,441戸、建築した住宅会社は、年間の施工棟数により、大手ハウスメーカーと地域で20棟以上施工するビルダー、そして地域の工務店それぞれが、おおよそ1/3ずつの割合で施工している。しかし、どの住宅会社も新築する住宅本体に大きな差はなく、戦後に主流となってしまった住宅、つまり地域や歴史そしてなによりも本来、住宅に使用されるべき素材を無視した大量生産、大量消費の新建材を基本とする戦後に派生した住宅であり、多くの施主は、何も知らず戦後復興仮説住宅に多額の資金を費やしていることになる。

大量生産品の多くは、基本的に大量消費されることが大前提にあるため、住宅の新建材もその耐用年数は数十年しかなく、住宅が国民の財産であるとすれば、建材の耐用年数は短すぎるのではないだろうか。住宅建材の耐用年数で住宅将来のメンテナンスコストが大きく変わり、住宅の価値いわば財産を予測、想定することも可能である。

皆さんは、そんなに遠くない十数年後のメンテナンス費用に100万円も超える金額が必要となると、住宅会社から説明を受けているでしょうか?あるいは、皆さんご自身は、新築計画をなされている時、将来のメンテナンスをも予測していますか?

住宅に長く快適に暮らすためには、ある程度メンテナンスが必要であることをご存知だと思います。最近まで新築時に具体的なメンテナンスケジュールと、そのコストに関してまで考える人は、少なかったようですが、最近は新築時に多少費用が高額になっても、将来のことを考えメンテナンスフリーの住宅を求める賢い方が増えているようです。

今回、皆さんが計画する住宅に何十年ほど暮らしたいと願っているか?それは人それぞれですが、少なくとも数十年のうちに、かなり高額となるメンテナンス費用を必要とする住宅は、決して建ててはいけません。メンテナンス費用は住宅の負の遺産でしかありません、いわば修繕しなければ暮らすことができない「価値がない家」といっても言い過ぎではないでしょう。そして、窯業系サイディングを標準仕様にしている住宅会社さんは、もしかする施主の立場で住宅を考えてはいないのかもしれません・・・ね。

メンテナンス費用は、住宅には高額な負債だとも言えます。窯業系サイディングをはじめとするメンテナンス費用が発生する外壁材を選ぶことは、いずれ間違いなく発生する高額の負債を抱え込むことになる。何十年も暮らし続ける住宅を計画する時には、外壁だけでなく使う素材は、住宅会社から勧められたから、他の家と同じだから、外壁の種類なんて選べない、などとあまり深く考えずに選んではいけません。使用する素材によって、将来の出費が大きく変わるかもしれません。

住宅を新築するのであれば「家族の生命、健康及び財産・家計の保護」をできる家を計画しなければなりません。

お知らせ

主な外壁各素材のメンテナンスコストの算出はすでに終え、もっと詳しく掲載しようと現在執筆中ですが、早々に各素材のメンテナンス費用を知りたい方は、ご連絡ください。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です