アレルギー対応住宅を計画する
アレルギー対応住宅は、簡単にいえば、アレルギー疾患の原因となるアレルゲンを全て排除した住宅です。しかし、住宅のアレルゲンを全て排除することは、不可能に近いでしょう。確かに住宅全てをガラスや金属で造れば、アレルゲンの多くを排除できる可能性もありますが、現在の社会環境では非現実的ですし、人の暮らす所には、必ずアレルゲンが発生します。アレルギー対応住宅を計画するときには、意外と簡単そうに思えますが、アレルゲンを極力減らす対策を講じるには、アレルゲの種類や、アレルギー疾患の種類など、アレルギーを十分に理解した上で、詳細にまで検討を行い、計画したいものです。
アレルギー疾患を知る
もくじ
アレルギーの歴史
住宅が原因のアレルギー疾患
アレルギー疾患有病者数調査
住宅とアレルゲン
住宅アレルゲンの種類
アレルギーフリーデザイン
花粉症対策の家はこちら >
アレルギーの歴史
アレルギー疾患の最も古い記述は、紀元前2641年頃のエジプト第1王朝の始祖「メネス王」がハチに刺されアナフィラキシーショックで死亡したとの記述があるようです。日本では、江戸時代の医学文献に「雁瘡(がんがさ)」という言葉がしばしば登場し、アトピーではないかという説もあるようです。アレルギー疾患の有病者数は、戦後に研究も進み患者数が増加し始め、平成20年ごろから急増しています。
1906 |
ドイツでは「ピルケ」が”Allergie”という論文を発表 |
1927 |
国内で、牛乳によって発症するアレルギー喘息についての記載があります |
1932 |
ロスト(Lost)が、アレルギーのないクリーンな部屋では湿疹が治ることを報告 |
1949 |
タフト(Taft)が、アトピー患者はゴミに過敏であることを報告 |
1950 |
この頃、アトピー性皮膚炎の病名がわが国に紹介される |
1952 |
ザルツバーガー(Sulzberger)がステロイド軟膏を開発 |
1953 |
Rウッドワードによって天然ステロイドの全合成がなる |
1964 |
花粉症が現れ、スギ花粉によるものとの説が有力となる |
1967 |
石坂夫妻により、新しい免疫グロブリンIgEであることが明らかにされた |
1985 |
ミッチェル(Micher)と吉田彦太郎教授、ダニによるアレルギー起因を追認 |
1987 |
国際皮膚科学会シンポジウムでアトピーが急増しているとの報告 |
1990 |
アメリカ皮膚科学アカデミーがアトピー性皮膚炎の診断基準を発表 |
1995 |
大阪府にてアトピー性皮膚炎に関する総合的な調査を実施 |
参考:特定非営利活動法人 日本アトピー協会
住宅が原因のアレルギー疾患
花粉症
気管支ぜん息
アレルギー性鼻炎
アレルギー性結膜炎
アレルギー性気管支炎
アトピー性皮膚炎
食物アレルギー
シックハウス症候群
化学物質過敏症
花粉症
花粉症とは、スギやヒノキなどの植物の花粉が原因で、その花粉が飛ぶ季節にだけ症状があります。日本では、約60種類の植物が花粉症を引き起こすと報告されています。症状は、鼻の三大症状(くしゃみ、鼻水、鼻づまり)だけでなく、目の症状(かゆみ、涙、充血など)を伴う場合が多く、その他にのどのかゆみ、皮膚のかゆみ、下痢、熱っぽい感じなどの症状が現れることがあります。さらに、シラカンバ、ハンノキ、イネ科花粉症などの人が、ある果物や野菜を食べると、口の中がかゆくなり、腫れたりする口腔アレルギー症候群という症状もあります。日本において、正確な出現時期は不明ですが、1960年代にブタクサ、カモガヤ、スギ、ヨモギなどの花粉によるアレルギー症状が、次々と報告されたことが始まりで、平成28年に東京都が行なった調査では、48.8%もの方が花粉症を発症しているとの報告通り急増し、花粉症はもはや「国民病」ともいえます。最近の報告では、花粉症患者は、他のアレルギーを発症しやすくなる可能性が高くなることが、分かっています。
気管支ぜん息
気管支喘息(ぜんそく)は、常に炎症をおこしており、健康な人に比べて気道が狭く敏感いなっていて、ホコリやタバコ、ストレスなどのわずかな刺激でも発作がおきてしまい、咳や痰が出て、ゼーゼー、ヒューヒューという音を伴って息苦しくなります(喘息発作と呼びます)。夜間や早朝に出やすいのが特徴です。
炎症を引き起こす原因は、チリやダニ、ハウスダスト、ペットのフケ、カビなどのアレルゲンによることが多いのですが、その原因物質が特定できないこともあります。
アレルギーの原因が分かっている場合は、それらを避け、発作をおこさないための気道炎症の治療が欠かせません。炎症の治療を怠り、気道が固く狭くなり元に戻らなくなると、治療によって症状をおさえることが困難になります。
アレルギー性鼻炎
アレルギー性鼻炎は、風邪でもないのに突然鼻水、くしゃみ、鼻づまりを主な症状を繰り返す疾患です。主な原因物質(アレルゲン)は、一年を通して症状を起こすダニやハウスダスト、カビ、ペットなどと、一年のある時期だけ症状を起こす花粉です。
アレルゲンを吸い込むと、即時反応として発作性にくしゃみ、鼻汁、鼻閉を生じ、遅発反応として鼻閉を生じます。これらの症状は、本来入ってきた異物(アレルゲン)をくしゃみで吹き飛ばし、鼻汁で洗い流し、鼻閉でさらに異物を入れないようにする生体防御のための反応です。しかし、過剰に反応が起こってしまうと日常生活上の支障が生じます。
治療の第一歩は、アレルゲンの除去と回避です。薬物療法は、最も多く行なわれていますが、症状や重症度に応じて抗ヒスタミン薬や鼻噴霧用ステロイド薬などを用います。鼻づまりが強い例などでは手術も行なわれます。根治が期待できる治療としては特異的免疫療法があります。
アレルギー性結膜炎
結膜は、「しろめ」とよばれる眼球の表面から、まぶたの裏を覆う粘膜です。症状が出る時期や粘膜の炎症の種類や程度により、アレルギー性結膜炎、春季カタル、アトピー性角結膜炎、巨大乳頭結膜炎に分類されます。アレルギー性結膜炎の主な症状は、眼の痒みですが、そのほか、白目が赤くなる、涙がでる、目がごろごろする、目やにがでる、といった症状も伴います。スギ花粉症もスギ花粉によるアレルギー性結膜炎で、スギ花粉の飛ぶ時期に症状がでます。春季カタルは、アトピー体質の男児学童が重症化しやすいタイプです。瞼の裏の結膜が炎症のためにでこぼこになり、角膜(くろめ)にも潰瘍ができるので、目がとても痛くなったり、視力が落ちたりすることがあります。
アレルギー性気管支炎
気管支炎とは、下気道(気管、気管支)に炎症を起こす病気の総称です。いわゆる「かぜ」が、上気道(鼻、咽喉頭)に感染し炎症を起こす病気の総称であることに対して用いられます。数日から数週間で治癒する急性気管支炎と、3か月以上症状が続く慢性(遷延性)気管支炎に分けられます。気管支炎の原因は8割以上が、かぜの原因にもなるウイルスによる感染症で、細菌感染も急性気管支炎の原因となることがあります。また、感染以外の原因としては、アレルギー・大気汚染・化学物質・喫煙などが挙げられます。感染症が原因となる気管支炎の主な症状は、炎症による発熱や咳、痰ですが、全身倦怠感や食欲不振、胸の痛みが起こることもあります。小児の場合には気管が狭くなり、「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という喘鳴ぜんめい音が聞こえることがあります。慢性気管支炎では、咳、過剰な痰が長期間続きます。慢性気管支炎は、これらの症状が少なくとも2年以上にわたり、毎日または少なくとも連続して3か月以上続く状態です。
アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎は、皮膚にかゆみのある湿疹を主病変とする疾患であり、患者はアレルギー体質であったり、皮膚のバリア機構が不十分な人が、悪化と回復を繰り返し発症する皮膚の病気です。一般に小児には目のまわりや耳のまわり、首、肘や膝のくぼみなど関節の曲げ伸ばしをしているところによくできる傾向にあります。最近は、成人の住宅建材が発散する化学物質の影響で肌が露出している場所や、食器用洗剤、シャンプーなどの化学物質が接触することによる発症が疑われる事例もあります。近年のアレルギー実態調査では、アトピー性皮膚炎の有病者数は減少傾向にあるとの報告もあるようです。
食物アレルギー
食物によって、蕁麻疹や湿疹、嘔吐,下痢、咳、ゼーゼー(喘鳴)など多種多様の症状が、免疫を介して引き起こされる疾患です。皮膚、呼吸器、循環器、消化器など複数の臓器に症状が同時に出現することをアナフィラキシーと呼び、時には血圧低下や意識障害など生命をおびやかす危険な状態にいたることもあります。アレルギー症状の原因となる食物は、食物アレルゲンと呼ばれ本体は食物中のたんぱく質です。原因食物は、0歳では鶏卵、牛乳、小麦の順で多く3品目で全体の9割を占めます。1歳以降鶏卵と牛乳の頻度は急速に漸減し、学童期では甲殻類、果物類が問題となります。食物アレルギーは、症状の出かたや重症度に個人差があり、原因となる食物アレルゲンの種類、量、品目数、耐性獲得の時期なども人により異なります。医療機関で診察や検査を受け、医学的な根拠に基づいた治療に取り組むことが大切です。
引用:一般社団法人 日本アレルギー学会
シックハウス症候群
住宅に使用する建材のほぼ全てに有害な揮発性有機化合物が含まれ、加えて防蟻防虫剤が大量に使用されるようになり、住宅の高気密化・高断熱化が進むに従って、建材から発散する化学物質等による健康被害です。症状は、目がチカチカするや鼻水、のどの乾燥、吐き気、頭痛、湿疹、めまいなど人によってさまざまですが、個人差も大きく、同じ部屋にいても影響を受けない人もいれば、敏感に反応する人もいます。シックハウス症候群は、新築やリフォーム前に使用する建材を慎重に検討し、材料を選ぶことで発症を抑える可能性が非常に高くなります。またシックハウス症候群は、化学物質だけでなくカビやダニ、喫煙、暖房機器から放出される汚染物質なども原因物質とされています。シックハウス症候群は発症する部屋から移動すると、症状が回復することが多い。
化学物質過敏症
化学物質過敏症は、何かの化学物質や農薬などに大量に曝露・吸引したり、微量でも繰り返し曝露されると発症するとされています。化学物質の開発・普及は20世紀に入って急速に進んだものであることから、人類や生態系にとって、それらの化学物質に長期間暴露されるという状況は、歴史上、初めて生じているもので、化学物質過敏症は、多少の便利な生活のために、化学物質の安全性の検証は後回しにしてでも利用が優先されがちです。こうした背景のもと、化学物質過敏症など、従来予想できなかった新たな問題が表面化してきたようです。化学物質過敏症は、シックハウス症候群と異なり、発症した空間から移動しても症状が回復しにくく、電磁波などにも敏感な方も多くみうけられるようです。
参考:一般社団法人日本アレルギー学会
厚生労働省
Medical Note
増加するアレルギー疾患有病者数
大きく変わった戦前と戦後
アレルギー疾患患者数推移
アレルギー年齢別患者構成割合の比較
全国児童生徒アレルギー疾患実態調査
東京都3歳児アレルギー調査結果
花粉患者数の推移
大きく変わった戦前と戦後
アレルギー疾患有病者が戦後に増加したのは、長い日本の歴史の中でも、私たちの暮らしが、戦後の短期間に大きな変化があったことも一要因ではないでしょうか。暮らしの変化は、日本人が伝統的に食べてきた食事と全く違うものを食べ始め、住宅も伝統的な自然素材だけで作られた換気の良い住環境から、化学物質を大量に使用し、高気密・高断熱の住宅へと大きな変化がありました。これらの短期間で大きな変化に身体が順応できずに、アレルギー反応として身体に現れてきたのではないでしょうか。
アレルギー疾患患者数推移
アレルギー疾患有病者に関する調査は、平成8年から3年ごとに行われています。アレルギー性疾患で最も患者が多いぜん息は、調査が開始された平成8年から減少傾向にありました、これは大気汚染の改善が、大きく影響しているように思えます。しかし、平成20年からは、全体的に増加傾向にあり、この増加の要因は定かではなく、大気汚染以外に何か身体に悪影響を及ぼす要因が増加しているとすれば、これは大きな問題で、原因の解明が急がれます。
アレルギー疾患の年齢別患者構成割合の比較
これは平成26年に医療機関で受診した患者数調査結果です。ぜん息の有病者が最も多く、患者数推計は117万7千人で総人口の約0.9%になる。ぜん息とアレルギー性鼻炎は未成年層が多く、未成年に多いと思われていたアトピー性皮膚炎の患者は、20歳〜44歳に多いことは意外な結果といえます。
全国児童生徒アレルギー疾患実態調査
平成16年に調査したアレルギー疾患に関する調査では、全国の97.9%から有効回答を得た結果が報告されている。全国児童生徒調査ではアレルギー性鼻炎の有病者が最も多く、ぜん息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性結膜炎と続き、食物アレルギーは全国児童の2.2%だが約33万人の児童生徒が食物アレルギーにかかっている。全体的には男子の方が有病率は多い。
東京都3歳児アレルギー調査結果
東京都の3歳児アレルギー調査は、平成11年度から5年おきに実施されている。3歳児では、じんましん、アトピー性皮膚炎、食物アレルギーと続き、その他のアレルギーを除きアレルギー性結膜炎が5%弱と報告されている。国民全体のアレルギー調査で最も多いぜん息は、じんましんの約半数の10%で、平成16年から減少傾向にある。増加傾向を示しているのは食物アレルギーとじんましんで、アレルギー性結膜炎は5%未満で微妙に増減している。
花粉症患者数の推移
東京都の調査では、昭和58〜62年度の第1回調査で10.0%だった有病者が、平成28年度に行われた第4回調査では48.8%と、30年間で約5倍と急増している。また、財団法人日本アレルギー協会の全国調査は、平成13年に実施され全国平均12%であり、平成18年に全国11か所の有病率調査では、鼻アレルギー症状を有する頻度は、47.2%であり、いずれの調査でも花粉症疾患有病者の急増していることに間違いない。
住宅とアレルゲン
住宅アレルゲン一覧
住居とアレルゲン種類調査結果
食物以上に大事な空気の安全性
空気は直接人体に侵入する
空気は自分で選べない
アレルゲンを減らす
アレルギー疾患の原因物質は食物アレルギーを除き、住宅の環境と大きく関係があります。一般に、住宅内でアレルゲンとなるものには、ハウスダスト、ダニ、カビ、化学物質、ペット、花粉、昆虫などがあります。それらに対してアレルギーになるかどうかは個人差もありますが、アレルゲンの量にも関係があり、一般にアレルゲンの量が多いほどアレルギー疾患を発病しやすくなります。原因となるアレルゲンの抑制や、悪化因子を避けるための環境整備を行う新築・増改築計画がとても大切です。
住宅アレルゲン一覧
ハウスダスト |
繊維クズ、食べカス、ダニ、カビ、花粉などの集合体の埃・塵 |
ダニ |
チリダニ、ツメダニ、コナダニ、ニクダニなどの虫体、死骸、抜け殻、糞 |
カビ |
コウジカビ、アオカビ、クロカビ、ススカビ、フザリウム、ワレミアなど |
ペット |
犬、猫、小鳥、ハムスターなどの上皮、アカ、排泄物、毛など |
花粉 |
スギ、ヒノキ、ブタクサ、カモガヤ、ヨモギ、イネ、シラカバなど |
化学物質 |
揮発性有機化合物、農薬、防虫剤、水道残留塩素、食品添加物など |
その他 |
羊毛、絹、ソバガラ、昆虫、PM2.5、大気汚染、煙草、生活習慣など |
住居とアレルゲン種類調査結果
東京都が実施したアンケート調査では、アレルギー疾患患者がいると回答した世帯は全体の50.4%( 441世帯)でした。アレルギー疾患患者がいると回答した世帯のうち、71.4%の世帯で花粉がアレルギー疾患の原因と特定された居住者がいると回答しており、次いで、ハウスダスト(37.9%)、ダニ(15.2%)の順に多いという結果でした。
東京都福祉保健局アレルギー情報navi「住居とアレルゲン』
食物以上に大事な空気の安全性
私たちが1日に摂取する全物質摂取量を重量で表すと、主として住宅内の室内空気は57%、公共施設・空間が12%、産業排気9%、外気5%、飲料8%、食物7%その他2%と報告されています。個人差はありますが、私たちが口にする食物は、大人の場合1日約1.6kgで7%です。また、安静時に吸う空気量は1日に約15m3、空気の重さは1.2kg/m3とすると、重さで約18kgと食物摂取量の約10倍にもなり、空気の質は食物よりもその安全性には気を配りたい。
空気は直接人体に侵入する
食物を摂取した場合、直接アレルギー反応として人体に有害な場合もありますが、もし飲食物に有害成分が含まれていたとしても、肝臓である程度は解毒されます。しかし空気の場合、それも重量比で飲食物総量の約5倍もの量が、人体に取り込まれ肺から直接血液に溶け込み、中枢神経や身体中に侵入してしまいます。
空気は自分で選べない
さらに飲食物は、成分表示されているため有機栽培や無農薬野菜、添加物ゼロ食品など選んだり、直接生産者からお取り寄せすることも、さほどむづあしことではありません。しかし、住宅は一度建ててしまうと、一生その室内空気を吸い続けることになってしまいます。あなたは一生、有害な化学物質を吸い続けたいですか。
自分でつくる自宅の空気質
空気は飲食物のように自分の意思で選ぶことができません、しかし、住宅を新築・増改築するときには、自分自身で自宅の空気を良質にすることが出来ます。
主な住宅アレルゲンの種類
ハウスダスト
住宅内のハウスダストには様々なものが混ざっており、糸くずだけではなく塵や埃、フケ、食べカスまたこれらを餌とするダニやカビなども多く含まれています。ハウスダストを減らすことは、住宅内のアレルゲンを減らすことに繋がります。掃除により、住宅内のハウスダストを減らすことも大切ですが、日頃忙しい日々の中で、掃除に多くの時間をかけられない方も多いと思います。住環境アレルゲンを減らし、住宅を起因とするアレルギー疾患を発病しない、または症状の軽減するアレルギー対応の住宅は、掃除も大切ですが、そもそもハウスダストが溜まりにくく除去しやすい住宅を計画しなければなりません。
ダニ
世界には2万種以上のダニが生息しているといわれる中で、日本の住居に生息する主なダニは、10種類ほどで、その中でも約8割が、コナヒョウヒダニとヤケヒョウヒダニの2種類になります。また、小麦粉などのコナ類の中で異常繁殖してアナフィラキシーショックを引き起こすパンケーキシンドロームの原因とされるコナダニ類も多いので、粉類の管理には注意が必要です。
アレルギー疾患のダニアレルゲンは、成虫だけではなく卵や糞、死骸もアレルゲンとなります。日常の生活でのダニ対策は、掃除機などで除去することも大切ですが、新築・増改築計画では、風通しや日当たり、使用建材なども十分に検討し、ダニが繁殖しにくい環境作りを考えた計画をすることです
カビ・真菌
カビはどこにでも存在し、カビが存在しない場所はありません。これまでわかっているカビは、地球上で約7万種類とも8万種類ともいわれていますが、まだ確認されていないカビも多くあります。平成15年に名古屋市で実施された調査によると、住宅内で確認されているカビの種類は約45種類、その中でも今日の生活環境でトラブルでトラブルを引き起こすカビは、10種類ほどで、カビは一定条件のもとで繁殖しやしく、その条件を一つでもなくすると、繁殖しにくくなります。一般的にカビは、多湿の場所で多く繁殖すると思われていますが、家庭内で主に繁殖するカビ種は、好湿性カビと好乾性カビは半数ずつで、湿気だけに気をつけても、家庭内のカビを減らすことは難しいようです。
花粉
花粉対策は、身体に花粉を吸引、接触させないことです。もちろん、住宅の花粉症対策は、まず花粉を住宅内に入れないことです。生活で花粉が住宅の中に侵入するのは、帰宅時の身体や洗濯物に付着して持ち込まれる場合と、窓などの開口部からになります。住宅の花粉対策は、玄関横に外出用のコート類を掛けておける場所や、もう少し本格的に対策をするのであれば、最近は住宅用のエアーシャワーもありますので、検討してもいいのではないでしょうか。また、窓には花粉を通さない網戸、吸気口には花粉対策用のフィルターが市販されています。ただし、網戸は、外が見えなくなるほどメッシュが細かいです。さらに、花粉症の季節に困るのは洗濯物ではないでしょうか、間取りの計画段階で物干しの方法、物干し場を作るのか、洗濯乾燥機を設置するのか、物干し場と共用できるスペースを確保するのかなども決めておきたいものです。
化学物質
ハウスダストやカビ、ダニは自然界のものであり、注意して掃除することによって減らすことができますが、全てを取り除くことはできません。しかし、住環境のアレルゲンとして有害な揮発性有機化合物は、新築・増改築を計画する段階で、そのほとんどを無くすることが出来ます。アレルギー疾患を発症する可能性のあるアレルゲンは、1要素でも無くすることで、身体への負担は大きく減少させることができ、アレルギー疾患の発症を非常に少なくすることが可能になります。住宅に使う建材から発散する有害な揮発性有機化合物や農薬は、住宅に使う前に調べることで、その素材に何が含まれ、何が揮発するか予測することが出来ます。アレルギー対応住宅を計画するときには、建材に含まれる成分を全て調べ、身体に負担をかける可能性のある物質が含まれていないことを確かめておかなければなりません。
ストレス
アレルギー性疾患との関係性が少ないようにも感じられるかも知れませんが、ストレスもアレルギー疾患の原因となります、このストレスを感じない住まいは、ご自身に合わせた家づくりを行い、自分自身の暮らしをすることが大切です。決して既製の住宅にご自身を合わすことではありません。
アレルギーフリーデザイン
プラニング
敷地
コストコントロール
間取り計画
インテリア
給排水衛生設備
電気設備
アレルゲンを減らす
プランニング
「アレルギーフリー住宅」と「自然素材の家」は違います。自然素材住宅は、国産材を基本に自然素材を使った家であるが、アレルギーフリー住宅は、何よりアレルゲンを排除する住宅です。自然素材の中にも個人差はありますが、アレルゲンが全くないとはいえません。例えば「総檜造りの家は神の家であり、個人住宅には向かない」と伝えられる地方もあるようで、総檜の家は檜の香りが強く、人の身体に良くないとの教えかもしれません。自然素材にもアレルゲンとなる一方で、化学物質の中にもペットボトルのように、ある一定下の元であれば、人体に無害な製品もあります。自然素材でも化学物質でも、内容成分を十分に確かめ、身体に安全な製品を使うことが重要です。また、アレルギーフリー住宅は、住宅に使用する建材だけででなく、敷地や間取り、インテリア、給排水衛生設備、電気設備などにもアレルゲンが含んでいない製品、およびアレルゲンが溜まらないように計画しなければなりません。
敷地
敷地は、時により生命に関わる大きな問題となり得ることを忘れずに、選びたいものです。それは近年多発する地震や豪雨などの災害対策ばかりでなく、アレルギー対策住宅は、敷地の環境もアレルギー疾患の原因となることも多く、気を配りたいものです。例えば、湿気の多い地域や日が射さない敷地は、室内にもカビが生えやすくダニなども繁殖しやすくなります。
既に敷地を購入されている方や、既存の住宅を建て替える方は、敷地の特徴・特性をしっかりと把握した上で、何か問題点があるなら、住宅の計画を行う場合にはその対策を講じなければなりません。
コストコントロール
アレルギー対応住宅や自然住宅など、大手ハウスメーカーが多く建て、皆さんが最も多く目にしている一般的な住宅と違う家を計画しようとすると、建築費が高額になると考える方が多いと思います。しかし注文住宅は本当にコスト高なのでしょうか。確かに新築時はローコスト系の住宅より高額になります。しかし、大手ハウスメーカーの住宅とでの差額は少ないでしょう、いや長い目で見ると大手ハウスメーカーより随分と割安になる可能性もあります。ここで可能性と書いたのは、設計時の選ぶ素材により金額が異なるからです。住宅は長い将来をも見通した資金計画が必要です、決して、新築時だけのことを考えて計画してはいけません。それは、長期優良住宅であったとしても、将来のメンテナンス費用が必ず必要となります。できれば、新築工事見積時に将来のメンテナンス費用も算出しておく必要があるかもしれません。そうすれば、自然素材住宅や、アレルギー対応住宅が決して高くないことがわかるでしょう。
間取り計画
希望をご自身でカタチにしたり、依頼した間取りの説明を受けることは、とてもワクワクするのではないでしょうか。アレルギー対応住宅では、間取りの段階で十分な検討が必要です。間取りで家事動線や部屋の風通し、陽射しなどの室内環境はもちろん、家庭内事故を起こしにくい安全性、アレルギー疾患やストレスなども含めた健康面、掃除のしやすさなども間取りの段階で考慮しなければなりません。逆に言えば、間取りでこれらのことが決まるということですが、さらに言えば、間取りは暮らしそのものや、そこに暮らす人の感性、家族同士の距離感、子供達の性格や将来までも影響を与える可能性があります。建築家の中には「建築は人を育て、人間を形成する空間だ」という方もいます、それだけ住宅が人に与える影響は大きなものです。
インテリア
アレルゲンのハウスダストは床だけではなく、棚や家具の上や裏側、建具や障子の格子、さらに細かくいえば壁と床の接合部にある巾木の上面、ドア枠の上面などにもホコリは溜まります。これらホコリが溜まりやすい部分を徹底的になくした上で、掃除がしやすいデザインと素材の選択が必要不可欠です。
給排水衛生設備
給排水衛生設備では水道水の残留塩素と、洋式便器のロータンクの底部分と内部、洗濯機周りに溜まりやすいホコリやカビ類。地域によって変わりますが、3階建以上の住宅や集合住宅の貯水タンク内に繁殖するカビ類。また、給水管に使用される接着剤と、洗面化粧台やキッチンセットなどに含まれる揮発性有機化合物が主なアレルゲンとなります。
電気設備
ホコリが溜まりやすいペンダント型や壁面に取り付ける照明器具は、ホコリが溜まりやすいので、その使用は避けたほうがいいでしょう。人により電磁波に敏感な方は、分電盤の取り付け位置は、居室や寝室から離した場所が良いのですが、近年の災害時に分電盤を切り、避難することを考えれば、分電盤の位置は案外と難しかもしれません。
アレルゲンを減らす
花粉症やアトピー性皮膚炎、気管支炎、喘息、鼻炎、シックハウス症候群を代表とするアレルギー疾患に加え、化学物質過敏症の方の家づくりは「自然素材を使った家」と、考えている方が多いのではないでしょうか。確かに、建築建材から揮発する有害化学物質は、アレルギー症状を悪化させる危険性が高く、住宅に使う建材は、内容成分を十分に確かめて使わなければなりません。住宅内の主要なアレルゲン物質は、ハウスダストとカビ、ダニそして化学物質です。屋外では、ディーゼル排ガスや、ばい煙、粉塵などのPM2.5、黄砂、花粉などがアレルゲン物質として挙げられます。住空間のアレルゲンを全てなくすることは不可能だとしても、新築や増改築時の設計や計画によって、屋外からアレルゲンが侵入しにくく、掃除がしやすくホコリが溜まりにくい、さらに住宅建材から化学物質を発散せず、農薬を使用しない家がアレルギー対応住宅の基本です。化学物質・農薬を計画の段階で排除することができれば、アレルゲン総量を極力減らすことは可能で、有害な揮発性化合物は無くすることが出来ます。アレルギーフリーの住宅を計画することで、アレルギー症状を緩和できる可能性が高くなります。
家族のアレルゲンを確認し住宅を計画する
花粉症・アレルギー対策の住宅を計画するには、まずは家族のアレルゲンを改めて確かめることをお勧めします。その上でアレルゲンを排除、あるいは軽減できる計画を行います。たとえば、花粉症の方は、花粉を室内に持ち込まない配慮はもちろんのこと、外で物干しができない時期もありますので、室内に物干し場が必要になるでしょう。また帰宅直後には、すぐに手洗いや洗顔ができる場所造り、あるいは浴室へ直行できれば、なお快適でしょう。ハウスダストがアレルゲンであれば、埃が溜まりにくく、掃除がしやすい詳細設計をする必要があります。
アレルゲンを知らずに家づくりをすることは、地図を持たずに旅に出ることと同じです。余計な時間と労力、経費をかけたにも関わらず、目的地に着くことはできません。花粉症とアレルギー対策を施した住宅を手に入れることは難しいです。
アレルギーの歴史
住宅が原因のアレルギー疾患
アレルギー疾患有病者数調査
住宅とアレルゲン
住宅アレルゲンの種類
アレルギーフリーデザイン