風害被災住宅の点検と対策

投稿2019年9月10日 更新2019年10月1日

災害と住宅

令和元年9月千葉県を中心とした風害

浸水・洪水等の水害被災住宅の点検法はこちら

もくじ

   はじめに
   修復前に必要な点検
   【図解】目に触れない箇所の点検
   【必須】断熱材の確認
   断熱材の点検方法
   床仕上げ材と下地材の間
   耐力壁の点検
   瓦屋根の修理と暴風対策
   最後に

   column:ねじ回し(ドライバー)とねじ
   column:現存する日本最古の瓦

   関連記事:茨城 大洗 原子炉冷却塔倒壊

はじめに

令和元年9月5日に発生した台風第15号(ファクサイ)は、9月9日に上陸し、千葉県を中心に甚大な被害を出した。同台風は、関東地方に上陸したものとしては観測史上最強クラスの勢力だった。

台風第15号により、風害の直接的な被害を受けられた皆様をはじめ、停電、断水などにより日常生活に困窮された方々、今でも避難生活を余儀なくされている方々、あるいは被害の大きさに精神的に大きくダメージを受けた方々。被害を受けられた皆様に謹んでお見舞い申し上げるとともに、被災地域の一日も早い復旧を心よりお祈り申し上げます。

特に、千葉県を中心として住宅の屋根瓦を吹き飛ばすという甚大な被害が発生し、多くの住宅の屋根にブルーシートで応急的な対応しかできない中、10月6日に発生した台風第19号、さらに10月25日前後の豪雨による浸水被害と、台風第19号から一連の災害で住宅に大きな被害を受けた方も多く、心を痛めております。

修復前に必要な点検

住宅が雨にさらされ住宅の中には、解体を余儀なくされた住宅もあるでしょう。屋根まで飛ばされなくても、雨漏りが激しかった住宅など、甚大な被害を受けた住宅が多くあると聞きます。一見、解体までは必要ないと思われても、住宅を修復する前には念入りな点検をしなければなりません。

特に屋根、壁、床の断熱材が水に濡れたいないか、必ず確認して下さい。断熱材が濡れたままであれば、断熱効果が無くなっていますし、近い将来カビの発生やダニの大量繁殖さらには、構造材の不朽により地震時には建物が崩壊する可能性もある。

現在、ほぼ全ての住宅に使用される石膏ボード(プラスターボード)は、水濡れにとても弱く、一般社団法人石膏ボード工業会では、施行中でも製品が吸湿するだけでも一時的な強度低下を招く恐れがあると指摘しており、特に「漏水・雨漏、洪水等の自然災害などにより水に濡れて給水した場合には、剥落の恐れがありますので、必ず張替えを行なってください」と注意を促している。

残念ながら今回の災害により、天井・壁に使用されている石膏ボードが、漏水・雨漏、洪水などの浸水で濡れてしまった部分があれば、全て張替えなければならず、同時に石膏ボードを剥がした時点で断熱材も一緒に点検し、濡れているようであれば、断熱材の種類を問わず、断熱材を外して壁面内部と断熱材の様子を確認しなければなりません。もし浸水より壁面内部が汚れていた場合は、消毒をした上で十分に乾燥しなければなりません。

【図解】目に触れない点検箇所

漏水・雨漏れ、浸水など自然災害に合われてしまった後、室内が明らかに被害を受けてしまった住宅では、目視による確認は容易だと思いますが、一見なんでもなく、変化がなかったように見えたとしても、目に見えない箇所の点検をされておくことが、建物の安全性や耐久性を維持する上で欠かせません。

【図解】漏水後の住宅点検箇所

必須「断熱材の確認」

被害に遭われてしまった方には、大変にお気の毒な話になるが、屋根が吹き飛び、住宅内部が一度雨ざらしになると、雨水がどこまで侵入してしまったか、各部位の確認が必要であり、その点検を怠ると住宅の寿命に大きく関わる問題でもある。

住宅の天井、壁、床に使用される断熱材は必ず点検してください。特に1970年頃から北海道で使用され始め、1985年頃から全国に普及し、現在80%の住宅にも採用されているといわれるグラスウール断熱材と、1938年に工業化されたロックウール断熱材は、非常に乾きが悪くというかほとんど乾くことがなく、一度水に濡れるとその自重で変形を起こしてしまうので、断熱効果が無くなると考えた方が良く、全て交換しなければならない。

断熱材に含まれた水は、後々建物に大きな悪影響を与える可能性が高いので災害後の住宅点検では、必須項目の一つである。

さらに耐力壁に構造用面材が使用されているなら、耐力面材の種類にもよるが、水に濡れた耐力面材は、強度を無くし地震時に建物の崩壊を起こす可能性も高くなるため、耐力面材の種類と対策も見落としてはならない。

漏水時の点検箇所

住宅の断熱材は、天井もしくは屋根と壁、床に敷設されています。屋根が損傷を受け漏水した場合には、天井もしくは屋根、壁床の各断熱材が水に浸かっている可能性が高く、各断熱材の点検が必要になる。

床上浸水時

また床上浸水した場合には、床断熱材はもちろん壁断熱材の点検も必要。断熱材の中には、グラスウールのように水を吸い上げる性質を持つものもあるので、思わぬ高さまで濡れている場合もある。

床下浸水

床下浸水であっても、床下断熱材や壁断熱材の点検を決して怠ってはいけない。

浸水時の点検方法を詳しく >


断熱材の点検方法

最初に壁の温度差で確かめる

暖冷房機器や空調設備を作動していると、室内の上下間で温度差が生じている場合があるので、空調機器類は止め1時間ほど経過した後に確認。

断熱材の種類によっても異なりますが、グラスウールやロックウールなど、綿状の断熱材が水を含むと、自重による沈み込みや、断熱性能が失われ壁の表面温度低下などが発生する可能性が高く同一壁面、特に外壁面に温度差が生じます。
お子さんの額に手を当て体温を図るように、壁(外壁面)の上下や左右で表面温度の差がないか触れてみる。

明らかに差があるようであれば、その部分の断熱材は、残念ながら漏水や浸水により被害を受けている可能性が高い。

手で触れ、熱があると感じる時には、体温計で体温を図るように、壁面を触るだけでは不安であれば、赤外線サーモグラフィーカメラを利用する手もある。最近は、赤外線サーモグラフィーカメラの中には、性能のほどは不明ではあるが、5000円程の製品やスマートフォンに取り付ける商品もある。またインターネットでレンタルもできる。機器を利用すれば、天井裏や床下に潜り込む必要もなく、住宅を傷つけることもなく確認できるので、多少の費用がかかったとしても、断熱材に何らかの災害を受けていないか確認するには、とても良い手段だ。

特に、窓ガラスが割れ内部に雨水が入り込んだり、多少の雨漏りなどで掃除さえすれば、表面上は以前と変わらず問題がないように思われる住宅であっても、断熱性能の低下や、水分で建物の腐朽し住宅の耐力性能が劣化する恐れなど、将来のことを考え、断熱材を確認しておくには、安全で手軽な方法といっても良いだろう。

天井点検口から確認する

天井(屋根)・壁断熱材が濡れているかいないか確認するには、雨漏りした場所の天井(屋根)断熱材および壁断熱材を直接触って確認する方法が間違いないです。しかし、その近くに天井点検口がなければ天井裏を伝わってその部分まで行かなければならず、慣れた者でなければ危険ですので、ご注意ください。また、天井点検口はアルミ枠を使用したものばかりではなく、押入れの天井を点検口として使用するため、天井を持ち上げられるように施工した住宅もあります。

浴室がユニットバスであれば、その天井点検口から点検することもできます。ただし、ユニットバスの床上に脚立など置くと非常に滑りやすく危険です。必ず、どなたかに脚立を押えていただいた上で、点検して下さい。

基礎部分で判断

外壁漏水の確認

余程ひどく雨漏りしてしまったなら、外部の基礎部分でも確認できる可能性があります。ある程度基礎が乾いた状態でも一部分だけ濡れていたり、雨染みがついている箇所があれば、その外壁面の断熱材は、水を含んでいる可能性が高いと判断できます。

床下から壁断熱材を確認をする

壁断熱材の床下確認位置

床下点検口や床下収納があれば、床下に潜り外壁面の断熱材を触って確認します。台所の床下収納であれば、外壁に近い場所に設置してあるのではないでしょうか。多くの住宅は、床タルキと外壁の土台が直行する箇所で、床タルキの間に断熱材が露出している場所があるので、その部分が断熱材の確認をしやすい。

コンセント・照明スイッチを外して確認する

コンセント・照明スイッチを取り外し、断熱材の水濡れを確認する
必ずブレーカーは落として作業をする

雨漏り箇所の近くにコンセントや照明スイッチがあれば、プレートを取り外し壁内部の確認をすることもできます。ただし感電の危険性もありますので、必ずブレーカーは下ろして作業をしなければなりません。

確認の手順

ブレーカーを下ろしたことを確認し次の順序で進める。

1 最初に表面のプレートをマイナスドライバーで取り外す。
プラスチック製のプレートは、先端の幅が約5mmほどのマイナス度ラーバーをプレートと壁の間に差し込み外す。外れにくい時には、ドレイバーと壁面の間に割り箸などを挟み、持ち手部分を壁の方向に押し付けるようにして外す。金属プレートは、表面のビスをドレイバーで緩める。

2 プレート固定用枠を取り外す
プレートを外すと、プレートを固定していた枠が現れます。上下にある小さなネジを緩めます。ビス頭が小さいので、ドレイバーは先端が細めのものが作業はしやすい。

3 コンセントを固定する金属枠を取り外す。
上下どちらからでも構いませんが、2本目のネジを緩める時には、コンセントを押さえながら緩めると作業がしやすい。

4 コンセントを引き出す
金属の枠に固定されているコンセントを配線と共にゆっくりと手前に引出します。引き出しにくい時には、配線の方向を確認し、配線方向と逆の方向に引き出す。

5 コンセントボックスの取付けネジを緩める
ボックスを指で押さえながら、左右どちらかにボックスを固定しているネジを緩める。

6 ネジがぐらつかないか確認する。
ネジ頭を15mmほど出るまで緩め、ボックスを押さえたまま、ネジがぐらつかないか確認する。もし、ネジが抜けてしまったら、5mmほど戻す。ボックスを完全に外してしまうと、取り付けが難しいので十分注意する。

7 断熱材を確認する
ボックス取付箇所の反対側を外壁側に押し込み、その隙間から断熱材を確認する。壁は施工法と使用素材によっても異なるが、約9から30mmほどの厚さがあり指でも確認可。壁内部には釘やタッカーなどが打ちつけられている場合もあるので、十分注意しながらゆっくりと確認すること。表面にフィルムがあっても、つまんだ感じで水分を含んでいるか、いないか判断できると思うが、確証が持てないようであれば、カッターナイフで少し切れ目を入れ、断熱材本体の確認をする。

ネジの長さが短く、ボックスと壁面の隙間が十分でないため、手で直接の確認ができないようであれば、割り箸にティッシュペーパーやペーパータオルを挟みこみ巻き付け、テープで固定したものを作り、差し込み確かめます。

注意:ドライバーとネジ頭のサイズが合っているか確かめする

使用するドラーバーとネジ頭のサイズが合わないと、ネジ頭の溝を潰し回すことができなくなります。ドライバーとネジ頭の溝の確認は溝部分にドライバーを当て、ネジが回らない程度に左右に回し、ぐらつきがないか確かめます。


ねじ回し(ドライバー)とねじ

プラスドライバーとネジのサイズ

建築で使われる木ネジのほとんどは、NO2もしくはNO3のプラスドライーバーが適する。しかし、強く締め付けてあるネジは、気をつけて緩めなければ、頭を潰してしまうので注意が必要。特にコンセントボックスを固定しているネジの頭が潰れると、再度の締め付けがとても厄介になるので十分に注意したい。


床仕上げ材と下地材の間

漏水点検「床仕上げと下張り材の間」

床下地材は、合板が使用していることが多く、カーペットタイルやクッションフロア仕上げであれば、全面を接着剤で固定しているため、下地材と仕上げ材の間に水が染み込んでいる量は少ないと思われる。絨毯仕上げであれば絨毯そのものが被害にあっているので、再使用は難しいでしょう。

最近は、無垢材のフローリング仕上げであっても、捨て張りとも呼ばれる床の下地材を張った上に、仕上げ材が貼られている場合です。床全面に接着剤を塗りフローリングを張る施工をされる住宅会社もあれば、一部分だけに接着剤を塗り仕上げをする会社もあります。下地材と仕上げ材の間に水が染み込んでいると、合板もフローリングも接着剤を使用しており、乾くまでに長時間必要になりますので、床下点検口や床下収納があれば、枠を取り外し床材の小口部分に水分がないか確認しておく。

無垢材のフローリング仕上げの床で、以前よりなんだか暖かみを感じなくなったとか、床が冷たく感じるようになったなどの変化があれば、床仕上げ材と下地材の間に水が溜まっている可能性も否定できない。


耐力壁の点検

耐力壁の種類と点検

耐力壁の種類

地震や暴風に住宅が耐えうるように配置される耐力壁は、主に木材や金属を使用する筋違工法と、合板やボードを使用する耐力面材の2通りがある。筋違いは、構造体に材を斜めに入れ外力に対し抵抗し、耐力面材は、合板をはじめとする面材を構造体に打ち付け、面的に耐力を得る工法である。

耐力面材に使用される建材は大きく合板とその他ボード系に分けられ、国内で主に製造販売されるボード系の耐力面材をその主な主原料に分類すると下記の通りとなる。

・構造用合板
・石膏ボード板系
・火山性ガラス質複層板系
・ケイ酸カルシウム板系
・繊維板(MDF)系
・OSB(パーティクルボード)板系 

耐力面材の詳細はこちら >

耐力面材の種類と特徴

構造用合板

現在は、信用樹を使用した合板が主流であるが、ラワン製の構造用合板も製造されている。合板は、丸太をカツラ剥きにした奇数枚の薄板を接着剤で張り合わせた板。針葉樹構造用合板の表面は、木質そのもので木目が強く見てとれる。

画像参照:株式会社キーテック


石膏ボード板系

プラスターボードとも呼ばれる石膏ボードは、石膏(プラスター)を主成分とした素材を板状に成形し、両面に特殊な紙で包んだ材料。表面の紙は着色した紙で、茶系もしくは淡いグレー系の色を使用している。

写真提供:チヨダウーテ株式会社

主な構造用石膏ボード商品

■ 吉野石膏株式会社「タイガーEXボード9.5mm」
■ チヨダウーテ株式会社 「耐力ボード」


火山性ガラス質複層板(VSボード)

主原料としてシラスや白土、軽石などの火山性ガラス質たい積物の粒体及びそれらの発泡体をグラスウール、ロックウールなどの無機繊維とフライアッシュ,炭酸カルシウムなどの無機粉体とを複合させたシート状の素材を,フェノール樹脂や熱可塑性樹脂、澱(でん)粉などで層状に成形した板。表面の色は何種類かあるが、主に耐力面材として使用される製品は茶系をしている。

写真提供:大建工業株式会社

主な構造用火山性ガラス質複層板製品

■ 大建工業株式会社 「ダイライトMS」


ケイ酸カルシウム板系

ケイ酸質原料と石灰質原料に水を加え、高温高圧で攪拌することにより水熱合祭反応を行ったケイ酸カルシウム水和物に補強繊維やその他の混和物を混入してプレス成型し、乾燥したものを切断して製造した材料。淡いセメント色をしており、表面は荒く、よく見ると小さな穴が無数に空いている。

写真提供:アイカ工業株式会社

主な構造用ケイ酸カルシウム板製品

■ アイカ工業株式会社 「モイスTM耐力面材」
■ ニチハ株式会社 『あんしん』


構造用MDF

木材の小片または繊維化し、空気流により成形を行い、合成樹脂接着剤を添加後、高湿、高圧で圧締される。株式会社ノダが製造する構造用MDF「ハイベストウッド」は、24時間水に浸漬しても釘を接合する力は低下しないと、公表している。表面全体は、木質系の茶色で火山性ガラス質複層板と似ているが、注視すると色の違う細かな木の繊維等が見える。

写真提供:株式会社ノダ

主な構造用MDF製品

■ 株式会社ノダ 「構造用ハイベストウッド」
■ ホクシン株式会社 「構造用スターウッド」
■ 日本ノボパン工業株式会社 「novopan STP Ⅱ」


OSB

木材を短冊状に切削し乾燥させ、接着剤を塗布し繊維方向を揃えて接着させた薄板を直行させ3層から5層を積層させて熱圧にて積層ボードに成形し切断する。表面には、様々な色をした短冊状に切削した木片が見える。成形後に切断するため、材が長時間の浸漬すると、木片小口から水を吸収し膨張による接着剤の剥離をおこす可能性が高いと考えられる。

画像提供:APAエンジニアード・ウッド協会


耐力壁は、震災時や暴風時に住宅を崩壊や倒壊を防ぎ、私たちの生命を災害から守る非常に重要な構造であることは、皆さんもよくご存知の通り。漏水・浸水被害を受けて耐力壁の性能が低下すると、災害時に生命の危険にまでおよぶ可能性が高くなる。漏水や浸水被害を受け、表面的な被害だけでなく、将来のためにも断熱材と共に耐力壁の点検と確認は欠かせない。

耐力壁の種類を確認する

建築確認新書で確認する

お手元に建築確認申請書があれば、耐力壁の種類が記載されています、これまで同申請書を見た記憶がない方は、登記簿謄本と一緒になっていないかご確認する。

住宅会社へ問い合わせる

新築された場合は、住宅会社をよくご存知でしょうから、住宅会社へ耐力壁の仕様を問い合わせ、確認することも可能ですが、建て売りや中古物件を購入された場合は、売買の仲介をされた不動産会社へ問い合わせ、残念ながら明確な返答を得られない場合は、ご自身で確認することになる。

目視による確認

漏水・浸水により、内装を取り外さなければならない住宅では、内装壁を外した後、筋違いが入っているようであれば、断熱材の上からでも押すと斜めに入っている筋違いが確認できる。耐力面材を使用していれば斜めの材は確認できないので、断熱材を少しばかり横へ移動し耐力壁の種類を確認する。

建物には耐力壁として設置していない壁もあるので、何ヶ所かの壁を念入りに確認する必要がある。また、基本的に耐力壁は建物の四隅に配置することが多く、できれば四隅の壁は重要な確認場所である。


耐力壁の種類別対策

筋違い工法はそのまま乾燥と消毒

筋違い工法であれば、木材の十分な乾燥と消毒により、そのまま使用しても問題はないと考えらるが、念のため接続金具や釘、ネジに錆が発生していないか確認が必要である。

合板の体力性能は十分な乾燥により約9割復帰する

この中で、酷構造用合板の体力性能は、湿潤状態のものは乾燥状態と比べておよそ半分の性能となるが、十分な乾燥を施すと当初の約9割に回復するとの報告があり、構造用合板を使用した住宅では、透湿防水紙と構造用合板間の水分量および、打ち付けてある釘の錆を確認した上で、十分な乾燥と消毒を行えば、そのまま修復工事を行っても問題はなさそうである。

ボード系体力面材の耐力復帰は期待しないほうが良い

残念なことにその他の耐力面材は、浸漬後に乾燥させれば、構造用合板のように当初の9割程の性能を復帰で切るか否か明確にされていないのが現状である。メーカーによっては、多少の雨漏れでも耐力性能の劣化は無いと品質の保証をしている製品もあるが、浸漬後にも乾燥により、耐力が復帰すると明確にしている製品は今のところ無い。

ただし、繊維板(MDF)系の耐力面材は、24時間の浸漬試験や、屋外で10年間以上の暴露試験も行われており、耐力性能の低下はないとの試験結果も報告されている。


瓦屋根の修理と暴風対策

今回の暴風による屋根の被害は、屋根垂木ごと飛ばされた被害と、瓦などの屋根材が飛ばされた被害に分けられる。

屋根ごと飛ばされた住宅は、屋根垂木と軒桁の接合力不足であり、施工状の問題であったと考えられる。現在ではこの接合力を高めるために、鞍(くら)金具や、ひねり金具などの補強金具を取り付けるが、以前は釘だけを使用した住宅も少なくなかった。金物があまり流通していなかった頃、屋根垂木は、軒桁に斜め方向から交差するように2本の釘を打ち付けていた。しかし住宅会社の中には施工を簡便化し、1本の釘を垂木に直角に打ち付ていた業者もあったようで、このように接合された住宅の屋根が被害にあったものと思われる。

今回の災害では、罹災した住宅は築年数に関係なく、屋根瓦の住宅が多く被害に遭い、瓦葺きの屋根は風に弱く、スレート葺の家は被害が少なかったと伝えていた記事を目にした。今回の暴風による屋根の災害には、屋根垂木ごと飛ばされた被害と、瓦などの屋根材が飛ばされた被害に分けられる。

屋根垂木ごと飛ばされてしまった住宅を修理する場合、屋根材を何にするか考えどころである。

屋根の種類は何が良い?

木造住宅の屋根に使用する素材としては、大きく分けて窯業系と自然系、化学系、金属系とその他に分けらるが、一般的には粘土系とセメント系の窯業系、シングルなどの化学系、鋼板などの金属系の3種類が主流。

その中で、最もメンテナンス費用が安く、ほとんどメンテナンス フリーとも言っても良いのは、粘土瓦しかない。粘土瓦以外の素材であれば、10年から15年に一度、塗装などのメンテナンスが必要で、30年もすれば全面的な屋根の葺き替えが必要になる場合もある。

今回の暴風で被害に遭われ、屋根の修理をされる方は、多分「とにかく風に強い屋根を」と、お考えでしょうが、将来のメンテナンス費用や耐久性も一緒に考えていただきたい。

屋根瓦の実力

今回の災害では、罹災した住宅は築年数に関係なく、屋根瓦の住宅が多く被害に遭い、瓦葺きの屋根は風に弱く、スレート葺の家は被害が少なかったと伝えていた記事を目にした。

確かに、以前まで瓦の施工は、全数の瓦を屋根材に固定することなく、数枚に一枚しか固定されていなかった。これは手抜き工事と言うより、瓦業者の中で古くからの慣習になっており、それが当たり前であり、今回の災害は、瓦そのものというより、瓦屋根の施工方法に問題があったといえる。

平成13年に一般社団法人 全日本革工事業連盟より「瓦屋根標準設計・施工ガイドライン」が発行され、平成24年に一部追加され、現在ではその施工要項を遵守するよう求めいる。

さらに、瓦本体の形状にも工夫が施された防災瓦を使用することで、製品と施工の両面から瓦屋根の耐風性能・耐震性能は、格段と向上している。


瓦の原料

瓦の素材は粘土とセメントがありますが、セメント瓦はメンテナンス費用の発生が気になるので、やはり皆さんにお勧めできるのは、1000度から1250度の高温で焼かれる粘土瓦になる。

瓦の形

J形(和形瓦)

最も慣れ親しんだ波状の瓦で和形瓦とも呼ばれ、多くの住宅に用いられている。四季がはっきりしており、灼熱の日もあれば積雪もある、さらに多湿多雨の国内では、利にかなった形状といえよう。

F形(平板瓦)

平らな形状から洋風の住宅にも使用しやすい。ただ凹凸が少なく、雨水が内部に侵入し易く積雪地では、瓦の裏面にJ形のような空気槽がなく、結露が溜まりやすいようである。

S形(スペイン瓦)

欧州、特にスペインでよく見られるオレンジ色をした丸型が特徴のスパニッシュ瓦は、上丸瓦と下丸瓦の2種類を交互に組み合わせており、この形状に施工性とコストパフォーマンスを向上させ1枚に改良した瓦。

瓦の形と普通瓦・防災瓦の違い

防災瓦

国内では、現在「J形」「F形」「S形」いずれの形にも、それぞれ防災瓦が揃っている。防災瓦は風が入り込みやすい頭部分(瓦の先端、葺いたときに傷下になる部分)が風で浮き上がりを、ビスなどで固定する下段の尻部分で浮き上がりを防止する設計になっている。

現存する日本最古の瓦

ちなみに、現存する最古の瓦で葺いてある奈良県元興寺(がんごうじ)の屋根は、本瓦葺きと呼ばれ、上丸瓦と下丸瓦を組み合わせおりスパニッシュ瓦とは、上丸瓦の間隔が異なるが酷似している。また中国の瓦も同じ形状をしているところから、瓦のルーツは同じなのか、あるいは人の考えることは同じなのかもしれない。J形瓦は、江戸時代にS形瓦と同じく本瓦葺を一枚に改良したもの。

風速46m/s以上に耐える施工法

J形瓦

緊結:全数釘打ち+7形釘補強3枚毎
釘径(mm):2.7×55
確認耐力(N/㎡):2553
桟木:杉材 15mm×30mm
野地板:構造用合板12mm

J形防災瓦

緊結:全数釘打ち
釘径(mm):2.7×55
確認耐力(N/㎡):2553
桟木:杉材 15mm×30mm
野地板:構造用合板12mm

J形防災瓦

緊結:全数ねじ留め
ねじ径(mm):3.8×45
確認耐力(N/㎡):3742
桟木:杉材 15mm×30mm
野地板:構造用合板12mm

F形瓦

緊結:全数釘打ち+7形釘補強3枚毎
釘径(mm):2.7×55
確認耐力(N/㎡):2273
桟木:杉材 15mm×21mm
野地板:構造用合板12mm

F形防災瓦

緊結:全数釘打ち
釘径(mm):2.7×65
確認耐力(N/㎡):2829
桟木:杉材 15mm×30mm
野地板:構造用合板12mm

S形瓦

緊結:全数釘打ち
釘径(mm):2.4×65
確認耐力(N/㎡):2380
桟木:杉材 15mm×21mm
野地板:構造用合板12mm

イラスト:「瓦屋根標準設計・施工ガイドライン」を参考に作図

その他基準風速36m/s以上および役瓦の仕様は下記を参照

一般社団法人 全日本瓦工事業連盟
「瓦屋根標準設計・施工ガイドライン」平成13年8月13日発行
                  平成24年5月15日追加
http://www.yane.or.jp/manual/guideline.pdf

瓦、特に高温で焼成される粘土瓦は、優れた建築材料であり国内はもとより、欧米や中国でも古くから使われてきた。今回の災害で特に瓦屋根は、甚大な被害を受けた住宅も多く、一見すると「瓦屋根が暴風に弱いのか?」との印象を受けた方も多いでしょう。しかし現実は、建築に使われる屋根材の中でも風雨にさらされ、夏期の太陽光、冬季の積雪にも長年耐えうる瓦は、非常に優れており、その耐候性や耐久性、強度により、ほとんどメンテナンスを必要としない。このような素材は、タニ見ることは出来ず、その施工方法さえ間違わなければ、住宅と私たちの暮らしを長年守り続ける。

最後に

改めて今回被害に遭われて方々にお見舞い申し上げます。

被災された住宅の点検箇所とその点検法を、なるべく簡素に要点だけを取り上げたつもりでいます。ご自身でも自宅がどこまで被害を受けているのか、あるいは、どこまでの修理が必要なのか、などを考える参考になればありがたいです。

今回の災害では、表面から見える箇所だけの修理では、元の住宅に回復できない住宅も多いように見受けられます。建築の内部は、素人ではなかなか判断できず、将来を考えると必ず点検しておかなければならない箇所も多くあります。

修理依頼業者の選定にあたり、海外から見ると平和な国内ですが、このような災害時には、心ない業者が金銭目的だけで近づいてくる者もおり、二次被害の可能性もありますので十分にご注意ください。

被災状況をお教えいただければ、当方でも何かしらのお役に立てる可能性もありますので、お気軽にご相談ください。

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関連記事

令和元年12月19日追記

茨城県 大洗 原子炉冷却塔倒壊

暴風による建物損壊で、古い建築物に使われていたアスベストが飛散するのではないかと、危惧していたところ、国立研究開発法人日本原子力開発機構 大洗研究所(茨城県)に設置されていた材料試験炉二次冷却系統の冷却塔が、平成30年9月9日午前6時頃から崩壊が確認された午前7時40分の間に崩壊したとの報告を目にした。
報告書によると「午前7時前後には地上高10mで瞬間最大風速30.9m/sが記録されており、この強風で崩壊したものと考えられる」と記されている。

同建築物は木造で、外壁にはアスベストを含有した波型スレートが使用されていたが、今回の倒壊で飛散したアスベスト量は微量で、人体への影響は少ないと考えられるとの報告であったことから、先ずは一安心であった。

写真提供:日本原子力機構報告書より 倒壊前平成30年2月16日撮影

写真提供:日本原子力機構報告書より 倒壊後平成30年9月9日撮影

ところが、同年12月18日の共同通信によると、9月9日の冷却塔の崩壊は、木造建築物の筋違い部分で腐食が進行しており、この腐食が原因で耐力低下を起こしていたと伝えている。

参照:共同通信社 https://this.kiji.is/579882880402867297

実は、この写真に違和感を覚えるのです。

まず、記事の掲載が12月18日ですが、写真提供が同機構で撮影日もしくは提供日が10月19日となっており、冷却塔倒壊後の日付であることから、倒壊した冷却塔以外の建物である可能性。倒壊した建物の写真であれば、腐食部分および木材の亀裂が入っていたにも関わらず放置されていた可能性があること。

そもそも、木材に複数の釘を打つ際は千鳥に打つのが常識、ましてや直径20mm以上の貫通孔を50mmほどの間隔で直線状に複数空けると、木材に亀裂が入って当たり前、同機構は腐食による耐力不足としているが、実際には、木材の亀裂による耐力低下でなかったかと考えられる。

そして、このボルト用の貫通孔がなぜ2個あるのか不思議でもある。この写真が倒壊した冷却塔であれば、倒壊により筋違いが外れ、ボルトの位置がずれているとも考えられるが、後に写っている柱は垂直であり、倒壊後の外観写真から判断すると、この腐食した筋違いを撮影した冷却塔は崩壊していないと思われる。とすると貫通孔は3個あったのか?しかし、腐食部分の形状と筋違いを固定していたプレートの形状が酷似しており、プレートは腐食部分と接していた可能性が高いことから考えると、先の震災時に、筋違がボルトから外れていた可能性も否定できなくなる。

もう少し全体の写真がなければ、正しい判断はできないが、この筋違に空けられた上の貫通孔は、必要だったのだろうか、左後方の柱にも基礎との緊結部分上に貫通孔と思われる黒い丸が写っており、この貫通孔は必要なかったと思われる。
今回、腐食部分は金属に隠れており発見ができなかったと、同機構は説明している、確かに腐食部分は、確認できなかったかもしれないが、不要な貫通孔があったこと、そしてそこに亀裂が入っていたことは十分に認識できたと思われる。

今回、危惧されていたアスベスト飛散による健康被害は、ほぼ考えられないとの結果は好意的に受け止めたとしても、風速30m/sくらいの風で建物が倒壊するなど不思議であり、先の東日本大震災で損傷を受けたにも関わらず、そのままにしている建物が他にもあるのではないかと懸念される。

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