もくじ
厄介な浴室のカビ
カビ数を減らす
浴室のカビ種
浴室のカビ対策
・カビ繁殖地とアジト
・目地や扉のパッキン
・アメニティーと備品
カビのアジト(巣窟)
・浴室扉の換気口・通気口
・排水口
・天井扇
・鏡の裏
・カウンターや収納の裏と底
・照明器具
編集後記
厄介な浴室のカビ
浴室は、高温多湿で部屋全体に石鹸カスや垢といったカビの好物が付着し、カビにとってはローマ時代の宴会か、清朝時代から始まったといわれる中国の満漢全席、酒池肉林の世界に違いない。
真菌学の先生は、こんな楽園からカビを追い出すために、入浴後すぐに換気するとか、壁や天井に付着した水分を拭き取る、さらに石鹸カスや垢などの汚れを徹底的に落とすなど、入浴毎の大掃除を真菌学の立場で推奨する。
真菌学の立場は尊重しなければならないが、暮らしに大きな負担を強いる毎回の浴室大掃除は、建築の立場から考えると心が痛む。
毎日、浴室の大掃除ができますか?私にはとても無理な注文。仕事で疲れて帰宅し、ほっと一息、
「さ〜っ!湯上がりの麦酒・ビール・Beer!」
「うー腹へった、さっとシャワーを浴び晩飯つくるか」
「家事は全て片付けた!これからが癒しの時間」
なんて時に浴室の大掃除なんかできますかっ!
かといって、浴室がカビに汚染されていれば、身体を綺麗にしているのか、もしかしたら、カビを身体中にまぶしに入っているのか大きな疑問が残る。
「浴室の掃除は、三度の飯より好きだ!」
「毎日、浴室掃除をしなければ生きていけない!」
「人生は、浴室の掃除にあり!」
などと、本心から掃除好きで、頼もしい方は意外と少なく、
「家庭平和のため好きなふりをしておる」
「家族の健康のためやむなく」
「好きではないが、・・・(とても書けない)」
と、いうところが本音ではないだろうか。
かといって、カビ取り剤を多用すれば、健康被害をもたらせる可能性が高くなる。仮にカビと人間が、防カビ剤を介して戦ったとすれば、カビの圧勝は火を見るより明らか、カビは数年で薬剤に対し耐性を持ってしまうからだ。その間に人間は、薬剤による健康被害を発症するに違いない。
薬剤メーカーが「パワーアップ」とか「さらに強力」「最強の」などと強調するのは、カビの耐性を見抜き、使用者の健康よりさらなる売り上げ向上のためではないだろうかと疑いたくもなる。
カビ数を減らす
カビが発生するのは、カビがそこにあるからで、大量に繁殖するのは、そこに常在するカビや胞子が豊富に存在するからである。
しかし、カビは、航空機のタンク内やカメラのレンズ内にも存在するように、この世の中、カビがない場所などあるわけもなく、中でも浴室はカビにとって楽園であることに間違いはないのだが、問題はその量であり、既存のカビが多ければ多いほどカビの繁殖量は多くなるため、浴室に既存するカビの量を減らさなければならない。
浴室のカビで困っている方の中には、天井はアルコールで拭き、入浴後の掃除や換気にも気を使っているにもかかわらず、いつの間にかアメニティボトルの底や水栓の周りにヌメッとした赤カビや、排水口や目地部分にはアメーバらしき黒カビは繁殖していることはないだろうか。
今はピカピカのお風呂、カビなんて無縁などと油断していても、カビは必ずお風呂に存在し、いつの間にか大繁殖の被害に見舞われるかもしれず、決して日頃の点検を疎かにしてはいけない。
カビ数を減らす効果は、例えば、キャベツやレタスなど結球野菜の茎が茶色に変色することに似ている。結球野菜の腐りは、腐食させる細菌が多く付着しているからであり、腐朽菌を極力減らしておけば、腐朽を遅らせることができる。
結球野菜を長持ちさせるには、腐朽菌を減らしておくことだ。買ってきた野菜の人が触ったと思われる葉は取り去り、茎部分は包丁で切り落とした後、水道水でよく洗う。水道水には残留塩素が含まれてるから、殺菌効果も期待できるのだ。人によれば残留塩素が害を及ぼす場合もあるが、野菜の洗浄には役立つ。水道水で十分に洗った野菜は、新しい袋に入れ冷蔵庫に保存する。
私の経験上1〜2回では、細菌が十分に洗い流せていないようで茶色く変色するが、大体3回ほど繰り返し、毎回新しい袋に保存すれば、その後は1週間位、茎が変色することは皆無である。ちなみに冷蔵庫は「ion Plasmacluster」
浴室のカビ種
浴室に繁殖するといわれる主なカビは、下記の通り。
■ アルテルナリア|俗名:ススカビ
色:黒褐色
■ フザリウム|俗名:アカカビ
色:灰黄色、橙色、赤橙色、紫赤色、ピンク色、淡クリーム色、ライラック色
■ アウレオバシジウム|俗名:黒色酵母/黒酵母
色:淡桃色(若い集落)~黒褐色(成熟)
■ クラドスポリウム|俗名:クロカビ/クロカワカビ
色:濃オリーブ色、黒色
■ ケトミウム|俗名:ケタマカビ
色:オリーブ褐色~暗褐色
■ ペニシリウム|俗名:アオカビ
色:表面|青灰緑色、鈍緑色~青緑色、暗緑色、暗黄緑色、黄色、白
カビの特性をより詳しく知りたい方はこちらへ
住環境アレルゲン|カビ・真菌
よく見かけるのは、排水溝まわりやシーリング、タイル目地などに繁殖している黒いカビ、水栓や浴槽上部に広がる艶やかなピンク色や、シャンプーなどのボトル底部の妖しいヌメリではないだろうか。
浴室のカビ対策
浴室のカビ対策は下記の2点。
1)浴室内にある不要なものを全て取り除く
2)カビの巣窟となっている場所を探し出す
カビ繁殖地とアジト
浴室内のカビ繁殖地は、目地や扉のパッキン、浴槽上部など簡単に目視できる場所と、シャンプーボトルの底や椅子、風呂桶など持ち上げて目視できる所に加え、ここが最も見逃しがちなのだが、取り外し可能な鏡や棚、排水口内部、換気扇内部そして、扉に付いている吸気ガラリ内部などである。これらは普段、直接見ることができない場所で、まさにカビのアジトとして最適なねぐらであり、常に検閲が必要な場所である。
目地や扉のパッキン
カビで黒ずんだ目地や扉のパッキン、浴槽などの上面にロゼワインでもこぼしたかと思われる淡いピンク色の滴などは、気付きやすく、その気になれば直ぐに除去が可能だ。除去方法は、カビが付着した素材により異なるのだが、タイル 目地やシーリング(コーキング)、ゴムパッキンのように内部まで浸透しているカビには、薬剤の使用が無難であろう。
タイル目地の場合、下手に表面を擦って除去すると、目地表面が荒れ余計にカビが付着しやすくなるため注意したい。シーリングであれば、防カビ性のある製品と打ち替える方法もあるが、ある程度トレーニングが必要であり、防カビ性のシーリング材といってもその性能保証には期限があると考えておく方が良い。カビ部分表面に打ち増しは厳禁、既存のシーリングは完全に取り除いてから打ち直す。
扉のパッキン部分も、カビが発生しやすい箇所である。パッキンの形状は、幾種類かあるので、目に見えない部分や裏面などもよく注意して見る必要がある。カビの除去は、パッキンの交換もしくは、薬剤使用になる。薬剤を使用する場合は、目線の上にまで散布する必要があるので、顔や目に無カビ剤が入らないように防護眼鏡やマスク、手袋などで十分に防護する必要がある。また、防カビ剤は飛散しにくい泡タイプが、扱いやすいようだ。
アメニティーと備品は脱衣室に置く
浴室内にある不要なものとはまず、シャンプーやボディソープなどのアメニティー類、そしてスポンジ、桶、椅子などの備品類などである。
そんな無茶な!アメニティーグッズや椅子がないと風呂に入れないと仰る方もいるでしょう。いやいや、お風呂に入る時だけ持ち込み、普段は浴室から出しておくことが必要なのです。そうすれば、浴室内の棚やフックなど不要な備品も少なくなり、カビが繁殖する場所を減らすことにもつながる。
また、浴室の備品が多くあると、掃除に手間取りとても面倒である。ある家庭の浴室を見に行くと、ボトルが10本以上置いてあり???、家族それぞれ、特にお年頃のお嬢様方には、香りの好みが違うようでマイボトルを置いてあるとのことで、浴室はボトルで埋まり、私には、カビを養殖しているのか、養っているとしか見えないお宅もあった。
ボトルの底部分が、なんだかヌルヌルしていることに気づく方は多いだろう、そのヌルヌルは、カビである可能性も高く、ボトルをプラスチック性の小物入れに入れてあれば、ボトル底に加えプラスチック容器にもカビが繁殖し、カビの量は2倍にも3倍にもなる。
桶や椅子の底部分や浴槽の蓋が黒くなっていれば、それは間違いなくカビです。すぐに取り除き、浴室から出し乾かす。
基本的に、浴室内にアメニティー類を置きっぱなしにしてはいけません。浴室出入り口近くにボトル類が乾きやすいよう、メッシュ棚あるいはワイヤーラックを設置し、アメニティーや備品類を置くようにする。
カビのアジト(巣窟)
カビのアジト(巣窟)とは、目には見えないが、カビが大量に発生している場所で、一般的な浴室では、浴室戸の換気口やスリット、天井換気扇内部、鏡の裏面、排水口などが怪しく、定期的な点検が必要な箇所である。
中でも、浴室戸の換気口やスリット部分には、埃の中にカビが大量に発生している場合が多く最重要かつ要注意箇所だ。
浴室戸の換気ガラリ内部に埃などが溜まり、そこにカビが繁殖していれば間違いなくカビのアジトとなっている可能性は高く徹底的なガサ入れ、いや除去が必要となる。
浴室戸の換気口・通気口
名称としては「換気口」「通気口」の他「通風口」「吸気口」「ガラリ」などと呼ばれ、基本的には、扉や窓を締め切っていても、換気が出来るように取り付けてある。扉は衣服を脱ぐ洗面脱衣室側にあり埃が舞うところ、この換気口にはホコリが付着しやすく、適度な湿気がカビの発生に適した場所となるため、定期的に清掃が欠かせない場所。最近は埃が溜まりやすい横型より、埃が溜まりにくい縦型の通気口が主流になりつつあるようだ。
浴室戸の種類
浴室戸の種類は、基本的に「引き戸」「片開き戸」「折れ戸」の3種類。素材はアルミ製もしくは樹脂製である。いずれも取り外して扉の底まで掃除することは可能ではあるが、「引き戸」「折れ戸」は取り扱い説明書に従い簡単に撮り外しが可能である一方、「片開き戸」は蝶番の種類によりビスを外す必要があり、種類によっては枠内部に固定される補強金具が落下し、再度の固定ができなくなる恐れもあるので、取り外し時には注意が必要というより専門家に依頼すべき。
メンテナンスの面からも、浴室の扉に「片開き戸(片開きドア)」は不向きと考えた方が良いだろう。
換気口・通風口の種類
浴室戸に付く横型換気口の種類は、基本的に「片流れ」「山形」「枠付けスリット」の3種類。
現在の主流である「片流れ」は、ブラシやヘラなどを使い掃除もしやすく、定期的な点検を心がけたい。またカビが発生しても換気口自体を取り外し洗い流せる製品も多いようだ。
「山形」は少々年代が古いようで、掃除は面倒。掃除機やブラシ必要であればシャワーなどで埃を取り去り、カビが付着していたならアルコール、防カビ材などを噴霧し、竹串にペーパータオルなどを巻き付け擦り付けるように汚れを取り除く。
「枠付けスリット」は上方にあるため埃の付着は少ないと考えられるが、カビが発生していると頭上からカビ胞子を被る恐れが大きく、日頃の点検と掃除は欠かせない。もしカビが発生しているようであれば、アルコールなどを含ませたキッチンペーパーなどで、胞子が飛散しないよう静かに拭き取り掃除をしていただきたい。
浴室戸の掃除道具
換気口にカビが発生していた場合の掃除道具は、掃除機用のブラシやシャワー、扉を傷つけないようにプラスチックのヘラやブラシと、アルコールを含ませ拭き取るための、竹串や割り箸などにキッチンペーパーを巻き付け、テープで固定したペーパーブラシを作ると便利。
排水口
垢や髪の毛などがこびりつき、あまりにも汚れていると思わず目を背けたくなる排水口には、黒カビが繁殖しやすい。浴室の中でも特に汚れやすい所ではあるが、一度きれいに掃除を行えば、その後、湯上り前に軽くスポンジで擦っておくだけで、綺麗な状態を保つことができるので、是非実行していただきたい。
天井扇
いっそのこと、天井扇なんてつけない方が良いのでは?と思うくらい厄介ではある。天井扇本体はまだしも、外部へ送風するダクトは、湿気を多く含んだ空気が、ダクト内部で結露するであろうし、多少なろうとも埃が溜まっていれば、カビにとって楽園のようなもの。ダクト内のカビは、換気扇を回していれば室内側への飛散は少ないと考えていますが、ダクト内部の掃除は難しので、専門業社に頼らざるを得ない。
換気扇の掃除は、それぞれの取扱説明書に従い、安全に十分な配慮をした上で、掃除をしていただきたい。ただし、高所にある換気扇を取り外す際に、脚立を使うなら滑りにくい製品か、脚立の下にバスマットやバスタオルを敷くなど安全に注意し、カビ胞子を吸い込まないよう頭巾やマスク、メガネは必需品。
カビ対策には天井扇よりダクト不要の壁付けのプロペラファンタイプを選びたい所でもあるが、機密性が天井扇よりも悪く、強風の時には外気が入り込みやすい欠点もある。
鏡の裏
4個の金物で取り付けられた鏡は、取り外し可能な鏡であり、裏側には3mmほどの隙間が空いているため、付着した垢や石鹸カスにカビが大繁殖している可能性がある。
鏡は長穴があいた金具で固定されているので、上方の留金具2個を上方向あるいは左右方向にスライドさせ、鏡の下部分に爪を描けるようにしてしっかり持ち、反対の手を鏡の横を支え、少し上に持ち上げるようにすると取り外すことができる。取り外した鏡は、折り畳んだタオルなどを濡らして床に敷き、その上に壁面に立てかけるように置けば安定している。鏡裏と鏡が付いていた壁面を丁寧に掃除をし、取り外した鏡を元に戻し、金具を元の位置にスライドさせ固定すれば作業は終了!
ユニットバスの中には、最初から本体に固定されている鏡であれば裏側の掃除は不要ですし、今回紹介した金具以外の製品も販売されている。取り外し方が不明な場合には、取扱説明書あるいは、メーカーにお問い合わせください。
取り付け金物が手で動かないようであれば、細いマイナスドライバーを金具と鏡小口の間に静か位差し込み、ドライバーの持ち手側を鏡の方へ押し付けるように押し、スライドさせる。
注 意
鏡を取り外す場合は、決して入浴時に裸で行ってはいけません。そりゃ入浴のついでに鏡裏も一緒に掃除をしたくなる気持ちは、よく分かります。しかし、濡れている鏡は滑りやすく間違って落として割れてしまったら、もし身体を切ってしまったら、そしてもし大静脈でも切ってしまっら、裸のまま救急車に載せられ、鏡の掃除どころか人生の大掃除をすることになるかもしれない。
浴室鏡の掃除は、必ず着衣にて浴室用のスリッパ、あるいは厚手の靴下を履き、細心の注意を払っていただきたい。
カウンターや収納棚の裏と底
浴室内に備え付けてあると便利なカウンターや収納棚なども、カビが発生しやすい場所である。特に、普段目につかない裏側やボトルなどの底部分は要注意。カウンターの裏部分などは凹凸も多く、鏡やスマートフォンなどを使い念入りな点検が必要。
照明器具
独立して取り付けられることが多い照明器具の周りには、カビの発生が少ない傾向にある。ただし、照明上部にホコリなどが溜まっていると、カビが発生していることもあるので、雑巾やペーパータオルで拭いておきたい。もし、カビの発生があれば、アルコールなどを吹き付け、念入りに拭いておく。
器具内部にカビが発生していたなら、照明カバーを取り外し内部の掃除をする。浴室に取り付けられる防水型の照明カバーの多くは、反時計方向に回すと取り外しが可能。
エプロン裏
ユニットバスの排水方法の中には、浴槽下に排水を床に垂れ流す種類もあります。この種の浴槽下には、垢や石鹸カスが付着しカビが大量発生している可能性が高く、定期的に掃除をすることをお勧めします。エプロンの外し方は、基本的にエプロン下部を持ち上げるように手前に引くと外せますが、詳細は各メーカーにより異なりますので、取扱説明書を参考にして下さい。
長年点検していないなら、その汚れに驚くはず。もし、内部の激汚れに手に負えないと感じるなら、専門家に依頼。
編集後記
どんなに毎日掃除をしていてもカビが発生するなら、不要なものを取り除き、カビの巣窟をなくした上で、換気や掃除に気を配ることだ。
ユニットバスの掃除は、取扱説明書に記載されている方法に従い丁寧に掃除をしていただきたい。造作の浴室にカビが大量発生していたなら、使用している素材によっても対策は変わるので、やはり住宅会社や専門業者に相談する。
新築計画をしている方は、浴室はとにかくシンプルに造ることに限ります。
また、最近市販されるユニットバスは、掃除がしやすくなっている製品もあるようだが、余計な棚やカウンターが付いていれば、カビの温床になります。天井もフラットな方が掃除も楽ですし、カビも繁殖しにくい。
造作の浴室であれば、カビが発生しにくく掃除がしやすい素材を選び、木製建具には「ガラリ」はつけない方が良い、掃除が面倒なガラリをつけなくとも、建具枠と縦框の間に隙間を作っておけば、十分に換気機能を果たすことができる。
見た目や機能も大切であるが、住宅には、掃除のしやすさも重要な性能の一つである。
一体、誰が掃除をするのですか?