欠陥住宅

初投稿2019.9.10/更新2019.9.17

欠陥住宅

同じ業種に生きる者として恥ずかしい限りだが「欠陥住宅」の被害がなくならない。
今朝も宮崎県で発生した欠陥住宅について報道されている。 詳細な部分は不明だが建築規模は、約40坪、鉄筋コンクリート屋上付き2階建、住宅価格は1,850万円とのこと。完成後半年以内の雨漏りや室内壁、床下には大量のカビが発生し、内装仕上げ材はすでに剥離している、しかも建築会社は音信不通状態にあるようだ。

映像から判断すると内装壁、天井仕上げは、コンクリートに直接塗料を吹き付け、床は根太組みにフロアーパネル仕上げしている様子で壁、床ともに断熱材は入っていない様子。鉄筋コンクリート造の場合は、内断熱より外断熱の方が効率が良いとされ、もしかすると外断熱かもしれないが、カビの発生状況から断熱材は入っていないだろう。

現時点で、非常に大きな精神的苦痛を受けている被害に遭われた方には申し訳ないが、もう少し住宅事情に詳しければ、このような被害を避けられたに違いない。

そもそも、延べ床面積40坪の鉄筋コンクリート造で建築価格が1,850万円とすると坪単価は約45万円となり、鉄筋コンクリート造としては異常に安く不適切な金額といってもよい。国土交通省が発表している一戸建て注文住宅の全国平均坪単価は、約64万円である。これは構造を問わない全国平均単価であり、鉄筋コンクリート造だけであれば、おおよそ96万円が平均単価である。

平成30年度 一戸建て持家住宅平均床面積・工事予算額・単価表

平成30年度 各工法の一戸建て持家住宅平均床面積・工事予算額・単価表
参考:政府統計「e-Stat」より作成

木質系のローコスト系住宅では「坪単価30万円」と大きく印刷された広告を目にすることがある。この「坪単価30万円の家」を実際に住宅会社に依頼しても、契約段階の見積金額を建築確認申請の延べ床面積で計算すると、おおよそ坪単価50万円から60万円になるはずだ。「坪単価30万円の家」だと信じている方には嘘をつかれたように感じるかもしれないが、簡単にそれを「虚偽の広告」と言い切れない部分もある。

広告の坪単価を表示している近くに小さく「施工面積」と書かれているはずである、「施工面積」とは、建築確認申請に記載する「延べ床面積」に加えて「庇」や「軒の出」「ウッドデッキ」「玄関ポーチの土間」「犬走り」など工事範囲全体の面積になり当然、床面積より広くなる。坪単価は「工事金額」を「面積」で割った金額になるので「述べ床面積」で割るよりより、一回りほど広くなる「施工面積」で割る方が坪単価は安くなる。
また「金額」も「工事金額」と「本体価格」の2種類あることに気をつけてほしい。ローコスト系の住宅会社は「本体価格」を使用している会社が多いようだ。

では、住宅の本体工事とは何か、現代社会で目にする製品価格の多くは「本体価格」で表示され、皆さんは違和感なく受け入れているだろう。例えば車であれば「車両本体価格」と表示され、この金額に諸費用や、お好みのオプションを付けると、その分高額になることを認識しているでしょう。工場で生産する車であれば「部品の金額」と「組み立て費用」これに「諸費用」を加えた金額を考慮し「車両本体価格」として表記されている。しかし、住宅の場合は、材料や製品など部品だけでは完成しません、現場で組み立て(建築)しなくてはならないのです。そうです!ローコスト系住宅会社の中には、車でいうところの組み立てに関する費用が含まれていない場合があります。要するに部品代だけの表示をしている場合があるのです。この本体価格に別途、確認申請や設計料などの諸費用に加えて、工事をする際に必要な足場代金をはじめとする仮説費用、また職人さんの費用、道路から建物までの上下水道や電気、ガスの引き込み費用、また最近は義務化している地盤調査費用なども別途料金として加算されます。

先に持家一戸建て注文住宅の全国平均単価が約65万円ですが、木造住宅に限ると約60万円です。私が知りうる限り、自然素材を多く使った木造注文住宅の平均価格でも「延べ床面積」で割ると、おおよそ60万円から70万円で合板や塩ビを極力使用せず、将来も廃棄物ではなく財産として残せる「自然素材の家」を新築できる。いや、長い目でメンテナンスコストも考えると、ローコスト住宅よりもずっと安く、経済的に賢い家が建つ。ローコスト系の住宅を新築し「安く新築できた」と満足している方には申し訳ないが、あと坪単価で10万円ほどあれば、自然素材をふんだんに使用した注文住宅を手に入れることができたはず。

それも坪単価で考えた場合です。

住宅会社の広告を見ていると、下手な設計士が考えた間取りには不要な箇所が多く、ただ床面積が広くなっているだけで、素人でも考えられるような間取りも多く見かけます。設計力がある工務店や住宅会社であれば、同じ工事金額で暮らしやすく、無駄のない間取りを含めた設計を提案するでしょうから、住宅の総工事金額は自然素材を使用した住宅でも、ローコスト系の住宅でも、あまり変わらないでしょう。工事金額は決して坪単価で考えてはいけません、とにかく住宅会社に問い合わせるときには、希望床面積と希望総工事費を聞いてください。

さて、問題の欠陥住宅ですが、当該住宅会社は、建築費の安さも売りの一つとしていた様子で、堂々と「一般的な建築費の半額で施工する」とホームページにも書かいていたようです。確かに一般的な鉄筋コンクリートの坪単価が、おおよそ90万円に対しこの欠陥住宅の坪単価は約45万円ですから、広告に嘘はなかったようです。ただ、工事に偽りがあったことは許しがたいことです。

予算的な話をすると、全国規模の大手ハウスメーカーを別にして、一般的な地域の住宅会社の粗利は、おおよそ20%から35%、ただ20%ほどの粗利であれば会社経営は不安定な経営状態にあると推測され、安定的な経営を継続するには、最適でも25%は確保しなければ安定的な経営を望めない住宅会社の実情も皆様には知っていただきたい。

住宅会社は、大きな金額を扱うので、一般的には利益も大きいなどを思われがちですが、決してそのようなことはありません。住宅会社は、粗利5%の違いでも経営状態に大きな差を生み出す経営体質であるにも関わらず、一般的な金額の半額で工事を請け負うことができるとすれば、大量に安く材料を仕入れることが可能なのか、特殊な技術を持っている、あるいは非常に安い労働力を使うなどが考えられるが、いずれも国内の建築業界では考え難い。

材料の仕入れといっても、独占禁止法は別にして、建築業界の仕入れ材は、そのほとんどの材料で同一規格であれば、コンクリートや鉄筋、内装材、配管材など横並びの金額設定になっているのが現実で、一般的な価格の半額で材料を仕入れすることは難しい。
それでも、住宅会社がなんとか採算を得ようとすれば悪質な粗悪品の使用や、手抜き工事を行うことになる。過去には「シャブコン」が大きな問題となり、マスコミに連日取り上げられた。「シャブコン」とは、身体を蝕む麻薬の方ではなく、現場で生コン車に水を注入した水っぽく建物を蝕むシャブシャブのコンクリートをいう、もちろん強度が極端に劣化するため御法度であり、いくら会社の利益のためとはいえ、決して許されない社会に対する背信行為である。

一般的な住宅工事であれば、最も簡単に予算を減額するには、材料の仕様変更や粗悪品を使用するより、工事そのものを無くすることだ。断熱工事や防水工事、内装工事、設備工事など主要構造体以外の工事は、建築基準法に関係なく削ったり、どのような材料を仕様してもよく、この行為は、いわば住宅会社の信用問題であり、違法ではない。

皆さんは建築基準法といえば何かしら厳格な規定があるとお思いかもしれないが、現実は、かなり漠然とした法規であるため、建築基準法に適合していれば、なんの心配もなく素晴らしい住宅が完成するなどと考えていると、とんだ欠陥住宅をつかまされてしまうかもしれません。

正直に言って、雨漏りなどが発生すれば欠陥住宅のレッテルが貼られるかも知れない。建築界の巨匠である丹下健三氏が設計した建物は雨漏りが多く、しまいに氏は「建築は、自然に逆らって存在するものであり、決して自然に逆らうことはできない」などという、建築界にいるものには、心強い名言を残した・・・?とも言われる逸話があるくらいだ。
決して発生させてはいけない雨漏りだが、その多くは、住宅会社の過失によるもので、施工ミスの一つであり、もし発生すれば住宅会社は、早々に補修に駆けつけるであろう。

しかし、今回の宮崎県で発生した欠陥住宅は、テレビ画面で見ただけなので予測ではあるが、かなり悪質で意図的に欠陥住宅になりうることを承知したうえで計画したように見受けられる。欠陥住宅になるだろうことを、十分予測していたのではないだろうか。多分、計画段階で誰か第三者の専門家に設計図および仕様書、見積書を見せていれば計画段階でも簡単に欠陥住宅であることが見抜けたに違いない。

あくまでも欠陥住宅は、設計者や施工者の意識の低さや無責任な行為であり、同じ業界人として無念な話であり、非常に憤りを感じ得ないが、皆様も肝に命じていただきたいことが一つある、欠陥住宅は単に大きなゴミでしかない、住宅建築において「安物買いの銭失い」とは、本当によく的を得た言葉で、その通りなのだ。欠陥住宅ばかりではなく、安く建てた家は、将来ゴミにしかならないのが現実です。もう少し視線を変え色々な住宅会社の中には、将来財産となり得る住宅を建築している会社も多くあることだけは、忘れないでほしい。

医療関係では、セカンドオピニオンに相談することが普通になりつつあるように、ご自身とお家族の人生を大きく左右する住宅の新築、増改築工事を行うときにもセカンドオピニオンに設計図や工事内容、使用素材なども気軽に相談することが必要ではないでしょうか。

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