2024年元日 地震発生「金沢にて」
2011年3月11日14時46分発生震度7(M9.0)「平成23年東北地方太平洋沖地震」
2016年4月14日21時26分発生震度7(M6.5)、16日1時25分発生震度7(M7.3)「平成28年熊本地震」
2018年9月6日O3時07分発生震度7(M6.7)「平成30年北海道胆振地方中東部地震」
そして・・・令和6年元日
2024年元日16時06分発生震度5強(M5.5)、16時10分発生震度7(M7.6)を記録した「令和6年能登地震」が発生してから1ヶ月。
能登地方は令和4年6月19日震度6弱、6月20日震度5強。令和5年5月5日震度6強、震度5強。と3年続けて連続する地震に見舞われ、その内1度は震度6以上を記録する、国内としては稀なる地震であろう。
2024年2月3日に金沢大学地震学教授の報告会では、今回は「マグニチュード7.3の地震が13秒差で2回起きたとみることができる」と報告があり、さらに「活発な地震活動はまだ続いている」と報告されている。
金沢に暮らす私も震度5強の地震を経験した。
当日、震度3の地震が収まったかと感じたところに再度、緊急地震速報のアラームが鳴り、画面には震度5強の文字がチラリと目に入る。本当に?と一瞬疑った次の瞬間、建物からなのか外からなのか、グゴ〜と不気味な地鳴り音が聞こえてくる。
地鳴りは、聞こえる人と聞こえない人がいると聞くが、それは建物の構造によって違うのではないだろうか。私は今、鉄筋コンクリート造の建物に暮らすが、後に木蔵住宅に住む姉に聞くと「地鳴りは聞こえなかった」との返答であった。
「これは尋常ではないぞ」と咄嗟に安全な場所を考える。構造はRC造だ、主要構造体近くであれば倒壊しても大丈夫か、いや柱が座屈を起こせばコンクリート片が飛んで危険かもしれない、取り急ぎ玄関の鉄扉を開けロックを回し扉が閉まらないようにして通路に出たが、いやいや、この通路はキャンティレバー(片持ち出し構造)で危険かもしれないと思い直し、最後は玄関の大梁の上に落ちついたが地震は落ちつかず、書斎と使用している部屋からは何やら物が落ちる音も聞こえてくる。
地震が収まり部屋を覗くと机上の古いiMACが転げ落ち、書棚の本が数冊はみ出し、棚上に置かれたラジオも転落していたが、大きな被害はなさそうだ。少々不謹慎ではあるが建物に大きな被害がないことが分かった時点で正月は、のんびり「おでんでもつつこうか」と2日前ほどから用意していた鍋が置いてあった椅子から半分ほど、はみ出している様子に「おおーよく頑張って落ちなかったな」と安堵する。
被害状況
画面には揺れるカメラの映像が映し出されている、場所は珠洲市だ。揺れ始めから十数秒後、画面左端に土煙が舞い上がったかと思ったら、その後連続して何箇所からも土埃が舞い上がり始めた。
この地域の住宅には土壁の家が多く存在する、咄嗟に多数の住宅が倒壊していると悟った。
燃え広がる街並み、亀裂の入った道路、隆起した敷地、倒壊した家々、転倒したビルなど悲惨な状況は尽きない。
8年前に強震が2度も発生した熊本地震に続き、今回の能登地震も連続した地震が発生した。それも今回の地震は震度5強の地震が発生した直後、僅か4分後に震度7の地震が発生した。
石川県での被害は2月16日時点で消防庁情報によると、人的被害は死者241名、負傷者1,185名。住宅被害は全壊7,453棟、半壊6,600棟、一部損壊19,635、浸水被害11棟と発表されている。
最大震度7の地震で木造住宅に甚大な被害が発生した珠洲市で現地調査を行った金沢大学を代表とするチームは、100棟余りの木造家屋を対象に行った調査を行い、40棟ほどが「全壊」で、そのうち20棟ほどが新耐震基準導入後に工事が行われたとみられ、約半数の10棟ほどが原型をとどめていない「倒壊」した。
ただし木造住宅では1981年に改正された新耐震基準に加え2000年にも告示が改定されており「2000年基準」と呼ばれ今回、調査対象となった家屋がこの「2000年基準」で建築されたかは不明である。
能登半島では下記の通り震度5以上の地震が連続して発生していた。
2023年5月5日 M5.9 最大震度5強
2023年5月5日 M6.5 最大震度6強
2022年6月19日 M5.4 最大震度6弱
2021年9月16日 M5.1 最大震度5弱
新耐震基準では震度6強以上程度の大地震に対しては、ある程度の損傷を許容するが倒壊せず、人命と財産を守るとしている。ある程度の損傷とは室内空間が僅かでも残り室内に人がいたら、圧死されることなく人命が守られる状態で、後に住み続けられるとする基準ではない。
現行の基準法では大地震が発生した場合、人命を守ることを想定しており建物には相応の被害が発生します。建築基準法は人命を守るための最低限の基準であり、複数回の地震や巨大地震でも家屋が無被害という訳ではない。
現行の基準は1度の地震に対するもので、今回の能登半島のように連続的に発生した地震は想定されておらず、連続する地震の度に建物強度が低下していたことも十分考えられる。
住宅の耐震基準は基本1度の揺れしか考慮しておらず、連続する地震、いわゆる「2度揺れ」は想定外なのだ。
建物の「2度揺れ」に関しては2016年に発生した「平成28年熊本地震」では新耐震基準や2000年基準の住宅が倒壊し、家づくりに携わる一部の専門家に大きな衝撃を与えた。
今回の地震を受け、改めて家づくりに携わる者として「生命と財産を守る家づくり」基準法の改定を待つことなく住宅の耐震性能。耐震計画を考え直さなければならないだろう。