住宅の寿命を考える

住宅の平均寿命

戸建て木造住宅の寿命

更新:令和元年7月21日

目次

はじめに
住宅の寿命は何年
それぞれの平均寿命
国土交通省公表「住宅・土地統計調査」平均寿命30年
総務省統計局「住宅・土地統計調査」10年単位集計
区間残存集計法 平均寿命58年
住宅の寿命は何で決まるか
間取りと寿命
メンテナンス費用と寿命
災害と寿命
震災と耐震性能の変遷
耐震性能の建築年代別余命判断と対策
新築住宅と中古住宅で異なる寿命の考え方
最後に

はじめに

新築住宅の寿命はご自分で決める。中古住宅の寿命は耐震性能で決める。

戸建て木造住宅の寿命は、新築される方も中古住宅を購入される方も、大きな関心であり判断材料の一つであろう。住宅の平均寿命は統計値としていくつか確認することができる。しかしこの平均寿命はあくまでも統計的な数値であり、個別の住宅寿命と異なり、さらに「住宅の寿命」とは何を意味するのか個人で十分考える必要がある。
新築住宅の場合は、ご自身で寿命を設定することもかのであるが、特に中古住宅の検討をされる方は、この「住宅の寿命」に関して熟慮していただきたい。

一番の問題は、耐震性能にある。中古の住宅は、その建築確認申請が提出された年月日により、全く別物と思われるくらいの耐震性能に差があり、その耐震補強に必要な費用も大きく異なる。

二番目に、これは新築住宅も同じだが、メンテナンス費用の問題を見逃すわけにはいかないだろう。住宅は必ず点検と補修が必要だ。ただしその費用は、使用する製品・素材のより大きく異なる、新築時にいくらリーズナブルに建築し、割安でいい家が建ち大満足と思っていても、十数年後からそのつけが回ってきて家計を大きく圧迫することもある。初期費用が多少高額になっても、メンテナンスフリーの素材を選ぶことができれば、将来を通して住宅に掛かる費用を最小限にすることも可能。

お願い

住宅のメンテナンス費用は現在執筆中であり、公開にはもう少しお時間をいただけるようお願いいたします。

住宅の寿命は何年か

新築後、鋭い目付きをした中堅どころの担当者とリクルートスーツかな?と思わしき出立ちの若手担当者の2名が来て住宅のあちらこちらを眺め、なにやらせっせと書類にボールペンを走らせ建物の評価を行ない、不動産取得税やら固定資産税の税額が決まる。ものすごく簡単に言えば、家をひっくり返して落ちないものが税額の対象となる。木造住宅の法定耐用年数は、「木造又は合成樹脂のもの」が22年間、「木造モルタル造のもの」は20年と国内の省令では決まっている。この「木造又は合成樹脂のもの」って何だ?という話は別にして、住宅は税法上において20年もしくは22年で減価処理され、不動産としての建物価値はなくなる。
「税法上の話だけであれば、新築時から評価額0円としていただいても結構です」
などと、不届きなことを言ってはいけません、納税は国民の義務ですから。

実際に住宅の平均寿命は何年ほどでしょうか。
または、何年間暮らせると思いますか?
あるいは、何年ほど暮らす家を計画しますか?

国土交通省が公表している平均寿命は約30年で、不動産業界ではこの2倍のおよそ60年と説明している。また、建築物の寿命に関して研究している早稲田大学の小松幸夫研究室が実施した「建築寿命に関する研究」によれば、地域による違いはあるものの全国平均は、1998年におおよそ44年だった平均寿命が、2005年には54年、2011年の調査では58年と住宅の平均寿命は伸びている傾向にあると報告している。

国土交通省:「住宅・土地統計調査」平均寿命30年

国は様々な実態調査を行っており、住宅に関しての調査「住宅・土地統計調査」も含まれ、住宅の寿命に関する資料もある。下記のグラフはこの調査を基に「フコク生命」が作成したものを参考に製作したものだが、これによると都道府県別の住宅平均寿命は、島根県が約31.8歳と長寿No1で和歌山県が29.3歳、鳥取県が29.2歳と続く。短命No1は、神奈川県の22.1歳でその後に埼玉県が22.2歳、東京都22.3歳と首都圏が独占している。全般に都市人口が多い都道府県が、住宅の寿命は短い傾向にあり同時に経済活動が活発であるとの見方もできる。

都道府県別戸建て住宅平均寿命
参考:参照「フコク生命」住宅・土地統計調査より作成

このグラフを見る限り「住宅の寿命は30年です」と、言われると「そんなものかな?」と思われる方もいるでしょう。実際に、ある調査では「住宅の建て替えようと思った理由」の回答に「築年数を考えると建て替え時期だと思った」と、住宅の平均寿命を意識にしているのではないかと思われる回答が2位となっている結果もある。

総務省統計局「住宅・土地統計調査」10年単位集計

「住宅・土地統計調査2013年」を参考に、上記と異なる集計方法で表現したのが下記の表である。この表は、既存する木造専用住宅の棟数割合を10年単位で再集計したもので、築年数10年未満から築年数40年までの既存住宅の棟数は、各10年ごとにおおよそ各年代とも20%ずつであり、築後40年〜50年が8.73%と約半数となり築後50年〜60年の木造専用住宅は2.97%と急激に数が少なくなっている。

築年数別住宅棟数

まったく同じ統計調査にて、視点を変えた数字の抽出種類により作図したグラフから受ける印象は大きく異なると思いませんか?なにやら、ニュース番組や情報番組の演出にさえ思えてきます。そして築後40年間までの住宅棟数が約20%ずつで安定し、今後も同じ構図であるなら「住宅の寿命は30年説」は、やや怪しくなってくる。あくまでも、この時代の住宅事情を検討する必要はあるものの、このグラフからの想像では、おおよそだが、築後50年ほどで住宅の寿命は一つのピークを迎えるのかな?と感じるのではなかろうか。

築後40〜50年に急激な建物棟数が急激な変化することは、木造専用住宅の寿命と考えて良いのか、あるいは、国内だけでも約60万人の尊い命を奪われ、判明しているだけでも約250万棟の住宅を損失した戦争時の空爆による影響なのかは、検討の必要があるが、戦後10年から15年にあたる当時代の住宅は、戦後の復興仮設住宅のように短命でも構わない、質より量が求められた時代の住宅であり、住宅の平均寿命が米国の55年、英国の77年に対し、日本は30年と極端に短いのも戦争の影響もあったのでは。さらに、不幸にもこの戦後復興住宅が、つい最近まで国内住宅の標準化してしまったことではないだろうか。

現時点(令和元年7月)では、平成30年に行われた「住宅・土地統計調査2018」の調査結果が公表されておらず、最新のデータと比較することができないので、公表後に同様のグラフを作成し検討したい。

区間残存率推計法 平均寿命58年

「区間残存率推計法」ってあまり聞きなれない言葉とは思いますが、木造住宅はじめ各種用途・構造の建物の平均寿命(残存率が50%となる期間)を算出する手法の一つであり、固定資産台帳の滅失データを基本に、調査年における新築年次の現存棟数と除却(滅失)棟数から建築年齢別の残存確率を計算して、残存率曲線を求めそれぞれの建築物の平均寿命を算出する方法であり、早稲田大学の小松教授らが、長年調査研究している。

化学物質に少々詳しい方であれば、化学物質の有害性を示す指針値である半数致死量:LD50をご存知だあろうが、算出方法はこれとよく似ており、いわば「半数致死量」ならぬ「建築物半数滅失棟数」と理解すれば間違いないだろう。ただ、化学物質のようにその数値は確定されるものではなく、建物棟数は常に変動するため、その平均値も毎年変わリ、過去から比べると近年、平均寿命は長くなる傾向にあることが報告している。

化学物質の半数致死量LD50(lethal dose 50)は、化学物質の安全性や効用、危険性を確認する場合には非常にわかりやすくとても重要な数値である。通常は動物の体重1kgあたりの投与重量mg(mg/kg)で表示する、例えば体重が60kgの人が塩180gを摂取すると半数の方が命を落とすほどの毒性があるということです。
私たちの身の回りにある物質の毒性をいくつか紹介すると、

ボツリヌス菌毒素D0.00000032mg/kg
ボツリヌス菌毒素A0.0000011mg/kg
ダイオキシン0.0006〜0.002mg/kg
フグ毒(テトロドドキシン)0.01mg/kg
サリン0.35mg/kg
青酸ガス3mg/kg
ニコチン1〜7mg/kg
青酸カリ10mg/kg
カフェイン200mg/kg
3000〜3500mg/kg
ビタミンC12000mg/kg
砂糖15000〜36000mg/kg

LD50の数値では、小さな数字の方が毒性は強く、青酸カリよりニコチンの方が危険であり、コンビニで簡単に購入できるカフェイン濃度の高い飲料なども、大量に飲むと命を危険にさらすことになる。特殊な飲料には、必ず注意書きとして「用法」が記載してあります。よく読んで摂取してください。

提案「半数滅失棟数「LB50」の表示」

少し話がそれてしまいましたが、このように危険性の高い毒物には、その毒性を知るためい明確な数値として「LD50」があります。同じように住宅にも客観的に「住宅の質」を数値化して判断できることが可能であれば、住宅会社を選ぶ際の重要な指針ともなり、正当な評価が可能になるのではないだろうか。これにより施主は住宅会社が選びやすく、何十年後に後悔することも少なく、住宅の質も向上すれば、空き家率も低減するに違いない。

少し話が逸れてしまいましたが、このように各物質には、その毒性を示す明確な数値として「LD50」があります。同じように住宅会社が建築する住宅にも客観的な「住宅の寿命」を数値化することにより、それぞれの住宅会社が建築する住宅の質を正当に評価できるようになる。これにより施主は住宅会社が選びやすく、何十年後に後悔することも少なく、住宅の質も向上すれば、空き家率も低減するに違いない。

もっとも建築物の場合、致死量というのはしっくりこないので「半数滅失棟数」(Lost Buildings)あるいは「半数平均余命」(live Buildings)、いずれにしても「LB50(年)」と表現した方が良いのだろう。また、構造別にわかりやすくするなら、木造の場合は「LBW50」鉄筋コンクリートは「LBRC50」鉄骨は「LBS50』がようだろう。

なぜ?住宅会社の「半数滅失棟数」は必要か

私は「住宅の寿命=住宅の質」だと考えます。皆さんは住宅会社がただ金儲けのためだけに(言い過ぎでしたら関係各位にお詫びしますが)建築、あるいは選ぶ住宅と、ほんの少し高くとも家族と自分のために建築する注文住宅のどちらが高品質の住宅を手に入れることができると思いますか?

もちろん後者でしょう、そしてその家に長く暮らすには、家族が暮らしやすく将来も見据え試行錯誤し熟慮した間取り、地震や洪水に強い構造・工法・素材あるいは住宅の形、将来のメンテナンス費用を抑え極力メンテナンスフリーとなる素材選び、また家族の健康や家庭内事故が発生しにくい素材選びと細部の納め、などなど多くの要素を満足した住まいが、家族にとって長年暮らせる「高品質な家」と言える。

「住宅の質」を数値化することはかなり難しい問題です。住宅の数値化と言えば、確かに「長期優良住宅」では、住宅性能を数字化しています。しかし、「長期優良住宅」の数字はハード的な判断であり、家族の暮らしやデザイン、メンテナンス費用などソフト的な要因が含まれていません、このソフト的なことも含め数値化することは難しい。

また「長期優良住宅」の数値は住宅一戸に対するものであり、その住宅会社が建築した住宅に暮らす方々の満足度はわからない、住まい手が愛着をもって長く暮らせる住宅を建築している住宅であれば当然、住宅寿命は長くなる。この平均寿命を「LB50」で知ることは、その住宅会社が建築してきた住宅に対する住まい手の「評価・価値・質」を知る重要な手がかりとなり、それぞれの住宅会社が「LB50」を算出すると、各社の相対的な評価が可能となり、国内住宅の質が向上し住宅の長寿化および、現在問題となっている空き家化を防ぐ効果ももたらしてくれるだろう。

高品質の住宅

戦後の一時期、住宅の質より大量生産・大量消費に重きをおいた家づくりが、大量の産業廃棄物を生み出し、あるいは多くの空き家を発生させた原因の一つとも考えられる。戦後の時代は、とにかく住宅の量が必要であり、それはそれで時代に即し、必要な家づくりであったことは間違いなかったでしょう。しかし現在、私たちは、日本の気候風土に根ざし、先人が知恵を積み重ね、工夫を凝らし、本来そなえている質が高く長きにわたり愛着をもって暮らせる住宅を考えなければなりません。そして質の高い住宅を提供してくれる住宅会社を選ばなければなりません。

住宅の寿命が長い家を建築している、あるいは老舗の住宅会社の「LB50」は長く、短命な住宅しか建築していない、または、創業間近い住宅会社の「LB50」は短くなります。住宅会社の「LB50」が高ければ、施主が愛着を持って長く暮らしている住宅を建築している会社とある程度の判断できるようになるでしょう。逆に短ければ、低品質の住宅あるいは創業が短い会社と想像するに容易だ。

例えば、創業60年の会社の「LB50」が「20」とか「30」であれば、少々短いとは思いますが、国土交通省が公表する住宅の平均寿命とほぼ同じで、お上に従順な会社かな?と想像できる。しかし、同じ創業年でありながら「LB50」が「55」なんて会社があれば、とても魅力的な会社と思いませんか?さらに「うちの会社には、築年数のデータがない」あるいは「暮らしている人がわからなくなってしまった」などと、ほざく会社があれば、それはアフターメンテナンスが曖昧で、施主とのトラブルが絶えない会社であろうと、きつい判断をすることも可能。住宅は「新築してなんぼ」ではなく新築後のアフターフォローがとても重要、施主と新築後にも適切な関係を築いていれば、LB50の算出もそう難しいことではないだろう。

住宅の平均寿命は、何で決まるか?

では、LB50を長くするため、住宅の設計で気をつけなければならないことは何か。一般的に木造専用住宅の寿命が決まる要因は、大きく分けて下記の7項目。災害は不可抗力であり事故と同じと考える方もいるかもしれないが、災害は敷地と大きな関係があるため、正しく敷地を選べば災害による被害を回避することは可能だ。

1・立地条件(気候風土・環境)
2・建物の構造と形
3・使用素材の種類
4・間取り
5・設備の老朽化
6・メンテナンス
7・災害

各項目をよく見て欲しい、多くの要素は住宅の質と大きく関わっていることが見えてこないだろうか。各項目の対策は、今後詳しく説明してまいりますが、特に長寿住宅の設計は「未来を設計する力」わかりやすく言えば、あらゆることを想定し設計する力、想像力が必要です。

未来を設計する力

質の高い住宅は、長寿であることに間違いないでしょう。ただし、どのようなものでもそうですが、質が高いということと高価格は別です。単純に高額な製品や素材を使用しただけでは、長寿住宅を実現できません。特に何十年という家族の長い将来を見据え、あらゆる災害を想定し、使用する素材や製品の経年劣化を知り、家族の健康や体力の低下なども考慮しなければなりませんし、機械製品である設備関係の選定あるいは将来のエネルギー予測などにも考えを巡らす必要があるかもしれません。ひつこいようですが、住宅は「今」だけを考えた住宅設計は質の高い住宅とは言えないでしょう、本当に質の高い長寿住宅に求められるなら「未来を設計」しなければなりません。

その対策をいくつか紹介すると・・・

間取りと寿命

住宅の寿命(建て替え)を検討する理由の一つに「住宅の間取りとライフスタイルが合わなくなってきた」と答える方が多いようです。また「そのタイミングは、建て替えを検討するにはとても良い機会です」と建て替えを推奨する方もいらっしゃるようです。騙されてはいけません、そんなの最初の住宅設計時から分かっていたはずです。
「いつまでも子供と一緒に暮らす」なんて事は無いと想定し、住宅は設計するものです。子供が独立したら、どのような部屋の使い方をするか考えておかければなりません。

例えば「間取り」中廊下式の導線に小さな部屋をいくつか設置した住宅を見かけます。将来、子供達が独立した時その部屋は何に使いますか?1年に1〜2回泊まりに来るために空けておきますか?日頃使わない部屋も窓を開け、掃除をしておかなければなりません、そんな不要な掃除をしたいですか?あるいはカビやダニが生え、子供達が来るたびに部屋の大掃除をしなければならないかもしれません。「間取り」は「暮らし」そのものです。ですから、年齢とともに暮らしが変化するとともに間取りも暮らしに合わせて変化できるように、ある程度自由度がなければ長寿住宅といえません。

メンテナンス費用と寿命

現在、約7割の住宅に採用される窯業系サイディングは、定期的なメンテナンスが必要だと「日本窯業外装協会」では公表しています。そうです、窯業系外装材をはじめとする外壁材は、必ず点検とメンテナンスが必要になります。しかし、その素材によりメンテナンス期間と費用は大きく異なります。初期費用が安いからといって中途半端な外壁材を選ぶと、十数年後から約10年ごとに数百万円のメンテナンス費用が必要となる場合もあります。そんな費用が必要となる住宅に長く暮らしたいですか?暮らせますか?初期費用が少々高くとも、メンテナンスフリーの住宅を選ぶ方が良いと思いませんか?

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災害と住宅の寿命

日本は地震国であることは皆さんもご存知の通り、加えて近年は、水害国でもあるような様相を呈してきました。どちらも残念ながら被災しないとその実感を感じられないようで、過去の大きな地震を経験するたびに建築基準法の見直しが行われた。地震に対しては、木造建築物でも建物本体の耐震性を強化することにより、住人の生命を守る確率を向上させることが可能だが、水害、土砂災害あるいは崖崩れに対しては限界があるため、敷地および構造にて対抗することを考えなければならないだろう。もう一つは行政を期待する方法もあるが、全国規模で全ての敷地が水害に遭わないよう土地改造をすることは難しい、古くは日本列島改造論を唱え高度成長期を実現した政治家もいたが、同じことを現在の政治家ができるとは思えない。

また、政権が変わった一時期「コンクリートから人へ」と、国民を迷わす政権もあり「千年に一度の水害対策」が遅れ、河川の洪水対策が遅れてしまった様相もあるように思える。ここ数年は、千年に一度の水害が毎年発生しているような空模様に危機感を感じる。
ささやかながら、私たち個人にできることといえば、身近なダムともいわれる田んぼや里山を開発した造成地は、決して購入しないことだろうか。

大震災と耐震性能の変遷

さて「住宅寿命の話」だが、残念ながら住宅は、災害により建物が倒壊・崩壊し尊い住人の命とともに建物の寿命を決定的にすることもある。国内の建築基準法は大震災が発生する度に改正が行われ、耐震性能が向上してきた。

1950年(昭和25) 建築基準法制定:必要壁量定義
1959年(昭和34) 建築基準法改正:壁量規定強化
1968年(昭和43) 【十勝沖地震】
1971年(昭和46) 建築基準法施行例改正:基礎基準強化・風圧力による壁量規定
1978年(昭和53) 【宮城県沖地震】
1981年(昭和56) 建築基準法施行令大改正「新耐震設計基準」
1995年(平成07) 【兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)】
1995年(平成07) 建築基準法改正:接合金物等の奨励
2000年(平成12) 建築基準法改正「2000年基準」:地盤調査義務化・基礎、耐力壁強化
2006年(平成18) 改正耐震改修促進法改正
2016年(平成28) 【熊本地震】

耐震基準と罹災棟数

この表は、1981年5月までに建築確認申請を行なった旧耐震設計の住宅を含む759棟の住宅と、1981年6月〜2000年5月の期間に申請を行なった877棟の住宅、そして、新新耐震基準とか2000年基準とも呼ばれる2000年6月以降に申請された319棟の木造住宅罹災率である。

「熊本地震における建築物被害」
「熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会」報告書抜粋より

なにをもって「住宅の寿命」と考えるかは、人それぞれだが大震災にて崩壊・倒壊する可能性が高いと判断できる家もまだ寿命があると考えてよいのだろうか?災害時に人命を守ることができない家は、すでに余命は尽きていると考えた方が良いのではないだろうか。
個人財産である住宅に対して、このようなことは言いたくないが、新耐震以前の住宅は、すでに人命を守る住宅としての余命は尽きていると考えた方が良いのではないだろうか。

耐震性能の建築年代別余命判断と対策

〜1981年5月「旧耐震住宅を含む住宅」
1981年6月〜2000年5月「新耐震設計住宅」
2000年6月〜「新新耐震・2000年規格住宅」

〜1981年5月「旧耐震住宅を含む住宅」

残念ながら、耐震性から考えると、少なくとも戦後から昭和56年5月までに建築確認を申請した住宅の寿命は尽きていると考えても良いかもしれない。現在お住いの住宅を耐震補強をするにしても、基礎や構造あるいは地盤にも手を加え、多額の費用が必要だと思われます。住人の家族構成にもよりますが、住宅とともに心中する覚悟を決めるか、新築を考えた方が良いでしょう。

木製防災・耐震シェルター
木製防災・耐震シェルター

もし、現在お住いの住宅にそのまま暮らしたいとお考えでしたら、下手に家全体の耐震補強をするより、震災が発生し家が倒壊・崩壊しても一部屋だけでも命だけは守ってくれる耐震・地震・防災シェルターのような安全な空間を確保することです。この場合、建物に固定するというより、独立したシェルターを置く方式が、費用は抑えられる。シェルターに対しては、補助金を交付している行政機関もあるようです。

1981年6月〜2000年5月「新耐震設計住宅」

新耐震設計の住宅でも罹災率が約80%と高く、なかでも約20%弱の住宅が大破・倒壊・崩壊している点に注目しなければなりません。新耐震設計の住宅でも安心できないことを、この調査報告書で明らかにしているのです。新耐震設計でも20%の住宅しか無被害で、なぜ80%以上の住宅に被害にあってしまったのか、それは不適切な地盤処理と耐力壁に使用された材料に問題があったのではないかと想像します。この調査で、この2点の調査が加わっていると、罹災原因をもっと詳しく特定できたのかもしれません。

一つ目の地盤の問題ですが、新耐震では地盤調査が実質的に義務化されていません。住宅会社の独断で軟弱地盤であっても知らなかったとして建築されていた可能性があります。もう一点は耐力面材の種類です。耐力面材の中には2度揺れに耐えられない材料も多くあります。今回の熊本地震は、おおよそ1日のうちに2度もの大きな揺れに見舞われ、1度目の揺れで耐力面材の耐力が失われ、建物の耐力壁能力が無くなり、2度目の揺れでは、全くその揺れに抵抗する力が無くなっていたと想像できます。

地盤の確認法

新築時に地盤調査をした方はよろしいのですが、地盤調査を実施していない方は、まず地盤の確認をしなければなりません。確認方法は住宅を建築した住宅会社に問い合わせ、地盤調査会社から近隣の地盤調査データを何件か取り寄せ、専門家の意見を聞くことです。インターネットでの確認を希望する方は、下記の地盤調査会社「ジオテック株式会社」が、国内で調査した地盤データを公開しています。ただし、空白域もありますし、このデータだけでご自身がお住いの地盤強度(地耐力)の予測は困難かもしれません。その場合はやはり専門家にご相談されることをお勧めします。また、サイトでは近隣のデータが見つからない場合もあります。
ジオテック株式会社「ジオダス」https://www.jiban.co.jp/geodas/index.htm

地盤改良の種類
地盤改良の種類

耐力面材の確認法

耐力面材の種類は平面図もしくは仕様書、仕上げ表、筋違計算書に耐力壁の種類および、その壁倍率が記載されていますので耐力面材の種類や商品名を確認してください。製品の性能に関しては、各メーカーに問い合わせるか、不明であれば当方にご連絡ください。

2000年6月〜「新新耐震・2000年規格住宅」

2000年規格の住宅であっても、19棟(6%)の住宅が、残念ながら大破もしくは倒壊・崩壊している。この数は震源に近く、2度の揺れに不適切な素材を使用していたと考えられないだろうか。だとするなら、ご自宅の体力面材の種類を調べて欲しい。多分このころの住宅であれば、その設計図書や見積書などの資料が残っているはずである。一般にボードと呼ぶ商品であれば2度目の揺れにその性能を発揮せず、建物に甚大な被害を発生させる可能性が高い。

新築住宅と中古住宅で異なる寿命の考え方

新築住宅の寿命
中古住宅の寿命
旧耐震設計の中古住宅
新耐震設計の中古住宅
新新耐震・2000年規格設計の中古住宅

新築住宅の寿命

住宅の寿命は統計の算出法によって、おおよそ30年から60年と幅が広いため、どの数字が正しいのかと不安を抱く方もいるかもしれない。しかし、新築を考える方は、統計的な住宅の寿命を気にする必要はない。住宅の寿命は、自分で想定して新築計画すべきだろう。もちろんこれから新築するのであれば、災害に強い家でなければならない、耐震等級でいえば「等級3」は確保したいところだ。その上で、新築する家に何年暮らすのか、ある程度の年齢であれば、ご自身、ご家族の余命と相談するのもよし、子育て世代であれば、最低でも60年や70年暮らすことを想定した方が良いだろう。家が大好き、趣味みたいなもの、経済的にも余裕がある・・・など周りから白い目で見られたい方は、10年ごとに家を新築しても良い。ただし、産業廃棄物の問題、環境の問題を考え、上質の家を作り後々誰かが喜んでくれる家を計画してくださいね。

そして、住宅を維持管理するには、必ずメンテナンス費用が発生します。新築計画する住宅に使用する素材により、メンテナンス総費用はある程度、予測できますので、想定した住宅の維持管理に必要な総費用の算出も忘れてはいけません。維持管理費が想定内であれば結構ですが、想定を超える費用が発生するようであれば、住宅の寿命が尽きるまでの総費用の算出を行い、素材の検討や、新築費用の再検討を行っておかなければ、将来、経済的に大きな負担となり、家計のどこかに歪みを発生させるでしょう。

中古住宅の寿命

中古住宅を検討する時、最も大きな関心ごとの一つは、住宅の寿命ではないでしょうか。不動産サイトを見ると「住宅の平均寿命は約60年」という文字が目につきます。確かに、国土交通省の公表する平均寿命が30年前後ですが、区間残存率推計法では58年と推計しています。しかしこの平均寿命は、あくまでも住宅の残存数の統計値であり、住宅が住宅として、家族の健康や命を守る性能や機能を有している証拠にはなりません。

住宅は、家族の健康や命を守る役目を果たさなければなりません。震災にて倒壊・崩壊する可能性のある住宅は、金額に関係なく購入を慎重に考えなければなりません。それには、まずご検討される中古住宅の建築申請年月日を確認することから始めます。

旧耐震設計の中古住宅

旧耐震設計の住宅は、すでに住宅としての寿命は尽きていると考えても良いでしょう。1981年5月以前の建物(築後38年前後)が、いくら外装や内装が小綺麗であっても決して手を出してはいけません。現行の建築基準法に適応させようと旧宅新設計の住宅を耐震補強するとなれば、新築すると同じくらいの費用が必要になります。さらに、リフォーム済みの住宅であれば、小規模な模様替え、例えば外壁や内装の張り替えは建築確認申請の必要がなく耐震補強する必要もありません。もし、交通や通学、通勤に最適などのように購入の検討をしたい中古住宅があるなら、不動産業者に耐震補強の有無と、工事内容および工事写真、近隣の地盤調査データを確認し、間違いなく震災時にでも耐えうる確証を得る必要がある。

新耐震設計の中古住宅

1981年6月〜2000年5月までに申請された新耐震住宅設計の中古物件(築後20年〜38年前後)は、耐力壁の種類と近隣地盤調査データーの確認が必要だ。耐力壁に使用された面材が2度揺れに脆弱なボード類を使用している住宅、あるいは地盤調査していない住宅であれば、やはり購入は再検討すべきです。

新新耐震・2000年規格設計の中古住宅

2000年6月以降に建築確認申請を提出した住宅でも、地盤調査は事実上実施されているが、熊本地震の調査でも約20%の住宅が大破・損壊しているように油断は禁物。2度揺れが発生しても耐えうる耐力壁が確保されているか、確認が必要。また、新耐震住宅でも同じことが言えるのだが、メンテナンス費用の問題だ。外壁に窯業系サイディングが使用されているようであれば、将来のメンテナンス費用を算出しておかなければ、将来大きなツケを支払うはめに陥る可能性が非常に高くなる。

最後に「耐震性能を劣化させない日頃の点検」

建物の大敵である雨漏りや湿気対策を怠り、構造体の腐敗やシロアリによる蟻害による耐震性能の劣化も心配の一つです。住宅は、定期的な点検が必要であり、これを怠り構造体が脆弱化していると耐震性はなくなり、震災時に大切な家族の命までも奪い取られる可能性があることを忘れてはいけません。そして、日頃の点検と、小まめな修理・メンテナンスが、住宅の寿命を決定させると肝に命じておくべきです。

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